
インドから帰国したビートルズは、1968年5月20日からイーシャーにあったジョージ・ハリスンの別荘「キンファウンス」に合宿して、27曲のデモをレコーディングしました。ビートルズがアルバムのレコーディング・セッションの前にプリプロダクションを行ったのは、それが初めてで、インドで書かれた曲は40曲にも及んだそうです。その中から27曲をデモ・レコーディングしたのですけれど、ジョンが主導で書いたのが15曲で、ポールが主導で書いたのが7曲で、ジョージ作が5曲です。その27曲中、19曲が1968年11月22日にアップルからリリースされた2枚組のアルバム「THE BEATLES(ホワイト・アルバム)」に収録されています。つまり「イーシャー・デモ」全27曲中8曲が、既に2枚組のアルバムからは弾かれています。アルバム「THE BEATLES」は全30曲入りですから、「イーシャー・デモ」では取り上げていないその後に書いた曲が11曲もあります。しかも、同時期にレコーディングしたシングル「HEY JUDE / REVOLUTION」はアルバム「THE BEATLES」には収録されていないのです。無論、1968年3月15日にリリースしていたシングル「LADY MADONNA / THE INNER LIGHT」も、アルバム「THE BEATLES」には未収録ですし、そのシングルのセッションでレコーディングされていた「ACROSS THE UNIVERSE」と「HEY BULLDOG」も未収録です。つまり、ビートルズは1968年に34曲も新曲を発表していて、更に10曲がその時点では未発表となっていたのです。インドで書いたものの「イーシャー・デモ」では取り上げていない曲も10曲以上あるので、ビートルズは1968年だけで50曲以上も曲を量産していたわけです。
特に、ポール・マッカートニー主導が目立った1967年に比べると、ジョン・レノン主導の楽曲が再び増えてきたのも1968年の特徴のひとつです。「イーシャー・デモ」全27曲中、ジョンが主導で書いたのは15曲と、半数を超えています。云わば、そのジョンが主導で書いた曲だけでも、アルバムが1枚作れてしまうわけで、アルバム「THE BEATLES」が2枚組になるのは必然でした。「イーシャー・デモ」でプリプロダクションを行ったビートルズは、すぐさま、1968年5月30日からアルバムのレコーディング・セッションに突入します。そのレコーディング・セッションは、同年10月14日までつづく長丁場となります。そのアルバム「THE BEATLES」のレコーディング・セッションで、最初にレコーディングされたのが、ジョン主導で書いたレノン=マッカートニー作「REVOLUTION」です。英国オリジナル・アルバムのレコーディング・セッションでは、1965年のアルバム「RUBBER SOUL」では「RUN FOR YOUR LIFE」、1966年のアルバム「REVOLVER」では「TOMORROW NEVER KNOWS」、1967年のアルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」では「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」と、ジョンが主導で書いた曲が最初に取り上げられていて、この1968年のアルバム「THE BEATLES」も、やはりジョンの曲からとなったのです。但し、このアルバム「THE BEATLES」ではプリプロダクションが行われていたわけで、取り上げるべき曲は他にも沢山あったのです。それでも、最初はジョンの曲からだったのは、お約束だったのでしょう。
さて、今回紹介するのは、1CDのブートレグ「MAD DAY OUT / THE EVOLUTION OF “REVOLUTION”」です。内容は、1「REVOLUTION」、2「REVOLUTION 1」、3「REVOLUTION 2」、4「REVOLUTION 2」、5「REVOLUTION 9」、6「HAPPINESS IS A WARM GUN」、7「I'M SO TIRED」、8「I'M SO TIRED」、9「STEP INSIDE LOVE / LOS PARANOIAS / THE WAY YOU LOOK TONIGHT / CAN YOU TAKE ME BACK?」、10「STEP INSIDE LOVE」の、全10曲入りです。メインとなっているのは、1「REVOLUTION」〜5「REVOLUTION 9」の「REVOLUTION」5連発で、その後はオマケでしょう。1「REVOLUTION」は「イーシャー・デモ」で、2「REVOLUTION 1」は完成版の「take 20」です。2018年の公式盤の箱「THE BEATLES」には、この完成版「take 20」にオーバーダビングを施す前の「take 18」が収録されていますけれど、「take 20」はブートレグでしか聴けません。この「take 20」の前半が公式盤の「REVOLUTION 1」となって、後半の音源を使って「REVOLUTION 9」となっているのは有名な話ですが、後半でジョンが「ALL RIGHT」と絶叫したり、最後の方でヨーコさんが散文詩を朗読しているところなどは、確かに「REVOLUTION 9」でも聴こえます。と云うか、アルバム「THE BEATLES」のレコーディング・セッションの最初からヨーコさんがスタジオにいて、レコーディングにも参加していた事実が分かるわけですなあ。ジョンは10分以上もあるこの「take 20」をシングルにする気マンマンだったのですけれど、ポールとジョージに反対されたのです。
それで登場するのが、3〜4「REVOLUTION 2」なのです。シングル「HEY JUDE」のB面になった「REVOLUTION」で、テンポを速くして1968年7月10日から12日までレコーディングし直しています。3「REVOLUTION 2」はシングル用のラフミックス音源で、まだニッキー・ホプキンスによるエレクトリック・ピアノがオーバーダビングされていません。4「REVOLUTION 2」は、同年9月4日に撮影したプロモーション・フィルムでの別ヴォーカル・ヴァージョンです。「REVOLUTION 1」と同じ様にポールとジョージがコーラスを付けていて、個人的にはこのプロモーション・フィルム・ヴァージョンが最も好きです。ニッキー・ホプキンスが参加しているのは7月で、ジョージがエリック・クラプトンを「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」に参加させたのは9月なので、何の事はない、ジョンの方が先に外部ロック・ミュージシャンを参加させていたわけですなあ。5「REVOLUTION 9」は別ヴァージョンで確かに公式盤とは違うのですけれど、あんまり嬉しくありません。その後はオマケなんですけれど、6「HAPPINESS IS A WARM GUN」は別ステレオ・ミックスで、7「I'M SO TIRED」は初期テイクのモノラル・ミックスで、8「I'M SO TIRED」は別ステレオ・ミックスです。ここまでは、ジョンが主導で書いたレノン=マッカートニー作品を収録しています。そして、9「STEP INSIDE LOVE / LOS PARANOIAS / THE WAY YOU LOOK TONIGHT / CAN YOU TAKE ME BACK?」は、1968年9月16日にレコーディングされた、ポールが主導で書いたレノン=マッカートニー作の「I WILL」のレコーディング・セッション音源です。
このレコーディング・セッションは、ポールがアコースティック・ギターを弾いて歌っていて、ジョンとリンゴがパーカッションで参加しています。「STEP INSIDE LOVE」はポールがシラ・ブラックに提供した名曲で、「LOS PARANOIAS」はジョンの合いの手と共に歌う即興曲で、「THE WAY YOU LOOK TONIGHT」は有名なミュージカル・ナンバーと同名ですけれど「I WILL」の変奏曲と云った感じです。「CAN YOU TAKE ME BACK?」は、公式盤では「CRY BABY CRY」と「REVOLUTION 9」の間に入っているノンクレジットの曲で、2018年の公式盤の箱「THE BEATLES」で初めて「CAN YOU TAKE ME BACK?」と曲名が付けられた曲です。このレコーディング・セッションは、ジョージは不在ですけれど、当時は不仲説が出ていたジョン、ポール、リンゴが楽しそうに演奏しているところが良いのです。アルバム「THE BEATLES」のレコーディング・セッションは前述の通り、1968年5月30日から同年10月14日までで、「イーシャー・デモ」のプリプロダクションを含めれば5か月もかけて行われていて、途中でリンゴが脱退したり、ジェフ・エメリックが辞めたり、サー・ジョージ・マーティンが休暇を取ってしまい、当時若干21歳だったクリス・トーマスとケン・スコットに丸投げしたりと、色々とあったわけですけれど、少なくとも「イーシャー・デモ」の段階では和気あいあいとしていたし、レコーディング・セッション後半にはこうして仲良くしていたわけで、悪い事ばかりではなかったのでしょう。最後の10「STEP INSIDE LOVE」は、昔からポールによるホーム・デモ音源と云われているものの、音が悪くて真偽不明です。
(小島イコ)
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