
ビーチ・ボーイズが、1965年11月8日にアルバム「BEACH BOYS' PARTY!」を、1966年5月16日にアルバム「PET SOUNDS」を、米国キャピトルからリリースする中間にあたる1966年3月15日に、ナンシー・シナトラがデビュー・アルバム「BOOTS」をリプリーズからリリースしました。フランク・シナトラの娘としても有名なナンシー・シナトラですが、デビュー・アルバム「BOOTS」をリリースした時には25歳で、ビートルズのジョン・レノンとリンゴ・スターと同い年です。ナンシー・シナトラのデビューは1961年とビートルズよりも早かったのですけれど、米国では親の七光りが通じなかったのか、シングル盤を沢山リリースしていたもののヒットせず、1965年12月リリースのお色気路線に変更したシングル「THESE BOOTS ARE MADE FOR WALKIN'(にくい貴方)」が1966年2月に全米首位!となって、ようやく売れました。それで、やっとデビュー・アルバム「BOOTS」をリリースしたのですが、売れると分かったので、1966年だけで3作(「BOOTS」、「HOW DOES THAT GRAB YOU?」、「NANCY IN LONDON」)もアルバムをリリースしています。ところが、日本ではそれ以前から人気があって、アイドル時代のシングル「LIKE I DO(レモンのキッス)」やシングル「TONIGHT YOU BELONG TO ME(イチゴの片想い)」(どちらも米国ではB面曲)がヒットしていました。大瀧師匠やナイアガラとの関係性もあって、「LIKE I DO」(アパッチ)と「TONIGHT YOU BELONG TO ME」(シリア・ポールさん)を、大瀧師匠が編曲・プロデュースしてカヴァーしています。
SUGAR BABEの「SUGAR」には、ナンシー・シナトラの「SUGAR TOWN(シュガー・タウンは恋の町)」でのコーラスを引用していますし、大瀧師匠は竹内まりやさんとのデュエットで、フランク・シントラとナンシー・シナトラが親子共演デュエットした「SOMETHIN' STUPID(恋のひとこと)」をカヴァーしています。また、リー・ヘイズルウッドとナンシー・シナトラがデュエットしてカヴァーした「JACKSON」は、ティン・パン・アレーもカヴァーしていて、コーラスでタツローとター坊も参加しています。米国では前述の通り、ナンシー・シナトラは苦節5年でブレイクしていて、1960年代後半はシングルやアルバムを軒並みヒットさせてゆくのです。その発端となったのが、1966年の大ヒット・シングル「THESE BOOTS ARE MADE FOR WALKIN'」と、前年である1965年にリリースしてスマッシュ・ヒットしたシングル「SO LONG, BABE」を収録した、デビュー・アルバム「BOOTS」です。内容は、A面が、1「AS TEARS GO BY」、2「DAY TRIPPER」、3「I MOVE AROUND」、4「IT AIN'T ME BABE」、5「THESE BOOTS ARE MADE FOR WALKIN'」で、B面が、1「IN MY ROOM」、2「LIES」、3「SO LONG, BABE」、4「FLOWERS ON THE WALL」、5「IF HE'D LOVE ME」、6「RUN FOR YOUR LIFE」の、全11曲入りです。あたくしが持っているCDには、ボーナス・トラックとして、12「THE CITY NEVER SLEEPS AT NIGHT」、13「LEAVE MY DOG ALONE」、14「IN OUR TIME」、15「THESE BOOTS ARE MADE FOR WALKIN'」(モノ・シングル・ヴァージョン)と、1966年のシングル2枚4曲が収録されています。
アルバム「BOOTS」のプロデュースはリー・ヘイズルウッドで、シングル「THESE BOOTS ARE MADE FOR WALKIN'」、「SO LONG, BABE」に加えて「I MOVE AROUND」の3曲を書いています。他はカヴァーで、「AS TEARS GO BY」はローリング・ストーンズのミック・ジャガーとキース・リチャーズがマリアンヌ・フェイスフルに書いた曲で、セルフ・カヴァーもしている名曲ですけれど、いきなりアルバムの冒頭でボサノヴァ・アレンジで歌っています。「IN MY ROOM」はウォーカー・ブラザーズで有名な曲のカヴァーで、ド派手でゴージャスなアレンジです。「IT AIN'T ME BABE」はボブ・ディランのカヴァーで、何でも歌えてしまうのは、やはり血筋もあるのでしょう。そして、本題のビートルズのカヴァーは「DAY TRIPPER」と「RUN FOR YOUR LIFE」と2曲も取り上げていて、米国でシングル「DAY TRIPPER」がリリースされたのは1965年12月6日で、「RUN FOR YOUR LIFE」がスカスカ編集盤「RUBBER SOUL」に収録されてリリースされたのも1965年12月6日なのです。このナンシー・シナトラのデビュー・アルバム「BOOTS」がリリースされたのは1966年3月15日ですから、ビートルズのオリジナル・ヴァージョンがリリースされてすぐにカヴァーしていた事になります。ヒット・シングル「DAY TRIPPER」は分かるけれど、アルバム収録曲にすぎなかった「RUN FOR YOUR LIFE」をカヴァーしているのが珍しいです。ところが、ゲイリー・ルイス&ザ・プレイボーイズは1965年12月にアルバム「SHE'S JUST MY STYLE」でカヴァーしていて、ジョンが駄作と云っていた「RUN FOR YOUR LIFE」は、米国では人気があった曲だったのでしょうか。ゲイリー・ルイスも、ナンシー・シナトラと同じ「2世タレント」ですし、ナイアガラとも縁があります。
他にも、ニッカーボッカーズの「LIES」や、スタットラー・ブラザーズの「FLOWERS ON THE WALL」なども、同時代のヒット曲のカヴァーです。それらのオリジナル・ヴァージョンは、ほとんどが男性による歌唱曲だったのですが、繰り返しますが、ナンシー・シナトラは何でも歌えてしまうので、やっぱり血筋なんでしょうなあ。ジャケットではセクシー路線で、アルバム「SUGAR」なんてピンクのビキニ姿なんですけれど、歌は親譲りで本格派です。ナンシー・シナトラは、1969年にはドアーズの「LIGHT MY FIRE」もカヴァーしていて、本当に何でもアリな歌手です。このアルバム「BOOTS」には他にも注目すべき点があって、それはバックを務めたミュージシャンです。彼らは、アレンジも担当しているギターのビリー・ストレンジ、ベースのキャロル・ケイ、ドラムスのハル・ブレインとジム・ゴードンと云った、腕利きのスタジオ・ミュージシャン集団である、通称「レッキング・クルー」なのです。それで、最初に書いたビーチ・ボーイズのアルバム「BEACH BOYS' PARTY!」とアルバム「PET SOUNDS」の中間に、このナンシー・シナトラのデビュー・アルバム「BOOTS」がリリースされている事に繋がっているわけです。ブライアン・ウィルソンがビーチ・ボーイズのアルバム「PET SOUNDS」のレコーディングを本格的に開始したのは1966年1月18日なので、このナンシー・シナトラのデビュー・アルバム「BOOTS」のレコーディングと被っていると思われます。少なくとも、ギターのビリー・ストレンジと、ベースのキャロル・ケイと、ドラムスのハル・ブレインは、アルバム「BOOTS」とアルバム「PET SOUNDS」の両方に参加しているわけで、そう云われてみれば、二つのアルバムの音は似ています。そりゃあ、同時期に同じ人が演奏しているのだから、当然なのですけれどね。ちなみに、ゲイリー・ルイス&ザ・プレイボーイズのレコードも、実はレッキング・クルーが演奏しています。
さて、本日はリンゴ・スターことサー・リチャード・スターキーの、85歳のお誕生日です。新作リリースもライヴ活動もコンスタントにつづけていて、リンゴは、まだまだ、明るく楽しく元気ですなあ。お誕生日おめでとうございます。
(小島イコ)
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