
1968年に公開されたアニメ映画「YELLOW SUBMARINE」は、以前にもテレビアニメ「ザ・ビートルズ」を制作していたキング・フューチャーズの制作で、まだマネジャーのブライアン・エプスタインが存命中に企画されたのですが、1967年8月27日に32歳の若さでブライアン・エプスタインは亡くなってしまいました。ビートルズは、衛星生放送番組「OUR WORLD」に出演して「ALL YOU NEED IS LOVE」を披露したり、ポール・マッカートニーが発案したテレビ映画「MAGICAL MYSTERY TOUR」を優先して、端からバカにしていたアニメ映画には既発曲に加えて出来が悪い4曲(「ONLY A NORTHERN SONG」、「ALL TOGETHER NOW」、「HEY BULLDOG」、「IT'S ALL TOO MUCH」)を提供して、お茶を濁しておりました。ところが、出来上がったアニメ映画を観たら、コレがまた傑作だったので、映画の最後に実写で出演する事になって、元々は映画用に回した4曲に、ボツになった「ACROSS THE UNIVERSE」を加えた5曲入りのEPにする予定を変更して、1969年1月17日にA面にビートルズの新曲4曲に既発曲でアニメ映画のテーマ曲「YELLOW SUBMARINE」と、クライマックスで流れる「ALL YOU NEED IS LOVE」を加えた6曲を入れて、B面はサー・ジョージ・マーティンによるオーケストラでのインストゥルメンタル7曲を入れたアルバムにしてアップルからリリースしてしまったのです。流石にこの内容では弱く、全英3位・全米2位でした。いや、逆に、こんな内容でもそこまで上がったのです。
ビートルズによるレコーディング曲は、全てが1967年2月から1968年2月までに行われていて、つまり、1968年5月から10月までにレコーディングされて1968年11月22日にリリースされた2枚組のアルバム「THE BEATLES(ホワイト・アルバム)」よりも前に完成していました。それにしたって、1968年11月22日に2枚組のアルバムを出したばかりなのに、幾らサントラ盤とは云え、2か月も経たない1969年1月17日に次のアルバムを出してしまったのですから、1960年代らしいところではあります。当のビートルズは、その時には「THE GET BACK SESSIONS」をやっている真っ最中だったのですから、それも驚異的です。「THE GET BACK SESSIONS」は、1969年1月2日には始まっているわけで、2枚組のアルバムを出してから1か月余りで次のリハーサルへと突入していたのです。コレもまた、ポールの発案なのですけれど、ドキュメンタリー映画「GET BACK」を観ると、ポールは「前のアルバム(「ホワイト・アルバム」)は失敗作だったから、今回はもっと良いアルバムを作らなきゃいけない」とか、真顔で云っているのです。まだリリースしたばかりの「ホワイト・アルバム」を失敗作のひとことで片付けて、新たな挑戦へと向かっていたわけで、その辺は、流石は天下のビートルズだなあ、と感動してしまいました。そんな中でリリースされたサントラ盤「YELLOW SUBMARINE」なんて、眼中になかったのでしょうなあ。
アニメ映画「YELLOW SUBMARINE」の内容は、愛と平和と音楽が溢れる海底王国「ペパーランド」が、悪の軍団「ブルー・ミーニーズ」に侵略されて、イエロー・サブマリンに乗った使者がビートルズに助けを求めて、最初はリンゴに声を掛けます。リンゴがジョン、ポール、ジョージに話を持っていって、使者と共にイエロー・サブマリンで海底王国へ向かい、その間に色々な海を体験して、「NOWHERE MAN」である哲学者のジェレミーと出逢い、ペパーランドに着いたビートルズは音楽の力でブルー・ミーニーズを改心させて、愛と平和と音楽の王国が復活する、と云う勧善懲悪ストーリーです。テレビ映画「MAGICAL MYSTERY TOUR」ほど出鱈目ではなく、後に幼いショーンくんが観ても理解出来た子どもでも楽しめる内容ですが、ビートルズの楽曲に乗せてアニメでのミュージック・ヴィデオの様なサイケデリックな映像は素晴らしく、フランケンシュタインみたいな怪人が薬を飲んだらジョンに変身したり、ジョージの部屋を訪れたらインド音楽が流れて広大な空間にジョージが浮いていたり、ポールの部屋ではポールが指揮してオーケストラが演奏していたり、登場シーンだけでも訳が分からない演出がされています。水彩画による万華鏡の様な「LUCY IN THE SKY WITH DIAMONDS」のシーンや、本編ではトリのジョージ作の「IT'S ALL TOO MUCH」の有無を云わせぬドラッギーな世界観など、やはり傑作だと思います。
今回は、そんなアニメ映画「YELLOW SUBMARINE」を、音だけで追体験出来る「UNDERCOVER」からの1CDアルバム「YELLOW SUBMARINE SANDWICH」を紹介します。内容は、1「ONCE UPON A TIME」、2「YELLOW SUBMARINE」、3「LUCY IN THE SKY WITH DIAMONDS」、4「ALL TOGETHER NOW」、5「ONLY A NORTHERN SONG」、6「HEY BULLDOG」、7「SHE CAN TALK TO ME」、8「YELLOW SUBMARINE」、9「ALL YOU NEED IS LOVE」、10「LUCY IN THE SKY WITH DIAMONDS」、11「RINGO'S BREAKDOWN」、12「ONLY A NORTHERN SONG」、13「IT'S ALL TOO MUCH」、14「YELLOW SUBMARINE THEATRICAL TRAILER」、15「ELEANOR RIGBY」、16「WHEN I'M SIXTY-FOUR」、17「NOWHERE MAN」、18「TIME TO RECTILY / TIPTOE THRU THE MEANIES」、19「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND〜WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」、20「BABY YOU'RE A RICH MAN」、21「ALL TOGETHER NOW」、22「BLUE GLASS BOWL」、23「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND(REPRISE)」、24「LUCY IN THE SKY WITH DIAMONDS」、25「BILLY SHEARS APPLAUSE」、26「THE FINAL NOTE」の、全26トラック入りです。曲だけではなく、印象的なセリフも収録されていますが、最後の実写部分で「ALL TOGETHER NOW」へつづく部分以外は、声優さんがアフレコしているので、ビートルズの声ではありません。
中には、1「YELLOW SUBMARINE」、5「ONLY A NORTHERN SONG」、10「LUCY IN THE SKY WITH DIAMONDS」、23「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND(REPRISE)」の様に、公式盤「ANTHOLOGY」からのミックスも含まれていますし、7「SHE CAN TALK TO ME」はジョンによる「HEY BULLDOG」のデモ音源です。3「LUCY IN THE SKY WITH DIAMONDS」は、最初をジェレミーが歌っているヴァージョンです。4「ALL TOGETHER NOW」、6「HEY BULLDOG」、12「ONLY A NORTHERN SONG」は、モノラル・ミックスで、13「IT'S ALL TOO MUCH」はロング・ヴァージョンです。15「ELEANOR RIGBY」〜22「BLUE GLASS BOWL」は、フィルム・ミックスなので映画用の音源です。最後の本物のビートルズによるセリフも、完全収録されています。問題は、24「LUCY IN THE SKY WITH DIAMONDS」で、トランス・ミックスと書かれているチープなリミックス音源が収録されています。25「BILLY SHEARS APPLAUSE」は、「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」のイントロの歓声のSEだけが入っていて、あんまり嬉しくありません。SEに関してはアルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」のブートレグでも散々聴かされているので、困ったちゃんなのです。最後の26「THE FINAL NOTE」は、「A DAY IN THE LIFE」のオーケストラが上昇してゆく部分で、イエロー・サブマリンが時空を超える部分で使われていたアレです。このブートレグには当時の日本での宣伝ポスターが掲載されているのですけれど、1969年で「日本デビュー5周年」と書かれていて、確かにそうなんですけれど、翌1970年にビートルズは解散するので、つまり日本デビューから、たったの6年で解散してしまったのですね。
(小島イコ)
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