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2025年06月19日

「ポールの道」#764「THE BEATLES BLACK VOX」
#073「YESTERDAY AND TODAY / REVOLVER」

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米国キャピトルは、1966年6月20日に、ビートルズのキャピトルでは10作目(米国では12作目)の編集アルバム「YESTERDAY AND TODAY」をリリースしました。内容は、A面が、1「DRIVE MY CAR」、2「I'M ONLY SLEEPING」、3「NOWHERE MAN」、4「DR. ROBERT」、5「YESTERDAY」、6「ACT NATURALLY」で、B面が、1「AND YOUR BIRD CAN SING」、2「IF I NEEDED SOMEONE」、3「WE CAN WORK IT OUT」、4「WHAT GOES ON」、5「DAY TRIPPER」の全11曲入りでした。それは、英国オリジナル5作目のアルバム「HELP!」から2曲(「YESTERDAY」、「ACT NATURALLY」)、英国オリジナル6作目のアルバム「RUBBER SOUL」から4曲(「DRIVE MY CAR」、「NOWHERE MAN」、「IF I NEEDED SOMEONE」、「WHAT GOES ON」)、英国ではシングルのみだった2曲(「WE CAN WORK IT OUT」、「DAY TRIPPER」)、そして、英国オリジナルではまだリリース前だった7作目のアルバム「REVOLVER」から先出しさせた3曲(「I'M ONLY SLEEPING」、「DR. ROBERT」、「AND YOUR BIRD CAN SING」)をごった煮にしたトンデモ過ぎる選曲です。更に、1966年8月8日には、米国キャピトルでは11作目(米国では13作目)の編集アルバム「REVOLVER」をリリースしています。この米国キャピトル盤のアルバム「REVOLVER」は、更にトンデモな内容でのリリースでした。

クラウス・フォアマンによるジャケットも、タイトルも英国オリジナル7作目のアルバム「REVOLVER」と同じなのに、A面が、1「TAXMAN」、2「ELEANOR RIGBY」、3「LOVE YOU TO」、4「HERE, THERE AND EVERYWHERE」、5「YELLOW SUBMARINE」、6「SHE SAID, SHE SAID」で、B面が、1「GOODDAY SUNSHINE」、2「FOR NO ONE」、3「I WANT TO TELL YOU」、4「GOT TO GET YOU INTO MY LIFE」、5「TOMORROW NEVER KNOWS」の、全11曲入りで、要するにアルバム「YESTERDAY AND TODAY」で先出しさせた3曲(「I'M ONLY SLEEPING」、「DR. ROBERT」、「AND YOUR BIRD CAN SING」)を抜いただけの内容だったのです。しかも、しかもですよ、その3曲が全てジョンが主導で書いて歌っている曲ばかりだったので、米国キャピトル盤のアルバム「REVOLVER」では、ポールが主導で書いて歌っているのが英国盤と同じ5曲(「ELEANOR RIGBY」、「HERE, THERE AND EVERYWHERE」、「GOODDAY SUNSHINE」、「FOR NO ONE」、「GOT TO GET YOU INTO MY LIFE」)で、ジョージが書いて歌っているのが英国盤と同じ3曲(「TAXMAN」、「LOVE YOU TO」、「I WANT TO TELL YOU」)で、レノン=マッカートニー作でリンゴが歌っているのが英国盤と同じ1曲(「YELLOW SUBMARINE」)で、ジョンが主導で書いて歌っているのが2曲(「SHE SAID, SHE SAID」、「TOMORROW NEVER KNOWS」)となっているのです。

英国盤オリジナルのアルバム「REVOLVER」は、ジョンが主導で書いて歌っている曲と、ポールが主導で書いて歌っている曲が交互に配置されていて、ソレにジョージの曲とリンゴの歌を加えている構成となっていて、ジョージの曲とリンゴの歌を抜いても、ジョンとポールは代わる代わるに歌っている、絶妙なパワーバランスとなっています。ソレをですね、米国キャピトル盤ではジョンの3曲を抜いているので、矢鱈とポールの曲がつづいていて、ジョージが3曲書いているので、ジョンが2曲でジョージよりも少なくなっているのです。確かに、アルバム「REVOLVER」でのポールの5曲(「ELEANOR RIGBY」、「HERE, THERE AND EVERYWHERE」、「GOODDAY SUNSHINE」、「FOR NO ONE」、「GOT TO GET YOU INTO MY LIFE」)は全てが名曲ではありますけれど、それらがジョンの5曲と均等に並べてあるのが重要なのです。こうして米国キャピトル盤のスカスカな内容を聴くとですね、如何にジョンの曲がアルバムを印象的にしていたのかが分かります。ポールの曲ばかりだと、確かに美しい曲ばかりですけれど、ただそれだけな感じがするのです。例えば、英国盤ではB面の「GOODDAY SUNSHINE」と「FOR NO ONE」の間には「AND YOUR BIRD CAN SING」が入っているわけで、ソレがあるのとないのとでは、感動の度合いが違いすぎます。A面でも、「ELEANOR RIGBY」の次は「I'M ONLY SLEEPING」なわけで、吹っ飛ばしてジョージのインド炸裂な「LOVE YOU TO」になる違和感はスゴイのです。

多くの米国のファンは、1987年に英国オリジナル仕様でアルバム「REVOLVER」が初CD化された時に、初めて本物のアルバム「REVOLVER」を聴いたと思われるので、さぞ驚いたでしょう。米国キャピトルでは、次作アルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」から英国オリジナルと同じ内容になりましたが、その前がこのスカスカ「REVOLVER」だったので、その落差に驚愕して、それもあってアルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」がより重要なアルバムと考えられるようになったのでしょう。さて、そんなトンデモ編集アルバム「YESTERDAY AND TODAY」と、スカスカ「REVOLVER」を「2in1」にしたパイレート盤も幾つも出ています。今回は「AFTER TONES」からのアルバム「YESTERDAY AND TODAY / REVOLVER」を紹介します。全22曲入りで、前半11曲が米国キャピトル編集盤「YESTERDAY AND TODAY」で、後半11曲が米国キャピトル編集スカスカ盤「REVOLVER」を収録しています。このシリーズは他のキャピトル編集アルバムも「2in1」で収録したCDとしてリリースされています。それらに共通してジャケットにオープンリール・デッキの写真が載っているので、ソースはレコード盤ではなく、オープンリールテープを使用していると思われます。編集アルバム「YESTERDAY AND TODAY」には、かき集めた音源なので、リンゴの歌が2曲も入っているのもズッコケ・ポイントのひとつです。先出しさせた3曲も含めて、全てステレオ・ミックスで収録されています。

この「2in1」は、裏ジャケットには曲名が載っていて、ソレの編集アルバム「YESTERDAY AND TODAY」は、オリジナル仕様の全11曲の曲順になっています。ところが、実際に聴いてみると、1「DRIVE MY CAR」、2「I'M ONLY SLEEPING」、3「NOWHERE MAN」、4「WHAT GOES ON」、5「DAY TRIPPER」、6「DR. ROBERT」、7「YESTERDAY」、8「ACT NATURALLY」、9「AND YOUR BIRD CAN SING」、10「IF I NEEDED SOMEONE」、11「WE CAN WORK IT OUT」、となっていて、つまり「WHAT GOES ON」と「DAY TRIPPER」の位置が前倒しに移動しています。後半はスカスカ「REVOLVER」で、12「TAXMAN」、13「ELEANOR RIGBY」、14「LOVE YOU TO」、15「HERE, THERE AND EVERYWHERE」、16「YELLOW SUBMARINE」、17「SHE SAID, SHE SAID」、18「GOODDAY SUNSHINE」、19「FOR NO ONE」、20「I WANT TO TELL YOU」、21「GOT TO GET YOU INTO MY LIFE」、22「TOMORROW NEVER KNOWS」です。先出しさせた3曲が前半の編集アルバム「YESTERDAY AND TODAY」で聴けるのに、後半のスカスカな違和感は変わらずにあります。この米国スカスカ「REVOLVER」は、2014年の箱「THE U.S. ALBUMS」に2009年リマスター音源に差し替えて初CD化されて収録されているのですけれど、英国オリジナルから3曲を抜いて、音源は2009年リマスターにした意味が分かりません。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする