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2025年05月02日

「中野たむ、永遠の最後の戦い」



世の中がゴールデンウイークに入ろうかと云う、2025年4月の終わりには、女子プロレスを中心とした興行がいくつも行われました。まずは、4月26日に両国国技館でウナギ・サヤカの4度目の自主興行「ウナギ絶好調」が行われて、過去3回は後楽園ホールで超満員札止めだったウナギ・サヤカですが、出場選手も目新しくなかった上に、1万人以上入る両国国技館では客入りも厳しく、千八百人ほどだった様です。後楽園ホールだったならば、入りきらない程のお客さんですけれど、両国国技館に進出するには今一つだったのでしょう。話題の元・格闘王・前田日明がサプライズで登場するなど、相変わらずウナギ・サヤカの人脈作りは抜群なのですけれど、如何せん、肝心のプロレスがしょっぱいのです。ウナギ・サヤカもキャリアは早6年なんですけれど、どうして実践するプロレスが下手な侭なのか、逆に不思議です。プロモーターとしては、過去3回の後楽園ホールでの興行に関しては立派だったし、特に今年2月16日には里村明衣子との後楽園ホールでのワンマッチ興行も成功させているわけで、めげずにやってゆくのでしょう。それからですね、何やら最近、前田が「今のレスラーは受け身がとれていない」と発言して炎上しているらしく、タイミング良くウナギ・サヤカも呼んできたわけですけれど、別に前田を擁護する気はないけれど、前田がそう云う発言をするのは今に始まった事ではないんですよ。元プロレスラーの小橋建太がプロデュースする「Fortune Dream」と云う大会を行っていて、2019年の大会で前田と小橋が対談しているのですけれど、その時にはもう同じ発言をして警鐘を鳴らしていたのです。

さて、翌日の4月27日には、スターダムが横浜アリーナで「ALL STAR GRAND QUEENDOM 2025」を開催して、七千五百人の観衆を集めて、興行としては成功しました。メインエベントは赤いベルトと引退を賭けた「上谷沙弥 X 中野たむ」で、最後は上谷沙弥が掟破りのトワイライトドリームで中野たむからフォール勝ちして、中野たむは即引退となりました。前回の3月3日の「敗者スターダム退団マッチ」で負けた中野たむは、昨年暮れに赤いベルトを失った両国国技館での敗戦から、これで上谷沙弥に3連敗して「即引退」となったわけで、オールド・ファンは小川直也に連敗して即引退した橋本真也を思い出したでしょうなあ。上谷沙弥は、前回から1か月半の間に、中野たむをストーカー状態で追いつづけて、遂には中野たむを初心者マーク付きの車で轢くところまでいっていて、何故にチャンピオンである上谷沙弥の方からそう云うアクションを起こすのかが謎でした。ちなみに、それらのストーカー行為の現場には、必ず「東京スポーツ」の記者が居合わせていて、全ての所業がカメラで撮影されていました。それで、中野たむは引退となったのですけれど、勝った上谷沙弥が「お前が大好きだ!」とリング上で発言して、二人仲良く花道を退場したのでは、ヒールとしての上谷沙弥は、もうおしまいでしょう。ダンプ松本が観ていたら「お前ら、そう云う事をお客さんの前でやったらダメだろう、ヒールなんだから、違うだろう」と説教しそうですわなあ。中野たむは上谷沙弥のプロレスの師匠だし、上谷沙弥は心根が優しいコなのですけれど、何だかなあ、ではあります。

上谷沙弥は「伝説の試合になる」と戦前に語っていたのですけれど、もし、このまま本当に中野たむが何の引退ロードもセレモニーもなく引退したのならば、中野たむは伝説のプロレスラーになるでしょう。しかし、上谷沙弥はヒールとしてはおしまいです。赤いベルトの次期挑戦者は、シンデレラ・トーナメント優勝者である玖麗さやかに決まったのですけれど、今更、上谷沙弥は赤いベルトの調印書を破いてヒール路線をつづけようとしても、もう遅いんですよ。「大好きな中野たむを引退に追い込んだプロレスラー」として、やってゆく覚悟は出来ているのでしょうか。横浜アリーナの大会では、岩谷麻優と朱里による「IWGP女子王座戦」も行われていて、スターダムのアイコンである岩谷麻優は10度目の防衛戦だったのですけれど、朱里が「朱世界」を改良した「クロスアーム式朱世界」で勝って、早速Sareeeが挑戦を表明しました。ところが、翌日の4月28日に、岩谷麻優がスターダムを退団してしまったのです。今後に関してはまだ公表されていませんけれど、アノ団体への参戦が有力視されています。今更アノ団体などとぼかす必要もなく、ズバリ云って「マリーゴールド」ですけれど、岩谷麻優が参戦するとなったならば、1年前に新人で岩谷麻優を慕っていた弓月(ビクトリア弓月)が移籍してしまったり、ジュリアが「最初に小川さんに新団体を作って欲しいと云った人が来れなかった」と云った答え合わせにはなります。スターダムと云う団体は「シンデレラ・トーナメント」や「5★STAR GP」で優勝して、白いベルトや赤いベルトを巻いてしまうと「あがり」になってしまい、その先がないのです。(追記:この記事を書いたのは4月29日で、5月1日に岩谷麻優はマリーゴールドに入団しました。)

岩谷麻優はスターダムの全てのタイトルを得てグランドスラムを達成した唯一の選手であり、この退団になる前までは唯一の一期生でした。キャリアは長いけれど、まだ30代前半で、まだまだやれる選手です。そんな功労者である中野たむを惨めな敗戦で即引退させたり、IWGP戦で負けたから岩谷麻優を翌日に退団させちゃったり、スターダムのフロントは何をやっているんですかね。中野たむと上谷沙弥による引退マッチは「選手の要望です」などと分かり易いウソを云っているし、テクラと玖麗さやかの試合の後には出しゃばってリングに上がってテクラを解雇しちゃうし、アノ社長は出たがりで、何でロッシー小川といい岡田社長といい、女子プロレス団体のフロントのオッサンは出しゃばって自分が目立とうとするのでしょうか。プロレス団体に限らず、社長が出たがりで良い印象なんてないんですけれどね。岩谷麻優の退団によって、リーダーを失った「STARS」は解体でしょうけれど、葉月とコグマの「FWC」も5月6日の福岡凱旋興行が終わったら退団するかもしれません。同じく凱旋する推しの舞華は、橋本千紘に完敗してしまい、云いたい放題云われた挙句の果てに、凱旋興行が終わったら腕の手術の為に長期欠場する事になりました。岩谷麻優、中野たむ、舞華と、3人の元・赤いベルトの王者が揃ってスターダムのリングから消えるのです。既にAEW入りの為に白川未奈も退団したし、テクラはクビになったので、主力選手が5人もいなくなるわけで、コレは只事ではありません。1年前にマリーゴールドに移籍したジュリアと林下詩美も元・赤いベルトの王者だったので、スターダム最高峰のベルトを巻いた選手が1年位の間に5人もいなくなったわけですよ。

幾ら何でも、流れが急過ぎるし、かと云ってマリーゴールドも成功しているとは云えず、岩谷麻優を引っ張ったとしても、ソレは昔スターダムでやっていた事の焼き直しになってしまうかもしれません。そして、横浜アリーナではタッグ・マッチで推しの安納サオリと戦ったセンダイガールズプロレスリングの里村明衣子は、4月29日の後楽園ホール大会で引退しました。里村明衣子は9か月前には引退を表明していて、たっぷりと引退ロードを演出して、最後まで第一線で活躍しての惜しまれつつの引退でした。引退表明後には、安納サオリやSareeeとのシングル・マッチでも里村明衣子が勝っているし、橋本千紘にはしっかりと負けてベルトを託して、前述のウナギ・サヤカとのワンマッチ興行でも当然の如く勝っていて、プロレスラーとしての格を落とす事もなく、カッコ良く引退しました。何故、スターダムは人気者で功労者であった中野たむを、アンナ酷い引退に追い込んだのでしょうか。中野たむが引退する時には、ジュリアが駆けつける約束だったのに、ジュリアは「バカ、ブス、ウソツキ」と呟くしかなかったではありませんか。確かに、七千五百人の観衆を集めて興行としては成功したのでしょうけれど、引退マッチと云う禁断の果実をぶら下げても一万人の目標を達成できなかったわけで、その上、主力選手を平気で手放してしまう結果となったのでは、ダメでしょう。ドンドンドンガラガッタと新人をデビューさせて、必要以上に推しているのは、世代交代を目論んでいるからなのかもしれませんが、そんなに簡単に新人選手が強くなったり人気者になるわけはないので、育成期間が必要で、しばらくは厳しい状況となりそうです。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:07| KINASAI | 更新情報をチェックする