
ジョン・レノンは、1980年12月8日に、40歳で射殺されました。ジョンが亡くなった事で、1980年11月17日にゲフィンからリリースしたヨーコさんとの共作アルバム「DOUBLE FANTASY」は、ジョンの遺作となりました。ジョンが5年間の沈黙から再出発を高らかに歌った生前最後のシングル「(JUST LIKE)STARTING OVER」は、ジョンの死後に全米首位!・全英首位!となり、追悼シングルとなった「WOMAN」も全米2位・全英首位!となり、アルバム「DOUBLE FANTASY」も全米首位!・全英首位!となり、グラミー賞で最優秀アルバム賞を受賞しました。アルバム「DOUBLE FANTASY」が遺作となったので、それ以降にリリースされた楽曲は、全てがジョンが自ら発表したものではありません。CDが商品化されたのは1982年からなので、ジョンは自分の作品がCDになっている事も知りません。ジョンの死後に、最初にまとまったカタチで世に出たアルバムは、1982年のベスト盤「THE JOHN LENNON COLLECTION」です。当時はジョンの作品が、EMIとゲフィンに分かれていたので、レーベルの枠を越えたベスト盤でした。とは云え、ゲフィンからはアルバム「DOUBLE FANTASY」でのジョンの7曲しかなかったので、その全7曲中6曲が収録されています。このベスト盤は1989年にボーナス・トラックも加えてCD化されたので、1997年にベスト盤「LENNON LEGEND」がリリースされるまでは、お手軽な1枚もののベスト盤として広く聴かれていました。
ジョンの未発表音源が発掘されたのは、1984年になってからで、まずは1984年1月19日(米国)・同年1月23日(英国)・同年1月25日(日本)に、ポリドールからヨーコさんとの共作のカタチでの遺稿集「MILK AND HONEY」がリリースされました。それに関しては次回から詳しく書きますけれど、同じ1984年9月13日(米国)・同年9月21日(英国)・同年10月25日(日本)に、コンピレーション・アルバム「EVERY MAN HAS A WOMAN(ジョンとヨーコの仲間たち)」がポリドールからリリースされました。このアルバムは、ジョンが生前に企画していたもので、ヨーコさんの曲を他のミュージシャンがカヴァーした、トリビュート盤の先駆けです。ジョンやショーンくんの他に、ハリー・ニルソン、エルヴィス・コステロ、ロバータ・フラック、エディ・マネー、ロザンヌ・キャッシュ、などが参加しています。そのアルバムのA面1曲目がジョンが歌う「EVERY MAN HAS A WOMAN WHO LOVES HIM」で、B面6曲目で最後が当時8歳のショーンくんがラップするデビュー曲となった「IT'S ALRIGHT」で、1984年11月1日(米国)・同年11月16日(英国)・同年12月10日(日本)にカップリングしてシングル・カットされています。ジョンが歌っている「EVERY MAN HAS A WOMAN WHO LOVES HIM」は、アルバム「DOUBLE FANTASY」のB面6曲目に収録されたヨーコさんの曲から、ヨーコさんのリード・ヴォーカルをカットしたヴァージョンです。つまり、元々はジョンがバッキング・ヴォーカルを担当したのをメイン・ヴォーカルにしています。
このアルバムをジョンが企画したのは、ヨーコさんの曲が彼女の独特なヴォーカル・スタイルの為に正当な評価を得られていない、と感じていたからです。アルバム「DOUBLE FANTASY」で自分の曲とヨーコさんの曲を交互に収録したり、こうしてトリビュート盤を企画したりと、涙ぐましい努力をして、何とかしてヨーコさんの曲を世間に届く様にしていたわけです。レコーディング・メンバーは、ジョン・レノン(ヴォーカル、ギター、キーボード)、ヨーコ・オノ(ヴォーカル)、アール・スリック(ギター)、ヒュー・マクラッケン(ギター)、トニー・レヴィン(ベース)、ジョージ・スモール(キーボード)、エド・ウォルシュ(オーバーハイム)、アンディ・ニューマーク(ドラムス)、アーサー・ジェンキンス(パーカッション)、ジョージ・"ヤング"・オパリスキー(サックス)で、当然ながらアルバム「DOUBLE FANTASY」のセッション・メンバーです。ジョンはこのメンバーで、1981年に世界ツアーを計画していて、最初は日本でライヴをやる心算だったようです。ジョンが歌った「EVERY MAN HAS A WOMAN WHO LOVES HIM」は、後に1990年のCD4枚組の箱「LENNON」に収録されていて、その箱にはアルバム「DOUBLE FANTASY」と遺稿集「MILK AND HONEY」のジョンの全13曲に、この曲を加えた1980年のジョンが歌った14曲が全て収録されています。このジョンによるカヴァー・ヴァージョンは、2001年リリースの遺稿集「MILK AND HONEY」のリミックス盤にもボーナス・トラックとして収録されて、2020年のベスト盤「GIMME SOME TRUTH.」にも収録されています。
(小島イコ)
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