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2025年03月14日

「ポールの道」#674「LENNON SONGS」#099 「(JUST LIKE)STARTING OVER」

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ジョン・レノンは、1980年10月23日(米国)・同年10月24日(英国)・同年11月10日(日本)に、ゲフィンからシングル「(JUST LIKE)STARTING OVER」(B面は、ヨーコさんの「KISS KISS KISS」)をリリースしました。ジョンのレコードは、1975年10月リリースのアルバム「SHAVED FISH」以来5年ぶりで、それがベスト盤であった為、新作としては1975年2月リリースのアルバム「ROCK'N'ROLL」と1975年3月リリースのシングル「STAND BY ME / MOVE OVER MS. L.」以来5年半ぶりで、それがカヴァー中心であった為、オリジナルとしては1974年9月リリースのアルバム「WALLS AND BRIDGES(心の壁、愛の橋)」以来6年ぶりだったのです。2025年の現在の感覚だと、5年や6年位アルバムをリリースしなかったとしても、すわっ、引退か?とはなりませんが、1970年代にはミュージシャンは年に1枚はアルバムをリリースしていたわけで、5年間も何も出さないのは「引退」を意味していました。事実として、ジョンは1976年1月にEMI・キャピトルとの契約が切れた時に、如何なるレコード会社とも再契約には応じず、本当に「引退」して「ハウス・ハズバンド」になったのです。そのジョンが、1980年に新たにゲフィン・レコードと契約して、音楽活動を再開したと云うニュースは、ロック・ファンにとっては大事件でした。しかしながら、世間一般では「5年間も仕事もしないで遊んで暮らしていた大金持ちが、気まぐれで遊び半分で音楽活動を再開した」と云った、ネガティヴな評価でした。

当時はインターネットなどない時代だったので、ジョンの復活ソングである「(JUST LIKE)STARTING OVER」を最初に聴いたのは、NHK-FMでの放送でした。それはプロモ盤ヴァージョンで、エンディングが少しだけ長くて、ジョンのアドリブ・ヴォーカルが多く聴けるのですけれど、エア・チェックしたカセットテープが擦り切れる程に聴き捲りました。そして、日本盤のシングルがリリースされたので、速攻で買いました。それまでジョンのシングルは、「MIND GAMES / MEAT CITY」と「WHATEVER GETS YOU THRU THE NIGHT / BEEF JERKY」と「#9 DREAM / WHAT YOU GOT」と「STAND BY ME / MOVE OVER MS. L.」と「IMAGINE / WORKING CLASS HERO」の5枚を買っていて、つまりB面がヨーコさんの曲のシングルは「片面しか聴かないので損をする」と思っていて買わなかったのですけれど、流石に5年ぶりの「(JUST LIKE)STARTING OVER / KISS KISS KISS」は買いました。この先行シングルは、1980年11月17日(米国・英国)・同年12月5日(日本)にゲフィンからリリースされた、ジョンとヨーコさんの共作アルバム「DOUBLE FANTASY」のA面1曲目と2曲目の曲が収録されています。ビートルズのアニメ映画「YELLOW SUBMARINE」を友人の家で観た当時4歳だった息子のショーンくんが「パパはビートルズだったの?」と訊いたとか、ポール・マッカートニーのシングル「COMING UP」に刺激されたとか、色々な要因があったらしいのですけれど、兎に角、ジョンは5年ぶりに復活したのです。大いに興奮したし、アンナ風に新作を待つ気分は、それ以前もそれ以後も味わった事がありません。

1970年リリースのジョンの1作目のソロ・アルバム「JOHN LENNON / PLASTIC ONO BAND(ジョンの魂)」の幕開け「MOTHER」での重い鐘の音を思い出させる鈴の音から始まる「(JUST LIKE)STARTING OVER」は、ジョンが「エルヴィス・オービソン」と呼んだ1950年代のロックンロール風でもありながら、いきなりサビのスローなAメロから、アップテンポでビーチ・ボーイズの「DON'T WORRY BABY」や「DARLIN'」にも似たBメロへ、そしてビートルズの「DON'T LET ME DOWN」を思わせるCメロからBメロに戻ってからのアップテンポになったAメロへと展開する曲調は、正に「ジョン・レノン」そのもので、素晴らしい楽曲だと思いました。1980年8月9日にニューヨークのザ・ヒット・ファクトリーでレコーディングされたメンバーは、ジョン・レノン(ヴォーカル、エレクトリック・ギター)、アール・スリック(エレクトリック・ギター)、ヒュー・マクラッケン(エレクトリック・ギター)、トニー・レヴィン(ベース)、ジョージ・スモール(キーボード)、ミシェル・シンプソン、カッサンドラ・ウートン、シェリル・マンソン・ジャックス、エリック・トロイヤー(以上、バッキング・ヴォーカル)、アンディ・ニューマーク(ドラムス)、アーサー・ジェンキンス(パーカッション)です。ショーンくんと出掛けたバミューダ諸島で「MY LIFE」として書かれた曲で、その「MY LIFE」のデモ音源が1998年の箱「JOHN LENNON ANTHOLOGY」に収録されています。この曲は1997年にドラマの主題歌になったので、日本限定で短冊CD(カップリングは「BEAUTIFUL BOY(DARLING BOY)」)になっています。高らかに再出発を歌うこの名曲は、リリース当初はトップ10に入る位の成績だったのですけれど、1980年12月8日にジョンが射殺された事で、結果的にジョン生前最後のシングルとなり、全米首位!・全英首位!となっています。ジョンの死後にリリースされたベスト盤には必ず収録されていて、MVもDVD化されたベスト盤には必ず収録されています。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする