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2025年03月13日

「ポールの道」#673「LENNON SONGS」#098 「REAL LOVE」(「GIRLS AND BOYS」)

Imagine (Original Soundtrack)


1975年10月24日(米国・英国)に、アップルからリリースしたシングル集のベスト盤「SHAVED FISH」を最後に、ジョン・レノンは5年間の沈黙期間に入りました。そして、1980年10月23日(米国)・同年10月24日(英国)にゲフィンからリリースされたシングル「(JUST LIKE)STARTING OVER」(B面はヨーコさんの「KISS KISS KISS」)で復活するまでの期間で、ジョンの音楽活動は、1976年9月にリリースされた盟友・リンゴ・スターのアルバム「RINGO'S ROTOGRAVURE」に収録された「COOKIN'(IN THE KITCHEN OF LOVE)」を提供して、ピアノで参加しただけでした。その「COOKIN'(IN THE KITCHEN OF LOVE)」も、同じくリンゴに提供した「I'M THE GREATEST」や「(IT'S ALL DOWN TO)GOODNIGHT VIENNA」や、カヴァーを提案した「ONLY YOU(AND YOU ALONE)」と同様に、ジョンがガイド・ヴォーカルを務めた音源があるのですけれど、他の曲とは違って公式盤には収録されていません。1977年から1979年にかけてと云うと、全くジョンの音楽活動は不明となっていて、頻繁に日本に来ていたり、エルトン・ジョンとベイ・シティ・ローラーズのライヴに行ったら、ファンの女の子たちに「エルトンの隣に居るオジサンは誰?」と云われたとか、ヨーコさんがジョンとショーンくんのお誕生日に飛行機で空に「HAPPY BIRTHDAY」と描いて「お金持ちの道楽で、生活の心配がない人はいいですなあ」と揶揄されたりしていたのです。

それで、日本の音楽評論家の中には「ジョンは曲が書けなくなったので、レコードを出せない」などと云い出す方までいたわけですけれど、それは間違いであったと、ジョンの死後に大量に放出されたデモ音源で覆される事となりました。しかしながら、1970年代後半には、2025年の現在の様にSNSなどなかったわけで、テレビとラジオと紙媒体でしか情報は得られなかったし、ジョンがレコード会社とは契約せずに「ハウス・ハズバンド(主夫)」になったのを意味するところなど理解不能でした。ジョンのアルバムが、1974年9月のオリジナル・アルバム「WALLS AND BRIDGES(心の壁、愛の橋)」から、1975年2月のカヴァー・アルバム「ROCK'N'ROLL」を経て、1975年10月のベスト盤「SHAVED FISH」と云う順番でリリースされた事も、実はカヴァー・アルバム「ROCK'N'ROLL」の方がオリジナル・アルバム「WALLS AND BRIDGES」よりも早くレコーディングが開始されていた事実もよく知らされていなかったので、ジョンがオリジナル・アルバムを出せずにカヴァー・アルバムに走ったのは自分で曲を書けなくなったからで、次がベスト盤だったのも新曲が書けなくなったからだ、と云う短絡的な考え方をする音楽評論家がバカな事を云い出すにはそれなりの妄想が許されていたし、そもそも、ジョンがレコード会社と契約をしていなかった事実すらよく知らされていなかったわけで、バカがバカな事を云い出す土壌となっていたわけですなあ。

1976年から1980年まで、ジョンはレコード会社と契約していなかったので、新作レコードを出せるわけがなかったと、現在では知られています。理由は、ショーン・タロウ・オノ・レノンくんが誕生したからで、ヨーコさんが妊娠したから、ジョンは1975年にリリースを予定していた新作オリジナル・アルバム「BETWEEN THE LINES」を中止して、1975年10月9日(ジョンの35歳のお誕生日)にショーンくんが誕生したから、音楽活動を辞めて「ハウス・ハズバンド」となって育児に専念したのです。ジョンは、ショーンくんが5歳になるまでは音楽活動をやらないと初めから決めていたので、1980年10月に復活する事も予定通りだったわけです。ジョンの死後に、1988年から1992年にかけて、ヨーコさんが提供した膨大なジョンの未発表音源を元にしたラジオ番組「THE LOST LENNON TAPES」が放送されて、その一部(と云ってもCD4枚組で94トラック入り)が箱「JOHN LENNON ANTHOLOGY」として公式盤化されました。それ以前には、1986年に未発表ライヴ盤「LIVE IN NEW YORK CITY」と、未発表音源集「MENLOVE AVE.」が出て、1988年のサントラ盤「IMAGINE」の冒頭に「REAL LOVE」が収録されただけです。その「REAL LOVE」は、後にビートルズ名義で1996年にリリースされるのですけれど、サントラ盤に収録されたヴァージョンは、ビートルズ名義でリリースされた元の音源とは別ヴァージョンです。サントラ盤に収録されたのは、1980年7月にジョンがアコースティック・ギターで弾き語りしたデモ音源で、タイトルは「REAL LOVE」となっていますけれど、元々は「GIRLS AND BOYS」と題されていて、途中で「ISOLATION」と同じ展開が聴けます。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする