ジョン・レノンが、1975年2月17日(米国)・同年2月21日(英国)にアップルからリリースした、5作目で最後のソロ・アルバム「ROCK'N'ROLL」の最後には、ロイド・プライスの「JUST BECAUSE」が収録されていて、ジョンは最後に「GOOD BYE」と云っています。ジョンとしても、まさかそれが音楽活動から撤退する別れの挨拶になるとは思っていなかったでしょう。ジョンはアルバム「ROCK'N'ROLL」のリリース前の1975年1月に、デヴィッド・ボウイのアルバム「YOUNG AMERICANS」(1975年3月リリース)のレコーディングに参加して、ビートルズのカヴァー「ACROSS THE UNIVERSE」と、デヴィッド・ボウイとカルロス・アロマーとジョンで共作した「FAME」に参加していて、シングル・カットされた「FAME」は全米首位!となりました。更に、ジョンはポール・マッカートニーとも完全に和解して、ポールが率いるウイングスが1975年5月にリリースするアルバム「VENUS AND MARS」のニューオリンズでのレコーディングに参加する事となったのですけれど、よりを戻したヨーコさんが断固として反対して流れています。ヨーコさんとしては、そこでまたジョンがポールと組んだら、二度と自分の元には戻って来ない、と危機感を持ったと云われています。ジョンはEMI・キャピトル(アップル)との契約が切れる前に、もう1枚アルバムを出さなければならない契約があったので、最後に「BETWEEN THE LINES」と云う名のオリジナル・アルバムを制作する予定でした。それは当時、テレビ番組でジョン自身が発言しています。
しかし、ヨーコさんが妊娠したので、ジョンは新作アルバムを制作するのを止めてしまったのです。アルバム「BETWEEN THE LINES」がどこまで進んでいたのかは謎ですけれど、「MY LIFE」、「SALLY AND BILLY」、「TENNESSEE」、「POPCORN」、「NOBODY TOLD ME」、「MUCHO MUNGO」、「I'M STEPPING OUT」、「GROW OLD WITH ME」、「DEAR YOKO」と云った楽曲が準備されて、中には後に、1980年のアルバム「DOUBLE FANTASY」や、1984年の遺稿集「MILK AND HONEY」に収録された楽曲に発展していった曲が収録予定だったと云われています。ジョンは1975年10月9日(ジョンの35歳のお誕生日)にショーンくんが誕生したので、育児に専念する為に主夫となって、音楽活動を辞めてしまうのです。そして、契約を守る為に、新作アルバム「BETWEEN THE LINES」の代わりにコンピレーション・アルバムを出す事にしました。ジョンにはシングルのみのアルバム未収録曲が結構あったので、それをまとめてアルバムにしようと考えたわけです。それでジョンは、自分のシングル盤がどうなっているのか調べたら、ほとんどが廃盤になっている事実に驚いて、シングル盤を集めて、最初と最後に「GIVE PEACE A CHANCE」を収録するなど曲順も全てジョンが決めた、ジョンが生前では唯一のベスト・アルバムである「SHAVED FISH」を、1975年10月24日(英国、米国)・同年12月1日(日本)にアップルからリリースしました。
内容は、A面が、1「GIVE PEACE A CHANCE」、2「COLD TURKY」、3「INSTANT KARMA!」、4「POWER TO THE PEOPLE」、5「MOTHER」、6「WOMAN IS THE NIGGER OF THE WORLD」で、B面が、1「IMAGINE」、2「WHATEVER GETS YOU THRU THE NIGHT」、3「MIND GAMES」、4「#9 DREAM」、5「HAPPY XMAS(WAR IS OVER)」〜「GIVE PEACE A CHANCE(REPRISE)」の、全11曲入りです。これが、単なるベスト盤ではなく、ジョン自身が編集したトータル・アルバムになっています。まず、「GIVE PEACE A CHANCE」を最初と最後に配置して、最初はフェイドインしてフェイドアウトするサワリで、最後は1972年の「ワン・トゥ・ワン・コンサート」でのスティーヴィー・ワンダーがリード・ヴォーカルを取った部分が使われています。「MOTHER」は鐘の音から始まるアルバム・ヴァージョンですが、フェイドアウトが早い短縮ヴァージョンで、「WOMAN IS THE NIGGER OF THE WORLD」も短縮ヴァージョンで、「WHATEVER GETS YOU THRU THE NIGHT」も短縮ヴァージョンで、「HAPPY XMAS(WAR IS OVER)」は最後に「GIVE PEACE A CHANCE」が被っています。「POWER TO THE PEOPLE」は、EMIがマスター・テープを紛失していて盤起こしです。現在ではベスト盤の定番曲が並んでいますが、この時点では、「GIVE PEACE A CHANCE」、「COLD TURKY」、「INSTANT KARMA!」、「POWER TO THE PEOPLE」、「HAPPY XMAS(WAR IS OVER)」と、半数の5曲がアルバム初収録でしたし、他の曲も前述の様に編集されています。
(小島イコ)
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