リンゴ・スターが、1974年11月15日(英国)・同年11月18日(米国)にアップルからリリースした、4作目(リンゴ的には2作目)のソロ・アルバム「GOODNIGHT VIENNA(グッドナイト・ウィーン)」は、以前にも何度か紹介してきました。このアルバムは、ロサンゼルスで呑んだくれていたリンゴが、呑み仲間だったジョン・レノンとハリー・ニルソンが、ニルソンのアルバム「PUSSY CATS」の仕上げをする為にニューヨークに行ってしまい、ヒマになったので制作したと云われています。プロデュースは前作「RINGO」と同じリチャード・ペリーですけれど、ジョンが関わった3曲の中で「(IT'S ALL DA-DA-DOWN TO)GOODNIGHT VIENNA」と「ONLY YOU(AND YOU ALONE)」は、実質的にはジョンがプロデュースしています。もう1曲、リンゴとヴィニ・ポンシアの共作「ALL BY MYSELF」でも、ジョンはギターで参加しています。タイトル曲「(IT'S ALL DA-DA-DOWN TO)GOODNIGHT VIENNA」は、ジョンが書き下ろした新曲で、アルバムの最初と最後に収録していて、シングル・ヴァージョンはその二つを編集しているので、別ヴァージョンとなっています。ジョン・レノン(ピアノ)、ジェシ・エド・デイヴィス(ギター)、クラウス・フォアマン(ベース)、ジム・ケルトナー(ドラムス)と云う布陣は、同年にリリースしたジョンのアルバム「WALLS AND BRIDGES(心の壁、愛の橋)」と同じです。
「(IT'S ALL DA-DA-DOWN TO)GOODNIGHT VIENNA」のジョンがリード・ヴォーカルを担当したガイド・ヴォーカル音源は、1998年の箱「JOHN LENNON ANTHOLOGY」に収録されています。リンゴの前作「RINGO」には、ジョンだけではなく、ポール・マッカートニーとジョージ・ハリスンも楽曲を提供して、演奏にも参加していて、全英6位・全米2位と大ヒットして、シングル・カットした「PHOTOGRAPH(想い出のフォトグラフ)」(ジョージとリンゴの共作で、ジョージが参加)と「YOU'RE SIXTEEN」(ポールが参加)は全米首位!となっています。このアルバム「GOODNIGHT VIENNA」は、全英24位とその後の落ちぶれてゆくリンゴを予感させるものの、全米8位と大ヒットしています。ポールとジョージは参加していませんけれど、前述のジョン、ジェシ・エド・デイヴィス、クラウス・フォアマン、ジム・ケルトナー、ハリー・ニルソン、に加えて、エルトン・ジョン、ビリー・プレストン、デヴィッド・フォスター、ニッキー・ホプキンス、ドクター・ジョン、スティーヴ・クロッパー、ロビー・ロバートソン、ロン・ヴァン・イートン、ボビー・キーズなどが参加しています。「(IT'S ALL DA-DA-DOWN TO)GOODNIGHT VIENNA」は、アルバムからの米国や日本では第3弾シングルになっていて、全米31位まで上がっていますし、前述の通り別ヴァージョンです。
ジョンは「(IT'S ALL DA-DA-DOWN TO)GOODNIGHT VIENNA」を書いただけではなく、1955年のプラターズの「ONLY YOU(AND YOU ALONE)」のカヴァーを提案してアレンジして参加しています。このカヴァーは、ジョンの1975年リリースのカヴァー・アルバム「ROCK'N'ROLL」への収録を考えていたと思われる楽曲で、レコーディング・メンバーは、ジョン・レノン(アコースティック・ギター)、ハリー・ニルソン(バッキング・ヴォーカル)、ジェシ・エド・デイヴィス(ギター)、スティーヴ・クロッパー(ギター)、クラウス・フォアマン(ベース)、ジム・ケルトナー(ドラムス)のアルバム「WALLS AND BRIDGES」の面々によるベーシック・トラックに、リンゴ・スター(ヴォーカル、ドラムス)、ビリー・プレストン(エレクトリック・ピアノ)をオーバー・ダビングして完成させています。この曲にもジョンがガイド・ヴォーカルを担当しているデモ音源があって、やはり1998年の箱「JOHN LENNON ANTHOLOGY」に収録されています。聴き比べると、リンゴはジョンの大胆に歌メロを変えたガイド・ヴォーカルを、そのまんまマネして歌っていたと分かります。リンゴのヴァージョンは、アルバムからの先行シングルとなり、全米6位・全英26位のヒットとなっています。ジョンが歌ったヴァージョンは、単なるガイド・ヴォーカルとは思えない程に完成されていて、「カヴァーの帝王・ジョン・レノン、ここにあり」、を感じさせます。
(小島イコ)
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