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2025年02月14日

「ポールの道」#646「LENNON SONGS」#071 「YA YA」Version 1

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ジョン・レノンが、1974年9月26日(米国)・同年10月4日(英国)にアップルからリリースした4作目のソロ・アルバム「WALLS AND BRIDGES(心の壁、愛の橋)」のB面6曲目で、アルバムの最後に収録されているのが、リー・ドーシーのカヴァー曲「YA YA」です。この楽曲は、ジョンの次作であるカヴァー・アルバム「ROCK'N'ROLL」にも別ヴァージョンが収録されています。ジョンが生前に、異なるスタジオ・ヴァージョンを発表したのは、この「YA YA」だけなので、二つのヴァージョンは個別に紹介します。そもそもこの楽曲をカヴァーしたのは、1969年にビートルズとしてジョンが主導で書いたレノン=マッカートニー作品「COME TOGETHER」が、チャック・ベリーの「YOU CAN'T CATCH ME」の盗作だと版権を持つモーリス・レヴィに訴えられそうになり、裁判沙汰にはせずにモーリス・レヴィが版権を持つ楽曲から3曲をジョンがカヴァーする事で手を打つ運びとなったのです。それで、ジョンは1973年10月にフィル・スペクターのプロデュースで後にアルバム「ROCK'N'ROLL」となるレコーディングを開始していて、約束を果たす為にこの「YA YA」と、チャック・ベリーの「YOU CAN'T CATCH ME」と「SWEET LITTLE SIXTEEN」を含んだロックンロール・クラシックスをカヴァーしたのです。後にアルバム「ROCK'N'ROLL」には、後述の理由で1973年のセッション音源はほとんど収録されていないのですけれど、後に「BE MY BABY」や「TO KNOW HER IS TO LOVE HER」と云ったフィル・スペクター絡みの楽曲もカヴァーされていた事が分かっています。

ところが、レコーディングはジョンが酔っ払っていてグダグダで、フィル・スペクターもスタジオで銃を発砲するなど精神状態がおかしくなっていて、挙句の果てにフィル・スペクターがマスター・テープを持った侭で行方不明となってしまい、ジョンは一旦はアルバム「ROCK'N'ROLL」のレコーディングを中止して、先にオリジナル・ソロ・アルバム「WALLS AND BRIDGES」を制作して完成させてリリースする事となってしまったのです。それで、モーリス・レヴィへの皮肉も込めて、アルバムの最後に、当時11歳だった息子のジュリアン・レノンにマーチング・ドラムを叩かせて、ジョンがピアノとヴォーカルでの親子共演のお遊びヴァージョンでの「YA YA」を収録したのでした。つまり、この曲はジュリアンのデビュー曲で、唯一の親子共演曲なのです。モーリス・レヴィとしては「話が違うじゃないか」となって、ジョンはアルバム「WALLS AND BRIDGES」の後にすぐさまカヴァー・アルバム「ROCK'N'ROLL」をリリースしようとなったわけですけれど、手元に戻ってきた1973年にレコーディングしたマスター・テープはほとんどが使い物にならず、ジョンはアルバム「WALLS AND BRIDGES」のレコーディング・メンバーを再集結させて、ほとんどの楽曲をたったの5日間でレコーディングし直して完成させたのでした。ところが、モーリス・レヴィはリリースを待ちきれずに、ジョンから受け取ったテープを元にしたアルバム「ROOTS」を先に発売してしまったのです。その辺の事情は、また後ほど紹介いたします。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする