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2025年01月24日

「ポールの道」#625「LENNON SONGS」#050 「ONE DAY(AT A TIME)」

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ジョン・レノンが、1973年10月29日(米国)・同年11月16日(英国)にアップルからリリースした3作目のソロ・アルバム「MIND GAMES」は、全米9位・全英13位と云う結果に終わりました。1973年と云うと、5月にはポール・マッカートニー&ウイングスのアルバム「RED ROSE SPEEDWAY」(全米首位!・全英5位)が、6月にはジョージ・ハリスンのアルバム「LIVING IN THE MATERIAL WORLD」(全米首位!・全英3位)が、11月にはリンゴ・スターのアルバム「RINGO」(全米2位・全英6位)が、12月にはポール・マッカートニー&ウイングスのアルバム「BAND ON THE RUN」(全米首位!・全英首位!)と、他の元・ビートルズのメンバーが大ヒットしていて、ジョンの成績が最も低かったのです。何よりも1973年4月には、ビートルズ初のオールタイム・ベスト盤である「THE BEATLES 1962-1966(赤盤)」と「THE BEATLES 1967-1970(青盤)」がリリースされていて、「赤盤」は全米・全英共に3位まで上がり、「青盤」は全米首位!・全英2位を獲得していたのです。リンゴのアルバム「RINGO」にはジョン、ポール、ジョージが曲を書いてレコーディングにも参加していたので、すわっ、ビートルズ再結成か?と騒がれていて、ソロ作品も引っ張られて売れていたのに、ジョンのアルバム「MIND GAMES」は、なんとまあ、リンゴにすら負けていたのです。

ところが、1974年1月20日に「ヌートピア宣言」の邦題でリリースされた日本では、6位まで上がるヒットを記録しています。洋楽が総合チャートで6位まで上がったのですから、大ヒットです。日本で売れた要因は、アルバム「MIND GAMES」にはバラードが多くて、ジョンが後に始まる「AOR」の先駆けとなる曲やアレンジをやっていたからでしょう。おそらくポールの「LET IT BE」に対抗してジョンが書いた「MIND GAMES」も日本人好みだったし、トレードマークと云えるロックンロールを「TIGHT A$」と「BRING ON THE LUCIE(FREDA PEOPLE)」と「MEAT CITY」の3曲にとどめて、「AISUMASEN(I'M SORRY)」や「ONE DAY(AT A TIME)」や「OUT THE BLUE」や「I KNOW(I KNOW)」や「YOU ARE HERE」と云った楽曲では、徹底的にメロウな路線で攻めています。レコーディング・メンバーも腕利きのスタジオ・ミュージシャンで固めた内容は、ジョンとヨーコさんの共作でエレファンツ・メモリーを起用した前年である1972年のアルバム「SOMETIME IN NEW YORK CITY」とはかけ離れた世界です。「MIND GAMES」や「OUT THE BLUE」と云った楽曲は、ドラマティックな展開が、日本人の琴線に触れるのです。その分、ロックンローラー・ジョン・レノンを期待する方々には、肩透かしを食らった様な内容でした。但し、1970年代後半からブームとなった「AOR」路線を、1973年にやってしまったジョンの先見性は鋭いものがあります。

アルバムのA面4曲目に収録されている「ONE DAY(AT A TIME)」も、メロウな路線で、ヨーコさんの提案でジョンが全編に渡ってファルセットで歌っています。レコーディング・メンバーは、ジョンの他には、デヴィッド・スピノザ(ギター)、ゴードン・エドワーズ(ベース)、ケン・アッシャー(キーボード)、ジム・ケルトナー(ドラムス)、アーサー・ジェンキンス(パーカッション)、マイケル・ブレッカー(サックス)、サムシング・ディファレント(コーラス)からなる「The Plastic U.F.Ono Band」の面々で、この曲に顕著なように、大胆に女性コーラスを加えたり、メロウなサックスを入れたりしていて、甘口の路線となっていますし、歌詞の内容もヨーコさんに謝罪したり、振り向いて欲しいと嘆願するものばかりなのです。ジャケットは、そんな母なる大地にそびえるヨーコさんから、ジョンが旅立つようなデザインとなっていて、事実としてこのアルバムの制作中にジョンはヨーコさんに追い出されて、ヨーコさん公認の愛人・メイ・パンと共にロスへ行き18か月間の「失われた週末」へと突入するのでした。2024年のリミックス盤では、この曲の最後に入っているサックスを丸ごとカットしていて、そう云う事を幾ら息子でもショーンくんがやってしまうのは、違うんじゃないのか?とは思います。ジョンが地声で歌ったアウトテイクは、1998年の箱「JOHN LENNON ANTHOLOGY」や2024年の箱「MIND GAMES」などで聴けます。エルトン・ジョンによるカヴァー・ヴァージョンは、1974年のシングル「LUCY IN THE SKY WITH DIAMONDS」(ビートルズのカヴァーでジョンも参加)のB面などで聴けます。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする