ジョン・レノンとヨーコさんの共作で、１９７２年６月１２日（米国）・同年９月１５日（英国）にアップルからリリースしたアルバム「SOMETIME IN NEW YORK CITY」は、２枚組で、１枚目はスタジオ盤で、２枚目はライヴ盤です。スタジオ盤の内容は、A面が、１「WOMAN IS THE NIGGER OF THE WORLD（女は世界の奴隷か！）」、２「SISTERS, O SISTERS」、３「ATTICA STATE」、４「BORN IN A PRISON」、５「NEW YORK CITY」で、B面が、１「SUNDAY BLOODY SUNDAY（血まみれの日曜日）」、２「THE LUCK OF THE IRISH」、３「JOHN SINCLAR」、４「ANGELA」、５「WE’RE ALL WATER」の全１０曲で、ジョンの単独作は「NEW YORK CITY」と「JOHN SINCLAR」の２曲だけで、他に「WOMAN IS THE NIGGER OF THE WORLD」の３曲のみでしかジョンはひとりで歌っていません。他は「ATTICA STATE」と「SUNDAY BLOODY SUNDAY」と「THE LUCK OF THE IRISH」と「ANGELA」が二人の共作でデュエットしていて、残りの３曲である「SISTERS, O SISTERS」と「BORN IN A PRISON」と「WE'RE ALL WATER」はヨーコさんの単独作で、ひとりで歌っています。つまり、スタジオ盤の全１０曲中３曲しかジョンがひとりで歌っている曲が収録されていない、攻め捲り過ぎの内容です。
これが、ライヴ盤となると「LIVE JAM」と題されていて、C面が、１「COLD TURKEY」、２「DON'T WORRY KYOKO」で、D面が、１「WELL（BABY PLEASE DON'T GO）」、２「JAMRAG」、３「SCUNBAG」、４「AU」です。C面の２曲は、１９６９年１２月１５日にロンドンのライシーアム劇場で開催されたユニセフ主催のチャリティー・コンサート「ピース・フォー・クリスマス」にプラスティック・オノ・バンドとして出演した時のライヴ音源で、ジョン＆ヨーコさんの他には、ジョージ・ハリスン（ギター）、エリック・クラプトン（ギター）、デラニー＆ボニー（ギター、パーカッション）、クラウス・フォアマン（ベース）、ジム・ゴードン（ドラムス）、アラン・ホワイト（ドラムス）、キース・ムーン（ドラムス）、ビリー・プレストン（オルガン）、ボビー・キーズ（サックス）、と元々分厚い音にニッキー・ホプキンスのエレピもダビングしています。「COLD TURKEY」は既発曲で以前に取り上げたし、ヨーコさんの「DON'T WORRY KYOKO」は対象外なので、D面に関して書きます。このD面に収録された４曲は、１９７１年６月６日にニューヨークのフィルモア・イーストで、フランク・ザッパ＆ザ・マザーズ・オブ・インヴェンションのコンサートのアンコールにジョン＆ヨーコさんが飛び入りした時のライヴ音源で、ジョンとザッパは同じ音源を別々に編集してリリースしています。
最初の「WELL（BABY PLEASE DON'T GO）」は、ウォルター・ウォード作で彼がリード・ヴォーカルを務めたオリンピックスが、１９５８年にリリースしたシングル「WESTERN MOVIES」のB面曲のカヴァーで、ジョンがビートルズ時代にキャバーン・クラブでよく演奏していた曲と紹介しています。この楽曲は１９７１年のアルバム「IMAGINE」のセッションでもレコーディングされていて、スタジオ・ヴァージョンは１９９８年の「JOHN LENNON ANTHOLOGY」や、２０１８年のアルバム「IMAGINE」の箱で聴く事が出来ます。しかしながら、やはりこのライヴ・ヴァージョンの方が出来栄えが良くて、何よりジョンが間奏に入る時に「ザッパ！」と叫んで、ザッパ先生のリード・ギターが炸裂するところが最高です。２００５年のアルバム「SOMETIME IN NEW YORK CITY」のリミックス盤では、ジョンとザッパの歴史的共演をこの「WELL（BABY PLEASE DON'T GO）」だけにして、残りをバッサリとカットしてしまったダメダメ盤ですので、くれぐれも間違えて買わない様に気を付けて下さい。本編をカットしたのに、ボーナス・トラックが入っているなんて、滅多にお目にかかれません。同じ音源を、ザッパが１９９２年に２枚組ライヴ盤「PLAYGROUND PSYCHOTICS」に収録していますけれど、ミックスが大幅に異なっています。
（小島イコ）
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