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2024年12月07日

「ポールの道」#577「LENNON SONGS」#02 「YER BLUES」

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ビートルズの4人を紹介する時には、ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スター、の順となります。それは、加入した順になっていて、ビートルズの前身であるクオリーメンはジョンが結成して、そこにポールが加入して、ポールの紹介でジョージが加入して、ジョンの親友であり二人でグループ名を「THE BEATLES」と命名したスチュアート・サトクリフも加入したもののポールにいじめられたのとアートがやりたくて脱退後21歳で病死して、ドラマーのピート・ベストも加入したもののメジャー・デビュー直前に解雇されて、リンゴが加入したのです。つまり、最初からいたのはジョンだけなので、ジョンはビートルズ以外の音楽活動は経験していませんでした。ところが、いくら前衛作品であったとしても、1968年11月にジョンとヨーコさんの最初の共作アルバム「TWO VIRGINS」がリリースされた事で、事態は変化してゆきました。但し、それでもポールとジョージはソロ名義でサントラ盤に関わっていたので、ジョンの前衛作品もその範疇だと思われていたのです。ところが、1968年12月10日から12日に撮影されたローリング・ストーンズの特別番組「ROCK AND ROLL CIRCUS」に「THE DIRTY MAC」と云うバンドが出演した事で意味合いが違ってしまいます。契約の問題などで1996年までリリースされなかった幻の番組でしたが、本来ならば1969年1月1日に放送される予定でした。

この特番はローリング・ストーンズがメインで演奏して、何組かのゲストを迎えてそれぞれが演奏して、マイケル・リンゼイ=ホッグが監督した作品です。マイケル・リンゼイ=ホッグ監督は、その前にビートルズの1966年のシングル「PAPERBACK WRITER」と「RAIN」の、1968年のシングル「HEY JUDE」と「REVOLUTION」のプロモーション・フィルムを監督していて、その後に1969年に撮影して1970年に公開されたビートルズの映画「LET IT BE」を監督する事となります。マイケル・リンゼイ=ホッグ監督は、最初はポールに出演交渉をしたらしいのですが、返事が遅れて、待ちかねたのでジョンに電話をしたら、二つ返事で出演が決まりました。そして、1968年12月11日の撮影に、ジョンは当時クリームのエリック・クラプトンと、当時ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスのミッチ・ミッチェルを連れてやって来て、ジョンがヴォーカルとギターで、エリック・クラプトンがリード・ギターで、ミッチ・ミッチェルがドラムスで、ローリング・ストーンズのキース・リチャーズにベースを弾かせた「THE DIRTY MAC」として出演して、当時リリースされたばかりだったビートルズのアルバム「THE BEATLES(ホワイト・アルバム)」に収録されているジョンが主導で書いたレノン=マッカートニー作品である「YER BLUES」を演奏したのです。その後に現在では「WHOLE LOTTA YOKO」と呼ばれる曲も披露していますが、そちらは「YER BLUES」のジャム・セッションにヨーコさんが「キエー!」と叫んで、イヴリー・ギトリスによるヴァイオリンが絡む展開です。

つまり、この時にジョンは、初めてビートルズ以外のメンバーでマトモな曲を演奏したわけです。しかも、バンド名が「THE DIRTY MAC」(「FLEETWOOD MAC」と、ポールを揶揄した名前)ですから、ポールはショックを受けたでしょう。それでポールはジョンをビートルズに戻す為に「THE GET BACK SESSIONS」を、翌1969年1月2日から開始してしまい、それが頓挫した事で解散へと向かうのでした。ジョンはまだビートルズが存続していた1969年9月13日に、勝手にトロントで開催された「トロント・ロックンロール・リヴァイヴァル」に出演して、ジョンがヴォーカルとギターで、エリック・クラプトンがリード・ギターで、クラウス・フォアマンがベースで、アラン・ホワイトがドラムスの布陣で「ザ・プラスティック・オノ・バンド」として、やはり「YER BLUES」を演奏しています。その時に披露した楽曲は、追々紹介してゆきますが、そのライヴが上手くいったので、ジョンは直後の9月20日にビートルズからの脱退を告げるのです。エリック・クラプトンを最初に「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」でビートルズのレコーディングに参加させたのは親友であるジョージですけれど、ボスであるジョンが承諾しなければ無理だったし、ジョンはエリック・クラプトンを気に入っていて、ジョージが「THE GET BACK SESSIONS」の途中で脱退した時にも「ジョージが戻って来なかったなら、エリック・クラプトンにギターを弾かせよう」などと云っているのが、現在ではドキュメンタリー映画「GET BACK」で観る事が出来ます。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする