ジョン・レノンのソロ活動が何処から始まったのかと云うと、避けて通れないのがヨーコさんとの前衛3部作です。ジョンはヨーコさんとの共作として、1968年11月にアルバム「UNFINISHED MUSIC No.1:TWO VIRGINS」を、1969年5月にアルバム「UNFINISHED MUSIC No.2:LIFE WITH THE LIONS」を、そして1969年11月にアルバム「WEDDING ALBUM」をリリースしています。ジョンの全曲解説を始めるにあたって、この3作の位置付けをどうするかが難点でしたけれど、最初にまとめて紹介だけしておく事にしました。まずは最初の「TWO VIRGINS」ですけれど、コレはですね、1968年5月に妻だったシンシア・レノンが留守中に、ジョンがヨーコさんを自宅に引っ張り込んで、二人で初めて共作をした音源です。ジョンによれば、その日に初めてジョンとヨーコさんは男女の仲になったらしいのですけれども、内容は滅茶苦茶で、アヴァンギャルドと云えば聞こえは良いでしょうけれど、聴くに堪えないガラクタ音源です。ジョンがやる事は何でも肯定する音楽評論家が日本には多いので神格化されているものの、こんなガラクタ音源まで好き好んで祭り上げるのは違うでしょう。そんなに良いなら、ベスト盤に選曲されるわけですけれど、そもそも曲としては成り立っていないのですから、ベスト盤には入れる所がないのです。
アルバム「TWO VIRGINS」は、ジャケット写真がジョンとヨーコさんの全裸の2ショットで、内容よりもそちらの方が有名です。そのジャケットのせいで、EMIやキャピトルからはリリースを拒否されて、別のレコード会社から出ていますけれど、普通は拒否するでしょう。ポール・マッカートニーが気を遣って訳が分からない推薦文を寄せていますが、リンゴ・スターには「ジョンはコレでいいと思っても、他のメンバーもいるんだから、いい加減にしてくれよ」と苦言を呈されています。それでも当時のジョンの暴走は止まらず、1969年5月にアップル内での実験作用の別レーベルであるザップルからリリースしたのが、2作目の「LIFE WITH THE LIONS」です。アナログではA面全てが「CAMBRIDGE 1969」で、1969年3月にヨーコさんがケンブリッジ大学で行ったパフォーマンスで、シークレット・ゲストとしてジョンも演奏に加わっているものの、観客は「俺はヨーコさんの芸術を分かっているぜ」と云う日本の評論家みたいな連中だったので、大騒ぎにはなっていません。内容は、ヨーコさん主導ですから、一回聴くのも辛い音源です。B面は1968年11月にヨーコさんが流産する記録を入院中の病院で録音したもので、アルバムには呆れたサー・ジョージ・マーティンが「ノー・コメント」と推薦文を寄せています。
ジョンとヨーコさんは1969年3月20日に結婚して、その記念に1969年11月にアップルからリリースしたのが、アルバム「WEDDING ALBUM」です。こちらは箱入りで、色んなオマケも付いているのですけれど、内容は、A面が心臓の鼓動をバックに20分以上もお互いに名前を呼び合うだけの「JOHN & YOKO」で、B面の「AMSTERDAM 1969」はベッド・イン・イベントの記録で、何にせよ、通常の大衆音楽からはかけ離れた音源集です。ジョンとしては、結婚式での二人の記録を見せる様な感覚で、自分には世界中にファンがいるので、それをレコードにして発売したとの事なんですけれども、何かズレているんですよ。このアルバムは、ジョージ・ハリスンも買ったらしいのですけれど、普通ならサンプル盤をもらうでしょう。これらの前衛アルバムは、リリース当時も、2024年の現在でも、世界的なスーパースターだったジョンが、日本人の前衛芸術家に入れ込んで「バカになった」と揶揄されていて、概ねその評価は当たっていると思います。どれもが聴くに耐えない音源ばかりですし、ジョンはそもそもがロックンローラーなのですから、位置付けに困るレコードではあります。ジョンとヨーコさんは、ジョンが亡くなるまで「共作」に拘ったものの、所謂ひとつの「失われた週末」時代でヨーコさんと離れていた時期のアルバム「WALLS AND BRIDGES」やアルバム「ROCK'N'ROLL」が好きな者としては、対極にあるレコードだとしか云えません。
(小島イコ)
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