さて、今回の「ポールの道」からは、新企画を始めます。これまでビートルズの米国盤シングル、ポール・マッカートニーのシングル80枚組、4人の提供曲、ジョージ・ハリスンの全シングル36作、と書いてきましたが、今回からはビートルズのリーダーであるジョン・レノンを取り上げます。ジョンの場合は、シングルは死後にリリースされたものを加えても20作位しかないし、オリジナル・ソロ・アルバムは、1970年リリースの「JOHN LENNON / PLASTIC ONO BAND(ジョンの魂)」と、1971年リリースの「IMAGINE」と、1973年リリースの「MIND GAMES」と、1974年リリースの「WALLS AND BRIDGES(心の壁、愛の橋)」の4作しかなく、1975年リリースのカヴァー・アルバム「ROCK'N'ROLL」を加えてもたったの5作です。他に、ヨーコさんとの連名での前衛アルバムが3作、ヨーコさんとの連名のアルバムが遺稿集を加えても3作で、前衛作品を除けば8作しかないのです。それなのにベスト盤は、棚を見たらずらっと10作以上も並んでいます。
ジョンのソロの曲は、100曲あるかないかなので、ベスト盤は繰り返しリリースされているものの、どれも同じ様な選曲となっています。ポールは80歳を超えても尚健在で、ソロやウイングスのシングルだけでも80枚159曲もあるし、寡作だったジョージでさえシングルだけでも70曲以上もあります。それなのにジョンのソロが少ないのは、実質的にジョンがレコードを出していたのが1970年から1975年までと1980年の7年しかなかったからなのです。ジョンのベスト盤で最も優れていると思うのは、没後10年でリリースされたCD4枚組の箱「LENNON」で、全73曲入りです。ところが、内容は全シングルA面曲は勿論、アルバム「JOHN LENNON / PLASTIC ONO BAND(ジョンの魂)」からは全11曲中全曲!、アルバム「IMAGINE」からは全10曲中9曲、アルバム「MIND GAMES」からは全12曲(実質11曲)中5曲、アルバム「WALLS AND BRIDGES」からは全12曲中9曲と、アルバム「MIND GAMES」以外はほとんどの曲が選曲されています。
更に、ヨーコさんとの共作アルバムである1972年の「SOMETIME IN NEW YORK CITY」と、1980年の「DOUBLE FANTASY」と1984年の遺稿集「MILK AND HONEY」からは、ジョンがソロで歌っている全曲を収録しているのです。つまり、CD4枚組で73曲入りだと、ほとんど全曲集に近いカタチになってしまうわけですよ。この連載では、タイトル通りに何れ「ビートルズ全曲解説・改」と「ポール・マッカートニー全曲解説」へと進む予定なのですけれど、だったら、まずは「ジョン・レノン全曲解説」をやるべきだと思いました。全曲解説と云うと大変そうに思われるでしょうけれど、前述の通り、残念ながら道半ばで殺されてしまったジョンの楽曲は、驚く程に少なくて、既にポールのシングル80枚組をやったので、それ程に難しい試みではありません。最初のヨーコさんとの前衛3部作とか、死後にリリースされたライヴ音源やアウトテイク集と云った「THE LOST LENNON TAPES」などの位置付けをどうしようか、と考える程度ですので、気楽にお付き合い下さい。
(小島イコ)
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