1981年6月1日(米国)・同年6月5日(英国)・同年6月25日(日本)にリリースされたジョージ・ハリスンのアルバム「SOMEWHERE IN ENGLAND(想いは果てなく〜母なるイングランド)」からは、1980年12月8日に殺されたジョン・レノンを追悼した楽曲「ALL THOSE YEARS AGO(過ぎ去りし日々)」が先行シングルとしてリリースされて、1970年1月にレコーディングされたビートルズの楽曲「I ME MINE」以来、実際に一緒にレコーディングしたわけではないものの、11年ぶりにポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターがひとつの楽曲で共演した事もあって、ジョージのシングルとしては全米2位・全英13位と久しぶりの大ヒット曲となりました。プロモーション・ヴィデオも制作されて、ビートルズの映像が使われている事も話題になって、アルバム「SOMEWHERE IN ENGLAND」も全米11位・全米13位とヒットしたのですけれど、売れ行きは先細りで、ジョージのビートルズ解散後のアルバムでは初めてゴールドディスクを逃しています。前回でも書いた通り、アルバム「SOMEWHERE IN ENGLAND」は1980年9月には完成していて、1980年11月にリリース予定だったのに、ワーナーの要望で全10曲中4曲を差し替えて発売延期になったアルバムです。
前回の画像が当時リリースされた改定後のジャケットで、今回の画像が改訂前のジャケットです。2004年にリマスターされた時には、ジャケットだけ改訂前に戻されて、内容は改定後と云う、よく分からないリイシュー盤となっています。確かにジャケットは改定前で現行CDにもなった方が優れたデザインだとは思いますけれど、だったら中味も改訂前に戻して、差し替えた4曲をボーナス・トラックにしてくれた方が親切です。アルバムからの第2弾シングル・カットは「TEARDROPS / SAVE THE WORLD(世界を救え)」で、A面の「TEARDROPS」も「ALL THOSE YEARS AGO」同様に差し替えられた4曲の内の1曲です。「TEARDROPS」のレコーディング・メンバーは、ジョージ・ハリスン(ヴォーカル、ギター)、ハービー・フラワーズ(ベース)、レイ・クーパー(パーカッション)、デイヴ・マタックス(ドラムス)、マイク・モラン(キーボード)です。但し、チャート上の成績は前作シングル「ALL THOSE YEARS AGO」とは違っていて、全英ではチャート入りせず、全米でも102位までしか上がっていません。しかしながら、ピクチャー・スリーブが良いのでアニアの方々には人気があるシングルです。米国では後に「ALL THOSE YEARS AGO / TEARDROPS」のカップリングで再発されてもいます。B面の「SAVE THE WORLD(世界を救え)」は、アルバム「SOMEWHERE IN ENGLAND」の改訂前も改訂後も最後に収録されている楽曲です。
その「SAVE THE WORLD」のレコーディング・メンバーは、ジョージ・ハリスン(ヴォーカル、エレキ・ギター、スライド・ギター、シンセサイザー、サウンド・エフェクト、バッキング・ヴォーカル)、ニール・ラーセン(キーボード)、ゲイリー・ブルッカー(シンセサイザー)、トム・スコット(サックス)、ウィリー・ウィークス(ベース)、ジム・ケルトナー(ドラムス)、レイ・クーパー(パーカッション)と云った面々で、こちらのメンバーがアルバム「SOMEWHERE IN ENGLAND」の元々のレコーディング・メンバーなのでしょう。ジョージは「SAVE THE WORLD」には、爆弾の投下音、レジ、軍隊の行進、銃撃、街頭デモ、赤ん坊の泣き声、などの効果音(サウンド・エフェクト)を使っていて、モンティ・パイソンやビートルズの影響下にある楽曲にしています。モンティ・パイソンとジョージの関係は深いし、ビートルズに至ってはジョージ本人が在籍していたバンドです。ジョージが度々ビートルズのセルフ・パロディをやるのは、客観的にビートルズを見ているからでしょう。この「SAVE THE WORLD」は、1985年6月4日にコンピレーション盤「グリーンピース」に、歌詞を一部変えて、ヴォーカルをレコーディングし直し、バッキング・トラックをリミックスした「リメイク・ヴァージョン」で収録されてもいます。
(小島イコ)