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2024年11月12日

「ポールの道」#372「GEORGE'S SINGLES」#16「ALL THOSE YEARS AGO / WRITING'S ON THE WALL」

想いは果てなく~母なるイングランド(紙ジャケット仕様)


1970年代後半からジョージ・ハリスンの不遇時代が始まって、特に1979年リリースのアルバム「GEORGE HARRISON(慈愛の輝き)」は、大傑作だったのにも関わらず商業的には成功していません。それでもジョージは、1980年9月には次作アルバムを完成させて、1980年11月2日に、ビートルズ解散後では7作目でワーナーからは3作目のソロ・アルバム「SOMEWHERE IN ENGLAND(想いは果てなく〜母なるイングランド)」をダーク・ホース/ワーナーからリリースする予定でした。当時のジョンとヨーコさんのアルバム「DOUBLE FANTASY」の帯に広告が掲載されているので、完成して発売直前までいっていたのですが、バカなワーナーは前作アルバム「GEORGE HARRISON(慈愛の輝き)」のセールス(全米14位・全英39位)に納得していなかったので、なんと、ジョージに全10曲中4曲を売れ線を狙ったアップテンポな曲に差し替える様に命じたのです。ジャケットのアートワークまで変更されて、ジョージは新たな4曲をレコーディングしている時に、1980年12月8日がやって来ました。そこでジョージは、元々はリンゴ・スターに提供する予定だった楽曲の詞を書き直して、ジョンへの追悼曲としてレコーディングしました。

そして、アルバム「SOMEWHERE IN ENGLAND」からの第1弾シングルとして「ALL THOSE YEARS AGO(過ぎ去りし日々) / WRITING'S ON THE WALL(神のらくがき)」を、1981年5月11日(米国)・同年5月15日(英国)・同年6月15日(日本)に、ダーク・ホース/ワーナーからリリースしました。「ALL THOSE YEARS AGO(過ぎ去りし日々)」のレコーディング・メンバーは、ジョージ・ハリスン(ヴォーカル、エレクトリック・ギター、バッキング・ボーカル、シンセサイザー)、リンゴ・スター(ドラムス)、ハービー・フラワーズ(ベース)、ポール・マッカートニー(バッキング・ヴォーカル)、リンダ・マッカートニー(バッキング・ヴォーカル)、デニー・レイン(バッキング・ヴォーカル)、アル・クーパー(エレクトリック・ピアノ)、レイ・クーパー(パーカッション、タンバリン)です。ジョージのギター、リンゴのドラムス、ハービー・フラワーズのベース、アル・クーパーのエレクトリック・ピアノ、レイ・クーパーのパーカッションでレコーディングして、リンゴが歌ったのですけれど、リンゴがキーが高いとか詞が気に入らないとごねて、結局はジョンへの追悼曲となり、ポール、リンダ、デニー・レインがバッキング・ヴォーカルをダビングしているので、実際に元ビートルズの3人が揃ってレコーディングしたわけではありません。アルバムからのシングル・カットでB面の「WRITING'S ON THE WALL(神のらくがき)」には、ポールもリンゴも参加していません。

それでも、ジョージとポールの共演は1970年1月の「I ME MINE」(アルバム「LET IT BE」収録)以来11年ぶりだったので、大いに注目されて、全米2位・全英13位と大ヒットしました。収録されたアルバム「SOMEWHERE IN ENGLAND」は、前述の経緯で全10曲中4曲が差し替えられて、1981年6月1日(米国)・同年6月5日(英国)・同年6月25日(日本)にリリースされています。差し替える前の内容は、A面が、1「HONG KONG BLUES」、2「WRITING'S ON THE WALL(神のらくがき)」、3「FLYING HOUR」、4「LAY HIS HEAD」、5「UNCONSCIOUSNESS RULES(空白地帯)」で、B面が、1「SAD SINGING」、2「LIFE IT SELF」、3「TEARS OF THE WORLD」、4「BALTIMORE ORIOLE」、5「SAVE THE WORLD(世界を救え)」の、全10曲入りでした。差し替えた4曲は「FLYING HOUR」と「LAY HIS HEAD」と「SAD SINGING」と「TEARS OF THE WORLD」で、「UNCONSCIOUSNESS RULES」も30秒短縮して、改訂盤となったのが、A面が、1「BLOOD FROM A CLONE」、2「UNCONSCIOUSNESS RULES(空白地帯)」、3「LIFE IT SELF」、4「ALL THOSE YEARS AGO(過ぎ去りし日々)」、5「BALTIMORE ORIOLE」で、B面が、1「TEARDROPS」、2「THAT WHICH I HAVE LOST」、3「WRITING'S ON THE WALL(神のらくがき)」、4「HONG KONG BLUES」、5「SAVE THE WORLD(世界を救え)」の全10曲入りです。

4曲を差し替えただけではなく、曲順も変わっていて、ジャケットのアートワークも含めて、改訂前の方が圧倒的に良い出来栄えです。差し替えた4曲は、「BLOOD FROM A CLONE」と「ALL THOSE YEARS AGO(過ぎ去りし日々)」と「TEARDROPS」と「THAT WHICH I HAVE LOST」で、「ALL THOSE YEARS AGO(過ぎ去りし日々)」と「TEARDROPS」はシングルにもなっているので、ワーナー主導での差し替えだったと分かります。アルバムは、全米11位・全英13位と久しぶりのヒットとなったので、ワーナーとしては思惑通りだったわけですけれど、その後は伸びずに、ジョージにとってはビートルズ解散後に初めてゴールドディスクを逃したアルバムとなってしまいました。差し替え前の4曲は、全て後に発表しているのですけれど、「LAY HIS HEAD」は1987年リリースのシングル「GOT MY MIND SET ON YOU」のB面になり、更に「FLYING HOUR」と「SAD SINGING」を合わせた3曲は1987年の豪華本に、「TEARS OF THE WORLD」は1992年の豪華本に、それぞれオマケのEPもしくはCDに収録されて、日の目を見ています。更に「TEARS OF THE WORLD」は、何故か1976年の「THIRTY THREE & 1/3」の2004年のリマスター盤でボーナス・トラックにもなっています。アルバム「SOMEWHERE IN ENGLAND」は、2004年のリマスター盤では「UNCONSCIOUSNESS RULES(空白地帯)」が元の長さに戻されて、「SAVE THE WORLD(世界を救え)」のデモ音源を加えて、ジャケットも元のデザインに戻されています。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする