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2024年11月10日

「ポールの道」#370「GEORGE'S SINGLES」#14「LOVE COMES TO EVERYONE / SOFT-HEARTED HANA」「LOVE COMES TO EVERYONE / SOFT TOUCH」

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1979年2月にリリースされたジョージ・ハリスンのアルバム「GEORGE HARRISON(慈愛の輝き)」からは、1979年4月27日に第2弾シングルとして「LOVE COMES TO EVERYONE(愛はすべての人に)」がダーク・ホースからリリースされました。これまた、B面が各国盤で違っていて、英国や日本では「SOFT-HEARTED HANA」が、米国では「SOFT TOUCH」がカップリングされています。アルバムではA面1曲目だった「LOVE COMES TO EVERYONE」は、ジョージらしさが炸裂した名曲ですが、全英・全米共にチャート入りしていません。このシングル・ヴァージョンはアルバム・ヴァージョンとは違っていて、シングル盤か、1989年リリースのベスト盤「BEST OF DARK HORSE 1976-1989」でしか聴けません。ジョージ自身が選曲したベスト盤「BEST OF DARK HORSE 1976-1989」は、そうした意味でも聴きごたえがある「名ベスト盤」ですけれども、廃盤になっているのが残念ですし、1976年にEMIが勝手に選曲した「THE BEST OF GEORGE HARRISON」や、何だかよく分からない選曲のオールタイム・ベスト盤と呼ぶには抵抗があり捲りの2009年の「LET IT ROLL」が売られているのに、最も納得がゆく「BEST OF DARK HORSE 1976-1989」が廃盤になっているのは、全くもって困ったちゃんなのです。

アルバムではA面1曲目で、シングル・カットしてわざわざシングル・ヴァージョンも制作した「LOVE COMES TO EVERYONE」は、文句なしの名曲で、イントロのリード・ギターはエリック・クラプトンが弾いていて、間奏のモーグ・シンセサイザーはスティーヴ・ウィンウッドがブイブイ云わせているわけで、つまりは「ブラインド・フェイス」です。そう云う大それた事を、サラリとやってしまうのが、ジョージ・ハリスンなのです。クラプトンは、ジョージの死後の2005年にアルバム「BACK HOME」で、「LOVE COMES TO EVERYONE」を原曲に忠実なカヴァー・ヴァージョンで収録して、ジョージを追悼しています。アルバム「GEORGE HARRISON(慈愛の輝き)」は、A面1曲目にこの「LOVE COMES TO EVERYONE」から始まる事だけで、もう名盤だと確信できる傑作中の傑作です。つづいて「NOT GUILTY」から「HERE COMES THE MOON」と繋がるところでは、開き直ってビートルズを解放しているわけですけれど、その2曲をシングル・カットしなかったのも、粋です。全10曲中、シングル・カットしていないのは、その2曲と「DARK SWEET LADY」の3曲のみで、7曲もシングルになっているのは、まるで1964年リリースのビートルズのアルバム「BEATLES FOR SALE」の日本盤シングル(全14曲中10曲をシングル化)みたいです。1991年12月の来日公演では、初日の横浜アリーナでは「LOVE COMES TO EVERYONE」も披露してくれたので、最終日の東京ドームのチケットは早々と取っていたけれど、追加公演の初日にも行って得をしました。

カップリング曲に関しては、英国盤と米国盤では、シングル「BLOW AWAY」とシングル「LOVE COMES TO EVERYONE」のそれぞれのB面曲である「SOFT TOUCH」と「SOFT-HEARTED HANA」を入れ替えているだけなのですけれど、日本盤シングル「BLOW AWAY」のB面は日本独自に「IF YOU BELIEVE」を収録していて、シングル「LOVE COMES TO EVERYONE」は英国盤と同じ「SOFT-HEARTED HANA」なので、つまりは日本盤では「SOFT TOUCH」がシングル化されていません。故に、シングル・カットのA面曲は3曲なのに、B面曲は4曲になっています。碌にプロモーションもしていなかったので名曲「LOVE COMES TO EVERYONE」は英米共にチャート入りしていないので、米国や日本では第3弾シングルは見送られたのですけれど、この曲もプロモーション・ヴィデオをしっかりと制作しています。ジョージは当時は「パンクはクズだ」と云ったり、後には「WAKE UP MY LOVE」みたいなシンセ・ポップもやったくせに「コンピューター・ミュージックは嫌いだから、僕は木製の音楽を演奏している」とか云ったりするのですけれど、ハンブルグ時代のビートルズはパンクだったし、ビートルズにシンセサイザーを導入したのもジョージだったのです。ジョージは、いつもやる事が先取りしすぎているので、リリース当時には酷評されたものの後に評価される作品が多くて、サントラ盤「不思議の壁」は兎も角として、ぶっ飛び過ぎた「電子音楽の世界」以外は、買って損はしません。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする