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2024年10月31日

「ポールの道」#360「GEORGE'S SINGLES」#04「BANGLA-DESH / DEEP BLUE」

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1970年11月にリリースしたアナログ3枚組の大作アルバム「ALL THINGS MUST PASS」が売れに売れていた1971年に、ジョージ・ハリスンはシングル「BANGLA-DESH / DEEP BLUE」を1971年7月23日にアップルから緊急リリースしました。A面の「BANGLA-DESH」は、ジョージのシタールの師であるラヴィ・シャンカール先生から、1970年11月にベンガル地方を襲ったボーラ・サイクロンと、1971年3月に起こったバングラデシュ独立戦争によって、大勢の東パキスタン難民が出ている惨状を訴えられて、それを救う為に書かれたチャリティー・ソングです。同1971年8月27日には、ラヴィ・シャンカール先生もチャリティー・シングル「JOI BANGLA」をジョージのプロデュースでアップルからリリースしています。それで、ジョージが凄かったのは、チャリティー・シングルをリリースしただけではなく、ロック史上では初となる大規模なチャリティー・コンサートを1971年8月1日に昼夜2公演をマディソン・スクウェア・ガーデンで行った事なのです。シングル「BANGLA-DESH」は、全英10位・全米23位とそこそこのヒット曲とはなりましたが、この楽曲に関しては「THE CONCERT FOR BANGLA DESH」とセットで考えなくてはならないでしょう。

「バングラデシュ・コンサート」にジョージ(ギター、ヴォーカル)の呼びかけで集まったミュージシャンは、エリック・クラプトン(ギター)、リンゴ・スター(ドラムス、タンバリン、ヴォーカル)、クラウス・フォアマン(ベース)、ビリー・プレストン(キーボード、ヴォーカル)、レオン・ラッセル(ベース、キーボード、ヴォーカル)、ラヴィ・シャンカール(シタール)、アリ・アクバル・カーン(サロード)、アラ・ラカ・カーン(タブラ)、ドン・プレストン(ギター、ヴォーカル)、ジェシ・エド・デイヴィス(ギター)、バッドフィンガーのジョーイ・モーランド、トム・エヴァンス、ピート・ハム(ギター)とマイク・ギビンズ(パーカッション)、カール・レイドル(ベース)、ジム・ケルトナー(ドラムス)、ジム・ホーン、アラン・ボイトラー、チャック・ファインドリー、ジャッキー・ケルソ、ルー・マクレアリー、オリー・ミッチェル(ホーン)、ドン・ニックス、ジョー・グリーン、ドロレス・ホール、クラウディア・リニアー、ジェーニー・グリーン、マーリン・グリーン(コーラス)、そして、ボブ・ディラン(ギター、ハーモニカ、ヴォーカル)です。エリック・クラプトンはこの時期に麻薬中毒でギターもヘロヘロなのですが、ジョージが友情でリハビリを兼ねて引っ張り出したし、ジョージの要請でボブ・ディランも、1969年のワイト島でのライヴ以来2年ぶりに観客の前で演奏しています。何より、ジョージとリンゴは、1966年のビートルズ時代以来、5年ぶりの大規模なライヴでした。

1971年12月にジョージとフィル・スペクターの共同プロデュースでリリースされたアナログ3枚組のライヴ盤の内容は、A面が、1「INTRODUCTION」(ジョージ・ハリスン&ラヴィ・シャンカール)、2「BANGLA DHUN」(ラヴィ・シャンカール)で、B面が、1「WAH-WAH」、2「MY SWEET LORD」、3「AWAITING ON YOU ALL」(ジョージ・ハリスン)、4「THAT'S THE WAY GOD PLANNED IT」(ビリー・プレストン)で、C面が、1「IT DON'T COME EASY」(リンゴ・スター)、2「BEWARE OF DARKNESS」、3「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」(ジョージ・ハリスン)で、D面が、1「MEDLEY:JUMPIN' JACK FLASH」(レオン・ラッセル)〜「YONGBLOOD」(ビリー・プレストン)、2「HERE COMES THE SUN」(ジョージ・ハリスン)で、E面が、1「A HARD RAIN ’S GONNA FALL」、2「IT TAKES A LOT TO LAUGH, IT TAKES A TRAIN TO CRY」、3「BLOWIN' IN THE WIND」、4「MR. TAMBOURINE MAN」、5「JUST LIKE WOMAN」(ボブ・ディラン)で、F面が、1「SOMETHING」、2「BANGLA DESH」(ジョージ・ハリスン)です。2005年のリイシュー盤2枚組CDでは、昼の部でのみ披露されたボブ・ディランの「LOVE MINUS ZERO / NO LIMIT」がボーナス・トラックとして収録されています。このアルバムは、1973年(1972年度)の第15回グラミー賞で、年間最優秀アルバム賞を受賞しています。

2009年にリリースされたジョージのオールタイム・ベスト盤「LET IT ROLL」には、このライヴ盤から「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」と「HERE COMES THE SUN」と「SOMETHING」と3曲のビートルズ・ナンバーが収録されていて、確かに名曲ばかりですけれど、今更ビートルズ時代の曲を入れなくともいいのになあ、と思いました。ライヴ盤だけではなく、映画化もされていて、ジョージのライヴ映像は貴重だし、ジョージやリンゴとボブ・ディランがガッツリと共演している姿も拝めるし、バックには徹しているもののバッドフィンガーのメンバーも登場しているので、必見です。実際には、収益金が届くまでに時間が掛かっていたりするものの、この頃のジョージは何をやっても評価が上昇しっぱなしでした。シングルのB面に収録された「DEEP BLUE」はアルバム未収録曲で、A面の「BANGLA-DESH」もスタジオ・ヴァージョンはオリジナル・アルバム未収録曲でした。「BANGLA-DESH」のスタジオ・ヴァージョンは、1976年リリースのベスト盤「THE BEST OF GEORGE HARRISON」で初めてアルバムに収録されていて、B面の「DEEP BLUE」は2006年にリイシューされたアルバム「LIVING IN THE MATERIAL WORLD」にボーナス・トラックとして収録されて、2014年にリイシューされたアルバム「LIVING IN THE MATERIAL WORLD」には両方共ボーナス・トラックとして収録されています。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする