ジョージ・ハリスンの本格的なソロ・アルバムでは第1作目と云えるアナログLPでは3枚組で箱入りの大作「ALL THINGS MUST PASS」からは、第1弾シングルとして「MY SWEET LORD」がリリースされて、全英首位!全米首位!と大ヒットしました。アルバムも、3枚組なのに全英首位!全米首位!を獲得して、ジョージは一躍、ビートルズが解散して最も得をした男となったのです。米国では1970年11月23日にリリースされた第1弾シングル「MY SWEET LORD」のB面は、米国や日本では「ISN'T IT A PITY」で、7分を超える長尺な楽曲を持って来たのがジョージらしかったのですが、英国では1971年1月15日にリリースされていて、B面は「WHAT IS LIFE」でした。この英国ではB面となった「WHAT IS LIFE」は、既に米国などでは第2弾シングルのA面と決定していた曲で、英国では実質的には両A面と云えるカップリングでした。それで、1971年2月15日に米国で第2弾シングルとしてアップルからリリースされたのが「WHAT IS LIFE / APPLE SCRUFFS」です。日本でも同じカップリングで1971年4月5日にリリースされていて、A面の「WHAT IS LIFE」には「美しき人生」と云う邦題が付けられています。1970年11月27日にリリースされた3枚組のアルバム「ALL THINGS MUST PASS」が売れていて、両面共にアルバムからのシングル・カットでしたが、このシングル「WHAT IS LIFE」も全米では10位まで上がるヒット曲となっています。
アルバム「ALL THINGS MUST PASS」では、B面1曲目に収録されていた「WHAT IS LIFE」のレコーディング・メンバーは、ジョージ・ハリスン(ヴォーカル、リード・ギター、アコースティック・ギター、スライド・ギター、バッキング・ヴォーカル)、エリック・クラプトン(リズム・ギター)、ボビー・ウィットロック(オルガン)、カール・レイドル(ベース)、ジム・ゴードン(ドラムス)、ジム・プライス(トランペット、管楽器編曲)、ボビー・キーズ(サクソフォーン)、バッドフィンガー(ピート・ハム、トム・エヴァンズ、ジョーイ・モーランド、マイク・ギビンズ)(アコースティック・ギター)、ジョン・バラム(ストリングス編曲)で、プロデュースはジョージとフィル・スペクターです。つまり、デレク&ザ・ドミノスにベーシック・トラックを任せて、ソレに加えてバッドフィンガーの4人にアコースティック・ギターを弾かせていて、オーケストラやサックスも加えた音源に、ジョージがヴォーカルやギターをオーバーダビングしていて、正に1970年版「ウォール・オブ・サウンド」となっています。ジョージは当初、ピッコロトランペットとオーボエも加えたのですが、ミックスの段階で外しています。また、エリック・クラプトンがリード・ギターを弾いているテイクもありますが、うるさすぎるからか採用されていません。この「WHAT IS LIFE」も、1972年にオリビア・ニュートン=ジョンがカヴァーしていて、全英16位まで上がるヒット曲となっています。
シングルB面の「APPLE SCRUFFS」もアルバム「ALL THINGS MUST PASS」からの曲で、スキッフル風の軽妙なスタイルですが、ビートルズの「追っかけ」を歌った曲です。ビートルズはファンを大切にしているバンドだったので、ジョージも「追っかけ」を嫌がらないどころか、こうして好意的な曲を書いてアルバムに収録して、B面とは云えシングルにもしてしまったのですから、ファンは感涙ものだったでしょう。3枚組の大作アルバム「ALL THINGS MUST PASS」からのシングル・カットは、A面とB面を合わせても、英国では1枚2曲で、米国や日本でも2枚4曲と少ないのですけれど、そこはもうアルバムで聴いてくれ、と云ったところなのでしょう。3枚組にしたのも、それだけ自信があったからであって、3枚目のジャム・セッションはストレス発散のオマケだったとしても、2枚で全18曲は全てシングル・カットしてもいけそうな名曲揃いなので、一気にリリースしたインパクトは大きかったと思います。ところで、リリース順でゆくと、1970年5月にビートルズのアルバム「LET IT BE」が、1970年11月にアルバム「ALL THINGS MUST PASS」が、1971年12月にライヴ・アルバム「THE CONCERT FOR BANGLA DESH」となっていて、つまりジョージは3作つづけて箱入りのアルバムをリリースしたのです。故にレコスケくんの部屋には、黒い箱とオレンジの箱が沢山あるわけですなあ。それから、このシングルのジャケットに映っているお城みたいな建物は、ジョージの自宅です。
(小島イコ)