アップル・レコードからのリリースも、元ビートルズ以外ではバッドフィンガーの「ASS」で終わってしまったので、再びコンピレーション盤の「COME AND GET IT BEST OF APPLE RECORDS」を振り返ります。2010年10月25日にリリースされたアルバムの内容は、1「THOSE WERE THE DAY」メリー・ホプキン(1968)、2「CAROLINA IN MY MIND」ジェームス・テイラー(1968)、3「MAYBE TOMORROW」アイヴィーズ(1968)、4「THINGUMYBOB」ブラック・ダイク・ミルス・バンド(1968)、5「KING OF FUH」ブルート・フォース(1969)、6「SOUR MILK SEA」ジャッキー・ロマックス(1968)、7「GOODBYE」メリー・ホプキン(1969)、8「THAT'S THE WAY GOD PLANNED IT」ビリー・プレストン(1969)、9「NEW DAY」ジャッキー・ロマックス(1969)、10「GOLDEN SLUMBERS - CARRY THAT WEIGHT」トラッシュ(1969)、11「GIVE PEACE A CHANCE」ホット・チョコレート・バンド(1969)、12「COME AND GET IT」バッドフィンガー(1969)、13「AIN'T THAT CUTE」ドリス・トロイ(1970)、14「MY SWEET LORD」ビリー・プレストン(1970)、15「TRY SOME, BUY SOME」ロニー・スペクター(1971)、16「GOVINDA」ラダ・クリシュナ・テンプル(1970)、17「WE'RE ON OUR WAY」クリス・ホッジ(1972)、18「SATURDAY NITE SPECIAL」サンダウン・プレイボーイズ(1972)、19「GOD SAVE US」ビル・エリオット&エラスティック・オズ・バンド(1971)、20「SWEET MUSIC」ロン&デレク(1972)、21「DAY AFTER DAY」バッドフィンガー(1972)の、全21曲入りです。
メリー・ホプキンの1「THOSE WERE THE DAY(悲しき天使)」はポール・マッカートニーのプロデュースで、ジェームス・テイラーの2「CAROLINA IN MY MIND」はピーター・アッシャーのプロデュースで、アイヴィーズの3「MAYBE TOMORROW」はバッドフィンガーの前身バンドでトニー・ヴィスコンティのプロデュースで、ブラック・ダイク・ミルス・バンドの4「THINGUMYBOB」はポール作プロデュースです。ブルート・フォースの5「KING OF FUH」は、シングルがお蔵入りした楽曲で、このコンピレーション盤が初出です。ジャッキー・ロマックスの6「SOUR MILK SEA」はジョージ・ハリスン作プロデュースで、メリー・ホプキンの7「GOODBYE」はポール作プロデュースで、ビリー・プレストンの8「THAT'S THE WAY GOD PLANNED IT」はジョージのプロデュースで、ジャッキー・ロマックスの9「NEW DAY」はジャッキー・ロマックスとマル・エヴァンスの共同プロデュースです。マル・エヴァンスはチョコチョコ出て来るものの、実際にどれだけ貢献したのかは不明です。トラッシュの10「GOLDEN SLUMBERS - CARRY THAT WEIGHT」はビートルズのアルバム「ABBEY ROAD」B面メドレーからの公認カヴァーで、ホット・チョコレート・バンドの11「GIVE PEACE A CHANCE」はプラスティック・オノ・バンドの歌詞を変えてレゲエにしたジョン公認のカヴァーです。バッドフィンガーの改名後初のシングル12「COME AND GET IT」はポール作プロデュースです。
ドリス・トロイの13「AIN'T THAT CUTE」はジョージとドリスの共作でジョージのプロデュースで、ビリー・プレストンの14「MY SWEET LORD」はジョージ作でジョージとビリーの共同プロデュースで、こちらがオリジナルでジョージのヴァージョンはセルフ・カヴァーです。ロニー・スペクターの15「TRY SOME, BUY SOME」はジョージ作で、ジョージとフィル・スペクターの共同プロデュースで、後にジョージが同じバッキング・トラックを使ってセルフ・カヴァーしています。ラダ・クリシュナ・テンプルの16「GOVINDA」はジョージのプロデュースで、クリス・ホッジの17「WE'RE ON OUR WAY」はデモをリンゴが聴いてリリースされたシングルで、全米44位とそこそこヒットしています。サンダウン・プレイボーイズの18「SATURDAY NITE SPECIAL」も、シングルのみのバンドです。ビル・エリオット&エラスティック・オズ・バンドの19「GOD SAVE US」はジョンとヨーコさんの共作でジョンとヨーコさんとフィル・スペクターとマル・エヴァンスの共同プロデュースと云う事になっています。ロン&デレクの20「SWEET MUSIC」はジョンが気に入ってジョージがプロデュースしていて、シングルの後にアルバム「BROTHER」も1972年にアップルからリリースしています。そして、最後はバッドフィンガーの21「DAY AFTER DAY」で、ジョージがプロデュースした大ヒット曲です。
ビートルズが作ったレコード会社であるアップル・レコードからのリリースなので、自ずとビートルズの関与が多い楽曲が揃っていて、バッドフィンガーやメリー・ホプキンやジャッキー・ロマックスやビリー・プレストンやドリス・トロイと云ったアルバムを制作出来たミュージシャンも居る中で、シングルのみしかリリースされなかったミュージシャンも居て、このコンピレーション盤はそうした日の当たらないミュージシャンの楽曲も多く選んでいるのがポイントが高いのです。2010年のアップルのリイシュー盤は17枚組の箱も出ていますが、その箱にもこのコンピレーション盤はそのままオリジナル・アルバムと共に収録されています。メリー・ホプキンの「THOSE WERE THE DAY」や「GOODBYE」や、バッドフィンガーの「COME AND GET IT」や「DAY AFTER DAY」や、ビリー・プレストンの「THAT'S THE WAY GOD PLANNED IT」と云った大ヒット曲だけではなく、スマッシュ・ヒットした曲や、チャート入りさえしなかったマイナーな楽曲まで丁寧に拾った名コンピレーション盤だと思います。バッドフィンガー、メリー・ホプキン、ビリー・プレストン、ドリス・トロイと云った面々のアルバムは、ビートルズを好きになって通る道では必須でしょうけれど、まずはこのコンピレーション盤でお試ししてみて、お気に入りのミュージシャンを見つけるのもいいでしょう。いきなりアップルの17枚組の箱へ行っちゃうと、困惑するかもしれません。
(小島イコ)