アップル・レコードからのリリースも残り僅かとなってきましたので、ここで「アップル・レコード」の前身であった「アップル・パブリッシング」について書きます。レコード会社を作る前の1967年に、楽曲の出版契約をする会社を作ったわけですが、中には「ギャラガー&ライル」と云った優秀なソングライターとも契約していたし、後にバッドフィンガーとなるアイヴィーズとも契約していました。それでも、アイヴィーズの様にアップル・レコードからデビュー出来たバンドは稀有な存在です。その辺は、2003年10月リリースの「94 BAKER STREET THE POP-PSYCH SOUNDS OF THE APPLE ERA 1967-1969」や、その続編で2006年4月リリースの「AN APPLE A DAY : MORE POP-PSYCH SOUNDS FROM THE APPLE ERA 1967-1969」や、更に続々編で2008年10月リリースの「TREACLE TOFFEE WORLD : FURTHER ADVENTURES INTO THE POP PSYCH SOUNDS FROM THE APPLE ERA 1967-1969」の3作でまとめて聴く事が出来ます。
最初に出た「94 BAKER STREET THE POP-PSYCH SOUNDS OF THE APPLE ERA 1967-1969」には、フォーカル・ポストが5曲、グレープフルーツが4曲、ウェイズ・アンド・ミーンズが1曲、アイヴィーズが5曲、ペイントボックスが1曲、ジョン・フェルチ・アンド・アソシエイツが2曲で、全18曲入りなんですけれど、CDの裏や英文ライナーノーツにはミスアンダーストゥッドの3曲も加えた全21曲入りと書いてあります。小さな紙に「ミスアンダーストゥッドの3曲は契約上の問題により実際には収録されておりません」とお詫びが書いてあるんですけれど、何だかなあ、と云う感じです。まあ、コレがアイヴィーズやグレープフルーツの曲が未収録だったならば、ソレは一寸困ったちゃんで、金返せになっていたかもしれません。アイヴィーズのデモ音源は目玉で、1作目には5曲、2作目には4曲、3作目には2曲が収録されています。段々とアイヴィーズの曲が減ってゆくにつれて、よりアニアックとなっております。内容はタイトル通りに「サイケ・ポップス」なので、シド・バレットがいた頃のピンク・フロイドが好きな方にはオススメです。
さて、アイヴィーズからバッドフィンガーに関しては個別に書いておりますが、このコンピレーション盤を取り上げたのは「グレープフルーツ」に関して書く為です。「グレープフルーツ」の名付け親はジョン・レノンで、勿論、元ネタはヨーコさんの詩集「グレープフルーツ」です。グレープフルーツはソングライターであるジョージ・アレキサンダー(本名・アレックス・ヤング、「FRIDAY ON MY MIND」のイージービーツのジョージ・ヤングの実兄、つまり「AC/DC」のマルコム&アンガス・ヤング兄弟のお兄さん)を売り出す為に結成されたバンドです。バンドは短命で、1968年にアルバム「AROUND GRAPEFRUIT」を、1969年にアルバム「DEEP WATER」をリリースしただけですが、2016年にアップル時代の曲を集めた「YESTERDAY'S SUNSHINE」をリリースしています。コンピレーション盤には、アルバム「AROUND GRAPEFRUIT」に収録された「LULLABY」の別ヴァージョン(ポール・マッカートニーがプロデュース)が収録されていて、この曲はビートルズの幻のアルバム「HOT AS SUN」のブートレグに「LULLABY FOR A LAZY DAY」のタイトルで、ビートルズの曲と偽って収録されています。
(小島イコ)
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