1973年11月2日(米国)、同年11月23日(英国)に、リンゴ・スターのアルバム「RINGO」がアップルからリリースされて、世間は「ビートルズ再結成か?」と大騒ぎとなりました。1973年4月には、ビートルズの初のオールタイム・ベスト盤である「THE BEATLES 1962-1966(通称「赤盤」)」と「THE BEATLES 1967-1970(通称「青盤」)」がリリースされていて、5月にはポール・マッカートニー&ウイングスのアルバム「RED ROSE SPEEDWAY」がリリースされて、シングル「MY LOVE」が全米首位!となり、6月にはジョージ・ハリスンのアルバム「LIVING IN THE MATERIAL WORLD」がリリースされて、シングル「GIVE ME LOVE(GIVE ME PEACE ON EARTH)」が全米首位!となり、10月にジョン・レノンのアルバム「MIND GAMES」がリリースされて、ビートルズ風な作風を再び聴かせてくれました。そして、11月にリンゴ・スターのアルバム「RINGO」がリリースされて、なんと、1枚のレコードでジョンとポールとジョージとリンゴが再集結したのです。これは、元ビートルズの他の3人には出来ない事でした。
そんな話題のアルバムの1曲目に収録されたのが、ジョンが書いた「I'M THE GREATEST」です。レコーディング・メンバーは、リンゴ・スター(ヴォーカル、ドラムス、パーカッション)、ジョン・レノン(ピアノ、バッキング・ヴォーカル)、ジョージ・ハリスン(エレクトリックギター、スライドギター)、ビリー・プレストン(オルガン、エレクトリックピアノ)、クラウス・フォアマン(ベース)です。つまり、ポール・マッカートニーがクラウス・フォアマンに代わっただけで、ビートルズの4人中3人が再集結していて、ビートルズの「THE GET BACK SESSIONS」や、アルバム「GET BACK with Don't Let Me Down and 12 other songs」や、アルバム「ABBEY ROAD」や、アルバム「LET IT BE」にも参加しているビリー・プレストンと、旧知の仲でジョンやジョージのソロ・アルバムにもベースで参加しているクラウス・フォアマンと云う、正に「ポールだけハブにしたビートルズ」が爆誕してしまったのです。アルバムのジャケットも「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」を意識していて、観衆にはジョン、ポール、ジョージの他に、リンダやヨーコさんもいます。
リンゴが近年のライヴで演奏する時には「ジョン・レノンが書いた曲だ、俺の事を分かっている男だ」と云って笑いを誘っているのですけれど、リンゴが歌うからシャレで済むけれど、ジョンが歌ったらまた「狂っている」とか云われそうな内容です。ジョンが歌ったガイドヴォーカル音源も残されていて、今年(2024年)にリリースされたアルバム「MIND GAMES」の箱にもシークレットトラックとして収録されているのですが、これがまた面倒な手順でないと聴けない様になっていて、困ったちゃんなのです。アレンジは、もう完全にビートルズで、かつての「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」でのビリー・シアーズが復活していて、それが収録されたアルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」の如き歓声も入ったセルフ・パロディを、ラトルズよりも早くやってしまっています。もうこの1曲目の段階で、正に掴みはOKとなっていて、ジョンは1973年から1975年にかけて集中して提供曲を書いていて、コレがその口火を切った曲と云えます。CDでは、アルバム「RINGO」は勿論、ベスト盤にも収録されています。
(小島イコ)