アップル・レコードでのビートルズの提供曲やプロデュース作を取り上げていますが、ここで時間を前後させて、1979年に「REVOLVER」と云う覆面バンドがリリースしたアルバム「NORTHERN SONGS(愛なき世界〜ノーザン・ソングス)」を紹介します。このアルバムは1981年1月に日本盤LPが出て(偶然にもジョンの死の直後だったので便乗盤と云われた)、1993年にジャケットを変えてCD化されていて、ビートルズのリマスター盤が出た2009年に便乗してジャケットを戻して(画像は1981年盤と2009年盤で、映っているのはレコード会社関係の日本人)再CD化されています。内容は、1「ONE AND ONE IS TWO」、2「BAD TO ME」、3「WORLD WITHOUT LOVE」、4「LOVE OF THE LOVED」、5「I'LL KEEP YOU SATISFIED」、6「THAT MEANS A LOT」、7「I'LL BE ON MY WAY」、8「I DON'T WANT TO SEE YOU AGAIN」、9「HELLO LITTLE GIRL」、10「TIP OF MY TONGUE」、11「NOBODY I KNOW」、12「FROM A WINDOW」、13「STEP INSIDE LOVE」、14「LIKE DREAMERS DO」、15「GOODBYE」、16「IT'S FOR YOU」、17「I'M IN LOVE」の、全17曲入りです。曲名は、このアルバムでの表記の侭です。
これまで「FAB4 GAVE AWAY」を読んで頂いて、これらの曲名を見て頂ければ、全てが「レノン=マッカートニー」名義での提供曲だとお分かりになられるでしょう。つまり、このアルバムはレノン=マッカートニーが他者に提供した楽曲を、ビートルズ・スタイルでカヴァーしたものなのです。いきなりポールの駄作「ONE AND ONE IS TWO」で始まるのはズッコケますが、おそらくビートルズのデビュー・アルバム「PLEASE PLEASE ME with Love Me Do and 12 other songs」の1曲目に収録されている「I SAW HER STANDING THERE」みたいな感じ(ベースが同じ)にしたかったのでしょう。覆面バンドの正体は謎となっていますが、このレコードの為に集まったスタジオ・ミュージシャンが演奏しているのだと思います。演奏は上手過ぎず下手過ぎず、コーラスもビートリーに決めています。日本のレコード会社のディレクターが、プロモ盤の山から偶然に発見して、ジャケットを変えて発売したらしいです。1979年にリバプールのマイナー・レーベルからリリースされたなどとライナーノーツには書いてあるものの、本当かどうかも疑わしいのです。方法論としては、ラトルズやトッド・ラングレン&ユートピアみたいな、ビートルズのパロディです。
但し、こちらは本物の「レノン=マッカートニー」作品をカヴァーしていて、それらをビートルズ風なアレンジで演奏しているので、それだけで良かったのにな、と思えます。と云うのもですね、単にビートルズ風に演奏しているだけではなく、ビートルズの公式レコーディング曲のフレーズなどを混ぜてしまっているのですよ。しかも「SHE LOVES YOU」や「TICKET TO RIDE」や「DAY TRIPPER」などの超有名曲のフレーズも顔を出すわけで、ソレをやっちゃうと、折角の企画が台無しなんですよ。だってね、ビートルズはそんな同じネタを二度や三度もやらないざんしょ。それで、ビートルズ・スタイルでクリスマス・ソングを演奏した「ビートマス」みたいになっちゃっていて、その点はヒジョーに残念なのです。そう云う小手先のあざとい技を使わなくとも、充分にビートルズ風になっているので、余計に勿体ないのです。それをやるならニルソンの「YOU CAN'T DO THAT」位にやって欲しいし、ラトルズが物凄かったのは、誰もが元ネタが分かるのに、実は似ているのに単なるモノマネではなく、オリジナルの楽曲と演奏だったからなんですよ。折角のビートルズ風な演奏やコーラスも、ビートルズの公式曲のギター・リフが出てきちゃうと興醒めです。それから、こう云う提供曲に関する文章を書いているから云うのではありませんけれど、提供曲もどんなに駄作でもオリジナルの方が良いのです。
それで、オリジナルをおさらいすると、1「ONE AND ONE IS TWO」ザ・ストレンジャー・ウィズ・マイク・シャノン(1964年)、2「BAD TO ME」ビリー・J・クレイマー&ザ・ダコタス(1963年)、3(正しい表記は)「A WORLD WITHOUT LOVE」ピーター&ゴードン(1964年)、4「LOVE OF THE LOVED」シラ・ブラック(1963年)、5「I'LL KEEP YOU SATISFIED」ビリー・J・クレイマー&ザ・ダコタス(1963年)、6「THAT MEANS A LOT」P・J・プロビー(1965年)、7「I'LL BE ON MY WAY」ビリー・J・クレイマー&ザ・ダコタス(1963年)、8「I DON'T WANT TO SEE YOU AGAIN」ピーター&ゴードン(1964年)、9「HELLO LITTLE GIRL」フォーモスト(1963年)、10「TIP OF MY TONGUE」トミー・クイックリー(1963年)、11「NOBODY I KNOW」ピーター&ゴードン(1964年)、12「FROM A WINDOW」ビリー・J・クレイマー&ザ・ダコタス(1964年)、13「STEP INSIDE LOVE」シラ・ブラック(1968年)、14「LIKE DREAMERS DO」アップルジャックス(1964年)、15「GOODBYE」メリー・ホプキン(1969年)、16「IT'S FOR YOU」シラ・ブラック(1964年)、17「I'M IN LOVE」フォーモスト(1963年)です。
(小島イコ)
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