1968年8月30日(英国)・同年8月26日(米国)に、ビートルズが立ち上げたアップル・レコードから第1弾として、ビートルズのシングル「HEY JUDE / REVOLUTION」と、メリー・ホプキンのデビュー・シングル「THOSE WERE THE DAY / TURN TURN TURN」(ポールがプロデュース)と、ジャッキー・ロマックスの再デビュー・シングル「SOUR MILK SEA / THE EAGLE LAUGHS AT YOU」(A面はジョージ作・プロデュース)と、このブラック・ダイク・ミルス・バンドの「THINGUMYBOB / YELLOW SUBMARINE」(レノン=マッカートニー作でポールがプロデュース)が、4作同時にリリースされました。ビートルズのレノン=マッカートニー名義でポールが書いた「HEY JUDE」は、2週間連続全英首位!9週間連続全米首位!となり、ビートルズの最も売れたシングルとなりました。ジョンの息子であるジュリアンに向けて書いた7分以上もあるシングル曲は当時としては異例で、ポールとしても挑戦的な楽曲だったと思います。
ところが、モデルのツイッギーの紹介でポールがプロデュースしてデビューさせた当時18歳の「ポップスのシンデレラ・メリー・ホプキン」による「THOSE WERE THE DAY(悲しき天使)」が、6週間連続全英首位!全米2位と、予想外の大ヒットとなったのです。特に本国である英国では、ビートルズの「HEY JUDE」を蹴落としての大ヒットだったわけで、本末転倒です。そんな中、ジョージ、ポール、リンゴ、エリック・クラプトン、ニッキー・ホプキンスと、ジョン以外のアルバム「THE BEATLES(ホワイト・アルバム)」時期のビートルズ人脈を総動員して、ジョージが書いてプロデュースしたジャッキー・ロマックスの「SOUR MILK SEA」は、盛大にズッコケてしまったのです。当時のアップル・レコードでも「何故、売れなかったんだ?」と云われた程の結果で、まあ、余りにもバックが強過ぎて主役のジャッキー・ロマックスが戸惑う様なレコーディングだったからなのかもしれません。個人的にも、曲も演奏も良いので、何故に売れなかったのかサッパリ分かりません。やっぱり、クラプトンのリードギターがうるさすぎたからでしょうか。
そして、4作目がブラック・ダイク・ミルス・バンドの「THINGUMYBOB / YELLOW SUBMARINE」です。ブラック・ダイク・ミルス・バンドは1855年に創設された老舗のブラス・バンドで、レノン=マッカートニー名義でポールが書いた「THINGUMYBOB」は、ヨークシャーテレビで放送していた同名コメディー番組の主題曲です。B面はビートルズの「YELLOW SUBMARINE」のインストゥルメンタル・カヴァーで、両面共にポールがプロデュースしていて、雰囲気を出す為に街頭でレコーディングしています。つまり、ポールはアップルからの第1弾シングル4作全てに関わっているのです。このシングルはヒットせず、日本では「イエロー・サブマリン」がA面になっていて、ジャケットにポールが(おそらく愛犬・マーサと)ど真ん中にいます。ブラック・ダイク・ミルス・バンドがアップルに残したのはこのシングル1作だけですが、ポールは1979年6月リリースのウイングスのラスト・アルバム「BACK TO THE EGG」に収録されている名曲「WINTER ROSE / LOVE AWAKE」の後半の「LOVE AWAKE」のパートで、ブラック・ダイク・ミルス・バンドを再び起用しています。
(小島イコ)
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