レノン=マッカートニー名義での提供曲をまとめて聴くには、現在でも入手可能なのは「ETERNAL GROOVES」から出ているハーフオフィシャル盤の「LENNON & McCARTNEY SONGBOOK」が便利です。が、しかし、ハーフオフィシャル盤の宿命で、1967年リリースのシラ・ブラックによる「STEP INSIDE LOVE」までしか収録されていません。ビートルズは1968年にアップル・レコードを立ち上げるので、そこから提供曲やプロデュース作も増えてゆくのですけれど、メリー・ホプキンや、ジャッキー・ロマックスや、ジェームス・テーラーや、ビリー・プレストンや、バッドフィンガーや、ドリス・トロイと云った有名どころは勿論の事、ブラック・ダイク・ミルス・バンドや、トラッシュや、ホット・チョコレート・バンドや、ロニー・スペクターや、ラダ・クリシュナ・テンプルや、クリス・ホッジや、エラスティック・オズ・バンドと云ったレアなところを押さえたコンピレーション盤が、2010年リリースの「COME AND GET IT THE BEST OF APPLE RECORDS」です。特にジョージ・ハリスンが本領発揮するのはアップル設立以後なので、コレがないとあんまりなのです。
アップル・レーベルのリイシューは、1991年からアルバム中心に一度行われていたのですが、2009年9月9日のビートルズのリマスターCDが出た翌年の2010年に再度行われていて、「COME AND GET IT THE BEST OF APPLE RECORDS」はシングル曲だけだったミュージシャンの曲も丁寧に拾った全21曲入りで、アップル・レコードのビートルズ以外のミュージシャンを聴くにはお手軽かつ必聴盤です。廃盤状態かもしれませんが、中古盤もプレミアなどは付いていない様なので、「LENNON & McCARTNEY SONGBOOK」のつづきを聴きたければコレが決定盤でしょう。そんな全21曲の最初を飾るのは、メリー・ホプキンの「THOSE WERE THE DAY(悲しき天使)」です。英国では1968年8月30日に、米国では同年8月26日に、アップル第1弾シングルとして、ビートルズの「HEY JUDE / REVOLUTION」と、ジャッキー・ロマックスの「SOUR MILK SEA」(ジョージ・ハリスン作・プロデュース)と、ブラック・ダイク・ミルス・バンドの「THINGUMYBOB / YELLOW SUBMARINE」(ポール作・プロデュース)と共に、ポールのプロデュースでリリースされています。
当時18歳だったメリー・ホプキンは、モデルのツイッギーがテレビのコンテスト番組に出ているのを観てポールに紹介していて、デビュー曲で元々はロシア民謡で英語版はジーン・ラスキン作の「THOSE WERE THE DAY」は、英国ではビートルズの「HEY JUDE」をチャートの首位!から引きずり下して6週間連続首位!となり、全米でも2位まで上がり(首位!は9週間連続でビートルズの「HEY JUDE」)正にスター誕生となったのです。日本でも「悲しき天使」の邦題で首位!と大ヒットしたし、世界中で売れました。英語の他にも、ロシア語、日本語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語、ポルトガル語、北京語などでもカヴァーされています。アレンジは、後に「THE LONG AND WINDING ROAD」でポールと揉めるリチャード・ヒューソンです。シングルB面は、バーズもカヴァーしたピート・シガー作の「TURN TURN TURN」です。メリー・ホプキンは、1969年2月21日(英国)・同年3月3日(米国)にファースト・アルバム「POST CARD」を、やはりポールが全面的にプロデュースしバックアップしてリリースしています。此のアルバムの英国盤には「THOSE WERE THE DAY」が未収録で、メリー・ホプキンのシングル曲はアルバム未収録曲(ポール作の「GOODBYE」も)が多いので、ベスト盤やコンピ盤も意味があります。
デビュー・アルバム「POST CARD」の邦題は「ポップスのシンデレラ / メリー・ホプキン・ファースト」で、ポールがプロデュースしていますが、楽曲提供はなく、代わりにドノヴァンが3曲、ハリー・ニルソンが1曲、そして珍しく歌ものをサー・ジョージ・マーティンが1曲提供していて、他も幅広い選曲となっています。ジャケット写真は、リンダ・イーストマン(リンダ・マッカートニー)が担当と、ズブズブの身内で固めています。前述の通りに英国オリジナル盤には「THOSE WERE THE DAY(悲しき天使)」は未収録ですが、米国盤や日本盤には収録されています。その代わりに米国盤と日本盤にはスタンダード曲「SOMEONE TO WATCH OVER ME」が未収録です。現在のCDでは英国オリジナル14曲に「THOSE WERE THE DAY」(アルバム冒頭に収録)、「TURN TURN TURN」、「THOSE WERE THE DAY」のイタリア語ヴァージョンとスペイン語ヴァージョンが加わった18曲入りの1991年盤と、そこから「THOSE WERE THE DAY」のイタリア語とスペイン語を外して、ポール作の第2弾シングル「GOODBYE」と、ギャラガー&ライル作の「SPARROW」と「THE FIELDS OF ST. ETIENNE」を加えた19曲入りの2010年盤があります。2010年盤に新たに加わったポールがプロデュースした3曲(但し「THE FIELD OF ST. ETIENNA」はジェフ・エメリックがプロデュースした別ヴァージョン)はベスト盤にも入っているので、「THOSE WERE THE DAY」のイタリア語とスペイン語の方がレアかもしれません。
(小島イコ)