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2024年08月15日

「ポールの道」#463「FAB4 GAVE AWAY」#07 「I'LL KEEP YOU SATISFIED」

Do You Want to Know a Secret


ビートルズを「デッカ・オーディション」で落選させたのは、新人部門のトップだったディック・ロウですが、実際にビートルズを落としたのは部下のマイク・スミスです。マイク・スミスは、ビートルズとブライアン・プール&ザ・トレメローズの両方と契約すべきだとディック・ロウに云ったのですが、ディック・ロウは「どちらか片方を選べ」と云って、マイク・スミスは「ロンドンを拠点としていたブライアン・プール&ザ・トレメローズの方が、リヴァプールの田舎者であるビートルズよりも近くて良い」と云う理由でビートルズを落としてしまったのです。勿論、責任者はディック・ロウですが、彼はビートルズによるオーディションの演奏すら聴いていなかったらしいのです。そのうえ、マネジャーのブライアン・エプスタインに「ギター・グループはもう時代遅れですよ、リヴァプールで成功しているならそっちで頑張って下さい」などと云ったらしいのです。

ブライアン・エプスタインは「ビートルズはエルヴィス・プレスリーよりも有名になるんです!」と涙ながらに訴えたものの、デッカ・オーディションは落ちてしまい、ビートルズは「ブライアンが云う通りに行儀が良い選曲で大人しく演奏したから落とされた」と云って、ブライアンに二度と音楽面では意見させない様になりました。まあ、兎も角、ディック・ロウは「演奏を聴きもしないでビートルズを落とした世紀のアホ」となったわけですなあ。それなのにジョージ・ハリスンの推薦でローリング・ストーンズと契約しちゃうディック・ロウは、プライドと云うものがなかったのでしょうか。そのローリング・ストーンズに「チラシみたいなもんで、捨て曲」とジョンが公言した「I WANNA BE YOUR MAN」をレノン=マッカートニーは提供して、セルフ・カヴァーでリンゴに歌わせると云う「デッカ憎し」を見せたのですが、同じ1963年11月1日にはビリー・J・クレイマー&ザ・ダコタスに「I'LL KEEP YOU SATISFIED」を提供してリリースしています。

英国ではパーロフォンからのリリースで、プロデュースはサー・ジョージ・マーティンで、マネジャーはブライアン・エプスタインです。米国でも同日にリバティーから出ていて、全英4位・全米30位と売れました。同日発売のローリング・ストーンズによる「I WANNA BE YOUR MAN」は全英12位なので、こっちの方が売れています。ビリー・J・クレイマーはブライアン・エプスタインのお気に入りだった様で、レノン=マッカートニーに良い曲を提供してくれる様に直接お願いしていました。故に、レノン=マッカートニーは「DO YOU WANT TO KNOW A SECRET」や「I'LL BE ON MY WAY」や「BAD TO ME」や「I CALL YOUR NAME」と云った曲を提供していて、特にジョンは「BAD TO ME」と「I CALL YOUR NAME」を書き下ろしていて、後に「I CALL YOUR NAME」はビートルズでセルフ・カヴァーしています。

「I'LL KEEP YOU SATISFIED」はポールが書いた曲ですが、ブライアン・エプスタインからのお願いがあったからか、クズ曲ではなくマトモな提供曲となっています。ところが、ポールの曲なのに歌い方はジョンみたいに聴こえます。コレはですね、おそらくブライアン・エプスタインのお願いで、1963年10月14日にジョンがレコーディングに立ち会っていて、自ら歌唱指導をした為だと思われるのです。B面の「I KNOW」は、ビートルズとは関係がない曲です。ビリー・J・クレイマーはデビューから3作(5曲)がレノン=マッカートニー作品で大ヒットさせていたのですが、余りにもビートルズ頼みだと思ったのか、4作目はモート・シューマン作の「LITTLE CHILDREN」を出して全英首位!全米7位と大ヒットさせています。5作目はまたレノン=マッカートニー作品に戻るのですけれど、「LITTLE CHILDREN」でいい気になったのか、1965年辺りから落ちぶれてゆくのでした。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする