メドレー・ブームに便乗した1982年3月(米国・キャピトル)・同年5月(英国・パーロフォン)にリリースしたシングル「THE BEATLES' MOVIE MEDLEY」が、全英10位・全米12位とヒットして、何故かそのシングルは収録されていないアルバム「REEL MUSIC」も全米19位とそこそこヒットしてしまったビートルズの編集盤ですが、1982年10月18日に英国・パーロフォンから、同年10月11日に米国・キャピトルから、編集盤「20 GREATEST HITS」がリリースされました。この編集盤は、英国と米国では選曲が違っています。英国盤は、A面が、1「LOVE ME DO」、2「FROM ME TO YOU」、3「SHE LOVES YOU」、4「I WANT TO HOLD YOUR HAND」、5「CAN'T BUY ME LOVE」、6「A HARD DAY'S NIGHT」、7「I FEEL FINE」、8「TICKET TO RIDE」、9「HELP!」、10「DAY TRIPPER」、11「WE CAN WORK IT OUT」で、B面が、1「PAPERBACK WRITER」、2「YELLOW SUBMARINE」、3「ELEANOR RIGBY」、4「ALL YOU NEED IS LOVE」、5「HELLO GOODBYE」、6「LADY MADONNA」、7「HEY JUDE」、8「GET BACK」、9「THE BALLAD OF JOHN AND YOKO」の、全20曲入りで、全英10位でした。
米国盤(日本盤も同内容)は、A面が、1「SHE LOVES YOU」、2「LOVE ME DO」、3「I WANT TO HOLD YOUR HAND」、4「CAN'T BUY ME LOVE」、5「A HARD DAY'S NIGHT」、6「I FEEL FINE」、7「EIGHT DAYS A WEEK」、8「TICKET TO RIDE」、9「HELP!」、10「YESTERDAY」、11「WE CAN WORK IT OUT」、12「PAPERBACK WRITER」で、B面が、1「PENNY LANE」、2「ALL YOU NEED IS LOVE」、3「HELLO GOODBYE」、4「HEY JUDE」、5「GET BACK」、6「COME TOGETHER」、7「LET IT BE」、8「THE LONG AND WINDING ROAD」の、全20曲入りで、全米50位と低かったものの米国だけで200万枚以上売れました。どちらも全20曲入りですが、全てが「赤盤」と「青盤」にも収録されている曲ばかりで、LP1枚に20曲も詰め込んだので「HEY JUDE」が短縮ヴァージョンになっています。ゴリゴリのヒット曲だけを収録していて、後の「1」のひな型となった編集盤です。「赤盤」と「青盤」どころか「1」とも全曲ダブっているので、CD化はされていません。
ソレは「20 GREATEST HITS」だけではなく、1976年から1982年までにリリースされたビートルズの編集盤は、「ROCK'N'ROLL MUSIC」も、「LOVE SONGS」も、英国盤「RARITIES」も、米国盤「RARITIES」も、「THE BEATLES BALLADS」も、「THE BEATLES BOX」も、「REEL MUSIC」も、全てがCD化されていません。そして、1982年のベスト盤である「20 GREATEST HITS」を最後に、新たな編集盤が編纂される事もなくなり、1987年から1988年にかけてのビートルズの初CD化へと向かうのでした。しかしながら、その空白の5年間の1985年に、ビートルズの未発表音源(つまりはボツ音源)をまとめたアルバム「SESSIONS」をリリースする事になり、選曲も曲順も決まってジャケットまで作られたのに、あるメンバー(ポールもしくはジョージ?)が発売直前になって反対して、未発表となってしまいます。
「SESSIONS」の内容は、1「COME AND GET IT」(1969年)、2「LEAVE MY KITTEN ALONE」(1964年)、3「NOT GUILTY」(1968年)、4「I'M LOOKING THROUGH YOU」(1965年)、5「WHAT'S THE NEW MARY JANE」(1968年)、6「HOW DO YOU DO IT」(1962年)、7「BESAME MUCHO」(1962年)、8「ONE AFTER 909」(1963年)、9「IF YOU’VE GOT TROUBLES」(1965年)、10「THAT MEANS A LOT」(1965年)、11「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」(1968年)、12「MAILMAN, BRING ME NO MORE BLUES」(1969年)、13「CHRISTMAS TIME IS HERE AGAIN」(1967年)の、全13曲入りで、「LEAVE MY KITTEN ALONE」をシングル・カットして、B面には「OB-LA-DI, OB-LA-DA」の別テイクを収録する予定でした。シングル「LEAVE MY KITTEN ALONE / OB-LA-DI, OB-LA-DA」は、キャピトルでは1985年1月1日リリース予定で品番まで決まっていて、リリースされていれば、英国では27作目・米国では38作目のシングルになる予定でした。
現在では「SESSIONS」に収録予定だった楽曲は、10年後にリリースされた編集盤「ANTHOLOGY 1〜3」に全て収録されているので、単体のアルバムとしては公式盤でリリースされる事はないでしょう。ソノ背景には1981年からジョン・バレットがビートルズの録音テープを収集し整理していて、1983年には「The Beatles Live at Abbey Road」と云う未発表音源を公開するプレゼンも行われていて、映像作品「THE LONG AND WINDING ROAD」が制作される事になって、ジョージが「ポールの曲のタイトルは嫌だ」とごねて、結局は映像作品もレア音源集も「ANTHOLOGY」となって、実現するのも10年後になったのです。「SESSIONS」はリリース直前まで行ったので音が良いブートレグが出ていて、ジョン・バレットの音源発掘プロジェクトや、マーク・ルイソンによる全レコーディング・データ本などでビートルズの音源が掘り起こされて、その過程で悪い奴がテープをコピーしてブートレグ化されて、それまでには考えられなかった良い音質のブートレグが出る様になったのでした。
(小島イコ)
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