今年(2024年)3月21日に「EACH TIME VOX」をリリースしたので、もう当分の間はナイアガラの新作と称するインチキ商品はリリースされないだろう、と高を括っておりましたが、7月7日に「ナイアガラ音頭 EP」なる短冊CDがリリースされてしまいました。コレは発売日に買って書いているので、七夕に選挙で投票してから買いにゆきました。内容は、1「ナイアガラ音頭(Single Version)」、2「あなたが唄うナイアガラ音頭」、3「Let's Ondo Again('81 Mix)」、4「Let's Ondo Again('81 Mix Karaoke)」、5「夏バテ(熱中症 Version)」の5曲入りです。名義は「布谷文夫 with ナイアガラ社中」となっていて、カラオケ以外のヴォーカル曲は全て布谷文夫さんが歌っていて、大瀧師匠は、プロデューサー(大瀧詠一)、エンジニア(笛吹銅次)、アレンジャー(多羅尾伴内)として全面的に関わっている作品集となっています。
新音源としては「Let's Ondo Again('81 Mix Karaoke)」と「夏バテ(熱中症 Version)」が珍しいところでしょうけれど、メインは「ナイアガラ音頭」です。1976年リリースのアルバム「NIAGARA TRIANGLE Vol. 1」の最後に収録されている「ナイアガラ音頭」は、此のシングル・ヴァージョンではピッチが上がっていて、大瀧師匠が「スティーヴィー・ワンダーみたいに弾いてよ」と依頼して教授こと坂本龍一さんが唸る様なクラビネットを弾いています。シングル・ヴァージョン「ナイアガラ音頭」とカラオケ「あなたが唄うナイアガラ音頭」の両面共にアルバム未収録のシングル・ヴァージョンでしたが、後に2006年リリースのアルバム「NIAGARA TRIANGLE Vol. 1」の30周年記念盤にボーナス・トラックとして収録されています。
「Let's Ondo Again('81 Mix)」は1978年リリースのアルバム「レッツ・オンド・アゲン」の最後に収録されている表題曲で、チャビー・チェッカーの「LET'S TWIST AGAIN」のカヴァーなんですけれど、音頭化した挙句に「ナイアガラ音頭」の出鱈目な英語ヴァージョンを挿入していて、此のミックスの初出は、1981年リリースの編集盤「NIAGARA FALL STARS」です。アルバム「レッツ・オンド・アゲン」は大瀧師匠が「忘れていた」との事で、30周年記念盤が出ておりませんが、1996年のリイシュー盤に「Let's Ondo Again」のオリジナル・ミックスと'81ミックスが両方共に収録されています。「Let's Ondo Again」のカラオケ・ヴァージョンは、あたくしは初めて聴きました。ナイアガラ関連の記事カテゴリ名を「ONDO」としている事でもお分かりの様に、個人的には此の路線が大好きなんです。
此の辺の音頭路線は、昨年(2023年)にリリースされた「NOVELTY SONG BOOK / NIAGARA ONDO BOOK」でまとめて聴ける様になったのですが、チョロっと変えた別ヴァージョン(「ナイアガラ音頭」は1995リミックス、「Let's Ondo Again」は布谷文夫さんがヴォーカルではない女性ヴォーカルの「Let's 宵・宵・宵ヴァージョン」と細川たかしさんヴァージョン)を収録されていたので、オリジナル・ヴァージョンの方がレアになっていたりもします。最後に収録されているのは大瀧師匠が3曲をプロデュースした1973年リリースの布谷文夫さんのアルバム「悲しき夏バテ」に収録されているガーネット・ミムズ「One Woman Man」(アンダース&ポンシア作)の日本語替え歌カヴァー「夏バテ」の別ヴァージョンなのですけれど、何故か昔から「作詞・作曲:布谷文夫」とクレジットされています。「夏バテ」のオリジナル・ヴァージョンとの違いは、シンガーズ・スリーによる女性コーラスが入っていないなど、一聴しても分かります。
怪人・布谷文夫さんの破壊力抜群なヴォーカルが堪能出来るカップリングではあるし、「ナイアガラ音頭」はオリジナルのシングル・ヴァージョンで、「Let's Ondo Again」も評価が高い'81ミックスなので、違和感がなく聴けてレアなカラオケと別ヴァージョンをカップリングして、ジャケットもシングル盤に掲載されていた振付けなども転載していて、親切なリイシュー盤だとは思いました。大瀧師匠が不在な今、「夏バテ」の別ヴァージョンがどうやって制作されたのかは謎ではありますが、大瀧師匠と布谷文夫さんの仲が良さそうな2ショット写真も載っていて、お二人共に亡くなっているのに、こんなEPが2024年に出たと知ったならどう思うのでしょうか。ナイアガラのコロムビア暗黒時代に咲いたあだ花とも云えるカップリングで、「NOVELTY SONG BOOK / NIAGARA ONDO BOOK」が出た後でも大瀧師匠がこんな事をやっていたとは知らない方々も多いのでしょうなあ。何故に今更短冊CDなのかは疑問ですけれど、お好きな方はお早めにお買い求め下さい。
(小島イコ)