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2024年06月24日

「ポールの道」#411「FAB4 U.S. SINGLES」#05「TWIST AND SHOUT / THERE'S A PLACE」



1964年2月1日付にキャピトルからの第1弾シングル「I WANT TO HOLD YOUR HAND」が全米首位!となったビートルズは、同年2月15日付にはキャピトルからの第1弾アルバム「MEET THE BEATLES!」も全米首位!となり、全米制覇を成し遂げて、つまりソレは全世界制覇となったのです。ビートルズの米国での成功は、エド・サリヴァンが1963年10月31日にいち早くビートルズを見初めて、1964年2月9日から3週連続で「エド・サリヴァン・ショー」に出演させて、エド・サリヴァンが認めたから大手キャピトルがビートルズのレコードを発売する様になったので成されたのです。それまでの米国でのビートルズのレコードは、弱小レーベルのヴィー・ジェイやスワンから発売されていて、それらのシングルやアルバムもキャピトル盤に便乗するカタチで売れました。先を急げばビートルズは、1964年4月4日付の全米ビルボード・チャートで首位!から5位までを独占する前人未到の記録を成し遂げるのですが、それだけ色々なシングルが異なるレーベルから出ていたのです。

キャピトル盤シングル「I WANT TO HOLD YOUR HAND」(1963年12月26日リリースのキャピトル第1弾で米国では4作目)が売れて、ソレに引っ張られてスワン盤シングル「SHE LOVES YOU」(1963年9月16日リリースの米国では3作目)やヴィー・ジェイ盤シングル「PLEASE PLEASE ME」(1964年1月30日に「PLEASE PLEASE ME / FROM ME TO YOU」の米国での1作目と2作目のA面をカップリングでリイシューした米国では5作目)も売れて来た1964年3月2日に、米国では6作目のシングル「TWIST AND SHOUT / THERE'S A PLACE」が、今度はヴィー・ジェイの子会社である「トリー」からリリースされました。両面共に本国英国では1963年3月22日にリリースされたデビュー・アルバム「PLEASE PLEASE ME with Love Me Do and 12 other songs」に収録されている楽曲で、米国では1963年7月22日にヴィー・ジェイからリリースされたデビュー・アルバムである「INTRODUCING THE BEATLES」に収録されていました。

ヴィー・ジェイは最初はアルバム「PLEASE PLEASE ME with Love Me DO and 12 other songs」からシングル「PLEASE PLEASE ME / ASK ME WHY」を抜いた全12曲入りでリリースしていて、サッパリ売れず、1964年1月27日に「LOVE ME DO / P.S. I LOVE YOU」を抜いて「PLEASE PLEASE ME / ASK ME WHY」を戻した全12曲入りでリイシューして、そちらはアルバム「MEET THE BEATLES!」に便乗して全米2位まで上がっています。更に、1964年2月26日にはフランク・アイフィールドのライヴ盤に4曲を入れたり、1964年8月10日には既発曲のシングルを4作も出したり、1964年10月1日にはフォー・シーズンズとの2枚組「THE BEATLES VS. THE FOUR SEASONS」にしたり、1964年10月12日には「INTRODUCING THE BEATLES」のタイトルを「SONGS, PICTURES AND STORIES OF THE FABULOUS BEATLES」に改題して出したりするのですが、何せ16曲しか契約していないので、何度も同じネタで呆れられて倒産してしまいます。

子会社であるトリー・レーベルからも既発曲の「TWIST AND SHOUT / THERE'S A PLACE」だけではなく、1964年4月27日にはやはり既発曲の「LOVE ME DO / P.S. I LOVE YOU」をリリースしていて、英国でのデビュー・シングルを1年半後にシングル・リリースしているのです。そして、全英では17位だった「LOVE ME DO」が、全米制覇のどさくさに紛れて1964年5月30日付で全米首位!となってしまったのです。故に、もしもトリーから「LOVE ME DO」がシングルとしてリリースされなければ、後のベスト盤「1」の1曲目は「LOVE ME DO」ではなく「FROM ME TO YOU」になっていたわけですなあ。ヴィー・ジェイが倒産して、1965年3月22日になってキャピトルはアルバム「THE EARLY BEATLES」をリリースしていて、そっちも英国でのデビュー・アルバム「PLEASE PLEASE ME with Love Me Do and 12 other songs」を元にしているのですが、全11曲入りで英国盤よりも3曲少ないのです。ソレは「I SAW HER STANDING THERE」と「MISERY」と「THERE'S A PLACE」の3曲で、「MISERY」と「THERE'S A PLACE」が米国キャピトル盤の「RARITIES」に収録されているのは其の為です。

さて、此のトリー盤の「TWIST AND SHOUT / THERE'S A PLACE」のA面「TWIST AND SHOUT」も全米2位まで上がって、B面「THERE'S A PLACE」も74位まで上がって、シングルも100万枚も売れています。英国盤「PLEASE PLEASE ME with Love Me Do and 12 other songs」でも、米国盤「INTRODUCING THE BEATLES」でも、アルバムでのB面最後の曲がA面で、その前の曲がB面と云うシングルなのですが、英国盤第1弾EP「TWIST AND SHOUT」も参考にしたのかもしれません。B面の「THERE'S A PLACE」はジョン作で、ジョンが最初に内省的な心の内を吐露した渋い曲です。A面の「TWIST AND SHOUT」は、1961年8月リリースのフィル・スペクターがプロデュースしたトップ・ノーツ盤がオリジナルですが、ビートルズが参考にしたのは1962年5月リリースの作者のひとりであるバート・バーンズがプロデュースしたアイズレー・ブラザーズ盤(全米17位)です。ビートルズがカヴァーしたオリジナルを収めたオムニバス盤には、大抵はアイズレー・ブラザーズ盤が収録されています。トップ・ノーツ盤は、フィル・スペクターの初期プロデュース作品集で聴けます。ジョンの絶唱によって、オリジナルを超えたカヴァーを更に超えたカヴァーのカヴァーとなりました。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする