2018年9月7日にポール・マッカートニーは、ソロ名義では17作目(ポール&リンダやウイングスを含めて25作目)のスタジオ・アルバム「EGYPT STATION」をMPL/キャピトルからリリースしました。此のアルバムから、ポールはヒア・ミュージックから古巣のキャピトルへと再移籍しています。前作である2013年リリースのアルバム「NEW」から、実に5年ぶりとなる新作ロック・アルバムではありましたが、ポールは毎年リイシュー盤やベスト盤などをリリースしていましたし、2013年と2015年と2017年と2018年には来日公演もあったし、2017年からは本隊であるビートルズのアルバムが「50周年記念盤」としてリミックスされて毎年の様にリイシューされているので、全く久しぶりと云う感じはありませんでした。其のビートルズの「50周年記念盤」は、2017年リリースのアルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」から始まって、序文を担当したポールは自分自身が作った50年前のアルバムに大いに刺激を受けて、アルバム「EGYPT STATION」の構想に繋がっています。
アルバム「EGYPT STATION」の内容は、1「OPENING STATION」、2「I DON'T KNOW」、3「COME ON TO ME」、4「HAPPY WITH YOU」、5「WHO CARES」、6「FUH YOU」、7「CONFIDANTE」、8「PEOPLE WANT PEACE」、9「HAND IN HAND」、10「DOMINOES」、11「BACK IN BRAZIL」、12「DO IT NOW」、13「CAESAR ROCK」、14「DESPITE REPEATED WARMINGS」、15「STATION U」、16「HUNT YOU DOWN / NACKED / C-LINK」の、全16曲入りですが、日本盤などにはボーナス・トラックとして、17「GET STARTED」、18「NOTHING FOR FREE」の2曲が加わっています。プロデュースは、ポールとグレッグ・カースティンとライアン・テダーとザック・スケルトンで、楽曲は本編の「FUH YOU」とボーナス・トラックの「NOTHING FOR FREE」がポールとライアン・テダーの共作で、他は全てポールのオリジナルです。ポールはビートルズのアルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」を架空のライヴ構成にしていたので、今作は駅を辿るトータル・アルバムを意識しています。
演奏は、ポールが、リード・ヴォーカル、バッキング・ヴォーカル、アコースティック・ギター、キーボード、ベース、パーカッション、ドラムス、エレクトリック・ギター、ハーモニカ、テープ・ループ、で、ツアー・バンドの演奏も含んでいます。近年のポールのソロ・アルバムは同じ形態でレコーディングしていて、おそらくポールがワンマン・レコーディングした音源を元にしているのでしょう。カラフルなアルバム・ジャケットはポールが1988年に描いたもので、紙ジャケットでCDサイズに折りたたんであって、蛇腹になっているのを広げると横幅が6倍サイズで長い絵の全体が観れる様になっています。ポールも76歳となって、流石に声の衰えは隠しきれてはいませんし、新作アルバムとしては5年ぶりだったので、余計に声の違いが感じられます。しかし、此のアルバム「EGYPT STATION」は、全英3位・全米首位!を獲得しています。特に全米での首位獲得は、1982年のアルバム「TUG OF WAR」以来36年ぶりでした。
どんなに声が出なくなっても、みんなポールの新作アルバムを待っていたのです。2018年6月20日には、先行シングルとして「I DON'T KNOW / COME ON TO ME」が「両A面」でリリースされていて、同2018年11月23日には5千枚限定で7インチ盤も出ています。公式では「哀愁のある魂の癒しのバラード」とされている「I DON'T KNOW」は、ほとんどがポールのワンマン・レコーディングです。両A面のポールが「口説きソング」と語った「COME ON TO ME」でもポールが多くの楽器を演奏していて、ツアー・バンドの協力も得ています。76歳にもなって「どうやって女の子をナンパしようかなあ」と云った内容のロック・ナンバーを書いて歌っているわけで、幾つになってもポールはポールです。「I DON'T KNOW」は全英103位・全米ロック配信チャート12位で、「COME ON TO ME」は全英58位・全米ロック配信チャート4位と、やはりアルバムが首位になった米国でヒットしています。シングル「I DON'T KNOW / COME ON TO ME」は「THE 7‘’ SINGLES BOX」では76枚目で、グローバル盤のピクチャー・スリーヴで復刻されています。
(小島イコ)
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