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2024年06月05日

「弾けたスターダム、驕るなマリーゴールド」



昨年(2023年)の年末に女子プロレス団体「スターダム」の両国国技館での興行について書いてから、半年近い月日が経ってしまいました。ソノ間、スターダムは目まぐるしい変化があって、どのタイミングで書こうかと迷っていたのです。2024年の年明けには、もう恒例となった「あけましてスターダム」がTOKYO-MXで関東ローカルとは云え1月1日から1月2日まで12時間ぶっ通しで放送されて、試合のパートが半分位で、後はユニットの座談会とかゲーム大会とかをやっていて、ゲームではベビーフェイスもヒールも仲良く遊んでいて、何だかなあ、と思いつつも観ておりました。ずっと地震情報のテロップ入りだったので、録画を観る度に被災地の事を考えます。ところが、年明けの興行でジュリアが率いる「DDM(ドンナ・デル・モンド)」が、1月3日には勝手にベルトを賭けて防衛戦で負けて、1月4日には表向きは舞華が赤いベルトのチャンピオンになってユニット内のパワーバランスが壊れた事で解散してしまったのです。

ジュリアは「一匹狼時代に戻りたい」と云っているのに、桜井まい(当時)は「私はジュリアについてゆきます」などと云っていて、テクラは「しばらく休みます(後に大江戸隊で復帰)」で、舞華は「自分が率いるユニットを模索する」と云う感じでした。そして、1月20日には舞華が白川未奈と共闘して新ユニット「E neXus V(イー・ネクサス・ヴィー)」を立ち上げます。2月4日のエディオンアリーナ大阪第1競技場での「スターダム13周年記念STARDOM Supreme Fight 2024〜大阪ミナミの乱〜」のメインエベントで舞華が赤いベルトを賭けて上谷沙弥と戦い防衛した後で、リング上に全選手とロッシー小川を呼び込んで〆たのに、ソノ直後に岡田太郎社長がロッシー小川をクビにしたと発表したのです。そもそもスターダムはロッシー小川が創設した団体でしたが、2019年にブシロードに身売りした後は「エグゼクティブプロデューサー」と云う名のよく分からない立場だったのですが、解雇された理由は「複数の選手やスタッフの引き抜き行為があった」為と公表されました。

ロッシー小川は即座に新団体を旗揚げすると発言して、3月2日にはジュリアが退団の意向を公けにして、3月22日にはブシロードファイトが3月末日で「ジュリア、林下詩美、桜井まい、MIRAI、弓月」の5選手の退団を公表しました。ジュリアや林下詩美は、キッチリと負けてベルトを返しました。ソレと前後して、既に白いベルトを巻いている安納サオリがスターダムと専属契約を結んだ事が「週刊プロレス」誌上で公表されていて、個人的には新団体うんぬんよりも安納サオリの動向の方が気になったし、フリーで色んな団体に出場している安納サオリが好きだったので、ガックリきたのです。ところが、スターダム専属となった4月以降も安納サオリは普通にそれまでと変わらず他団体のリングにも上がっていて、OZアカデミーでの正危軍の「黒い安納サオリ」も継続しているだけでなく、正危軍にすり寄って来たウナギ・サヤカとイヤイヤながらもタッグを組んだりしているのです。どうやら安納サオリのスターダムとの専属契約には、フリー時代と変わらずに他団体へ参戦する事も許可されている様なのです。

スターダム・サイドとしては、安納サオリがフリー時代に参戦して培った人脈を利用して、多くの他団体と交流戦も行いたいらしく、東京女子プロレスへの参戦や、センダイガールズプロレスリングの岩田美香との白いベルト戦などにも発展しています。一方、4月15日にロッシー小川が新団体「マリーゴールド」の旗揚げ記者会見を行い、スターダムを退団した5選手、ジュリア、林下詩美、桜井麻衣(元・桜井まい)、MIRAI、ビクトリア弓月(元・弓月)と、元・全女で元・スターダムの高橋奈七永と、元・アイスリボンの石川奈青の7選手での旗揚げを発表した所に、風香がアクトレスガールズの6選手を引き連れて直訴して、まるごと面倒をみて13選手が所属となり、遺恨を作ったプロレスリング・ノアの女子選手も取り込んで、5月20日に後楽園ホールで旗揚げ戦「Marigold Fields Forever」を行い、1,535人/超満員札止めの成功となったのです。団体名をあいみょんの曲名から取ったので、旗揚げ戦のタイトルはビートルズの曲名から取ったのでしょうね。

旗揚げ戦のメインエベントは、ジュリアが林下詩美とタッグを組んで、フリーのSareeeと、結果的には「まだ見ぬ強豪」だった大怪獣・ボジラと戦い、ジュリアがSareeeにフォール負けしました。コレは「プロレスあるある」で、かつてはアントニオ猪木も新日本プロレスの旗揚げ戦でカール・ゴッチにフォール負けしているのです。旗揚げ戦の試合中ジュリアは右手首を骨折してしまい、其の後の試合は欠場となっています。いきなりエースを欠いた状況となったのですが、7月13日には早くも両国国技館での興行が発表されています。ソノ両国大会なんですけれど、特別リングサイド席が12万円もするんですよ。オマケで好きな選手と2ショット写真が撮れるのは良いとして、パイプ椅子プレゼントって、なんなんでしょうね。ジュリアは欠場ながら巡業には帯同している旗揚げシリーズも好評なのですが、ロッシー小川が「284人しか入れられないんじゃ新木場でやる意味ない」などと驕った発言をしています。

そもそも女子プロレス団体なのに、社長のロッシー小川と云う70歳近いお爺さんばかり注目されるのは、どうなんでしょうか。ロッシー小川は全女時代に対抗戦を乱発して倒産の原因のひとつとなったし、次に旗揚げしたアルシオンは潰しているし、スターダムもブシロードに売らなければ潰れていたのです。幾ら女子プロレス業界では長老でも、経営者としての実績には疑問符が付くのです。スターダムをブシロードに譲渡した後は「置物だった」などと云っていますけれど、ソレはブシロードの恩情であって、観ている立場からすると「何でアノお爺さんはリングサイドに座っていて、タイトルマッチではリングに上がってくるの?」だったのですよ。裏方であるべきフロントが目立っちゃうのは、あまり良い傾向とは思えません。スターダムの他にも女子プロレス団体は数多くあって、後ろ盾があるスターダム以外の団体はバイトしないとプロレスだけでは食べてゆけないとも云われているのに、新団体を旗揚げしたのは大きなスポンサーでもいるのでしょうか。

そして、思ったよりも退団者が少なく5人だけで済んだスターダムですけれど、5人の内二人は最高峰の赤いベルトを巻いた事がある林下詩美とジュリアで、MIRAIは現王者・安納サオリに負ける前は白いベルトを巻いていたのです。何よりも退団で驚いたのはデビュー間もないビクトリア弓月で、1月3日には新人王になっていて岩谷麻優が率いる「STARS」に加入したばかりだったのです。ロッシー小川には、そうした選手を大切にして欲しいとしか云えません。スターダムもスターダムで、TV中継番組では退団した5人を遺恨もなく爽やかに送り出した模様を流して余裕をみせてはいますけれど、団体内のユニットがガタガタしていて迷走しています。特にスターライト・キッドが唐突に大江戸隊から追放された辺りから、よく分からなくなっています。白の王者である安納サオリは相手の技を全て受けきってから倒すと云う「猪木イズム」を体現していて「名勝負製造機」となっていて良いし、挑戦者も順番待ち状態なのですけれど、肝心の赤いベルトが盛り上がっていません。王者の舞華は頑張っているのに、誰も挑戦してこなくて、舞華が自分で指名している状況(次の挑戦者はユニットが同じジーナ)なので、何とかなりませんかねえ。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:09| KINASAI | 更新情報をチェックする