ポール・マッカートニーが1986年にリリースした(サントラ盤「GIVE MY REGARDS TO BROAD STREET」も含めて)、6作目のスタジオ・ソロ・アルバム「PRESS TO PLAY」からは、先行シングル「PRESS」、英国での第2弾シングル「PRETTY LITTLE HEAD」、米国での第2弾シングル「STRANGLEHOLD」ときて、1986年12月1日に英国(MPL/パーロフォン)で、翌1987年1月17日に米国(MPL/キャピトル)で、第3弾シングルとして「ONLY LOVE REMAINS / TOUGH ON A TIGHTROPE」がリリースされています。日本では、此のシングルは発売されていません。アルバム「PRESS TO PLAY」からのシングルは、英米合わせて4作も出ていて、ソノ多くがアルバムとは別ミックスになっています。しかも「PRESS」の様に7インチ盤と10インチ盤と12インチ盤で出ていて、初版と第2版では内容も異なっているものも多いのです。第3弾シングルである「ONLY LOVE REMAINS」も、ソノ例に則ったものとなりました。
まずはA面の「ONLY LOVE REMAINS」ですが、7インチ盤も12インチ盤もジム・ボイヤーによるリミックス・ヴァージョンが収録されていて、シンセサイザーやパーカッション、そしてサックスが加えられた「別ヴァージョン」になっています。此のサックス入りのシングル・ヴァージョンは未CD化ですが、例によって2枚組千円ブートレグ「PRESS TO PLAY & MORE」には収録されていて、アルバム「PRESS TO PLAY」にはシングル・ヴァージョンやリミックス・ヴァージョンが多いので、まとめて聴けるのは便利です。「ONLY LOVE REMAINS」にはミュージック・ヴィデオもあって、内容はポールとリンダの二人がクローズアップされた映像から、引きになると広大なスタジオでオーケストラ(トニー・ヴィスコンティ編曲)も演奏していると分かるもので、シングル・ヴァージョンと同じ音源なのでサックス奏者も登場する「無駄にお金をかけている」MVです。
前にも書きましたが、此の曲には別ヴァージョンのスタジオ・ライヴ映像もあって、NHK BSで何度も放送されている「MUST BE UK TV」で観る事が出来ます。同じ回では、ジョン・レノンの生前最後のライヴ映像である「SLIPPIN' AND SLIDIN'」と「IMAGINE」も観る事が出来ます。此の楽曲はポールの単独作で、英国での前作シングル・カット曲「PRETTY LITTLE HEAD」が全英76位と大爆死したのに比べると全英34位で、まあまあ持ち直しています。しかしながら、コレにもカラクリがあって、英国盤の初版にはアノ「第5.75期ウイングス」による特大ヒット曲であるシングル「MULL OF KINTYRE(夢の旅人)」がオマケで付いていたのです。楽曲はポールらしい甘過ぎるリンダへ捧げたラヴ・バラードで、個人的には此の路線も嫌いではありませんが、ポールのアルバムには大抵入っているラヴ・バラードなので、一般的には些か食傷気味だったでしょう。
ポールとエリック・スチュワートの共作曲のひとつである7インチ盤のB面「TOUGH ON A TIGHTROPE」は、アルバムCD(アナログLP未収録)と同じ「4分42秒」ですが、12インチ盤には「7分3秒」の長尺なジュリアン・メンデルソーンによるリミックス・ヴァージョンが収録されていて、リミックス・ヴァージョンは未CD化です。12インチ盤には更にポールの単独作である「TALK MORE TALK」も加わっているのですが、これまたアルバムは「5分17秒」なのに「5分56秒」になっていて、コレはポールとジョン・ジェイコブスによるリミックス・ヴァージョン(未CD化)になっています。こうしてアルバム「PRESS TO PLAY」からのシングルは別ヴァージョンやリミックス・ヴァージョンのてんこ盛り状態になっているのですけれど、コレはポールにアルバムに対する迷いがあったからとも考えられます。そもそもアルバム「PRESS TO PLAY」自体で、初版と第2版以降では「PRESS」が別ミックスになっていて、些かマニアを大事にし過ぎています。「THE 7‘’ SINGLES BOX」では44枚目で、英国盤のピクチャー・スリーヴで復刻されています。
(小島イコ)