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2024年05月04日

「ポールの道」#360「THE 7‘’ SINGLES BOX」#36「SAY SAY SAY / ODE TO A KOALA BEAR」

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1982年4月にリリースされたポール・マッカートニーの大傑作アルバム「TUG OF WAR」は、当初は2枚組で構想されておりましたが「何度目の反対か?」で1枚になりました。ソレで、ポールはアルバム「TUG OF WAR」には未収録となった楽曲に新録を加えてアルバム「PIPES OF PEACE」として1983年10月にリリースするのです。アルバム「TUG OF WAR」とアルバム「PIPES OF PEACE」で参加ミュージシャンが被っているのは、元々が同じセッションでレコーディングされた楽曲が多いからです。アルバム「PIPES OF PEACE」からは、先行シングルとしてポールとマイケル・ジャクソンとの共作共演曲「SAY SAY SAY」が1983年10月3日にMPL/パーロフォンからリリースされて、全英2位・全米6週連続首位!全米年間チャートで3位と大ヒットしています。リリースの順番だと、1982年10月にマイケル・ジャクソンのアルバム「THRILLER」から先行シングルとしてポールとマイケルの共演曲「THE GIRL IS MINE」(全米2位・全英8位)が出て、同年12月にソレを含むマイケルのアルバム「THRILLER」(全英首位!・全米通算37週首位!・7千万枚も売れた)が出て、翌1983年10月にポールとマイケルの共作共演シングル「SAY SAY SAY」とソレを含むポールのアルバム「PIPES OF PEACE」がリリースとなっています。

ところが、レコーディング順は逆で、まずはアルバム「TUG OF WAR」のセッションで1981年11月にロンドンのエアー・スタジオにマイケル・ジャクソンが「曲作りを教えて欲しい」とやって来て、ポールとマイケルが「SAY SAY SAY」と「THE MAN」を共作して共演していて、アルバム「TUG OF WAR」が2枚組から1枚に変更されたので、此の時の2曲は2年間お蔵入りとなりました。そして、ポールは其のレコーディングへの返礼として翌1982年4月にロスへ行って、クインシー・ジョーンズのプロデュースでマイケルが書いた「THE GIRL IS MINE」でデュエットして、そちらが先行シングルとして同年10月に、アルバム「THRILLER」が12月に、それぞれポールのシングルやアルバムよりも先にリリースされたのです。マイケルは1979年リリースの前作アルバム「OFF THE WALL」(そちらもクインシー・ジョーンズがプロデュース)で、ポールが元々は1974年に「ジャクソン5」用に書いて1978年のウイングス名義のアルバム「LONDON TOWN」に収録した「GIRLFRIEND」をカヴァーしていて、其の流れからポールのレコーディングに参加する事となったのでしょう。

お人好しのポールは、マイケルに曲作りを教えるだけではなく、版権ビジネスまで教えてしまい「レノン=マッカートニー」の版権をマイケルに買われてしまうのでした。ポールはマイケルとの共作共演曲を気に入っていて、もう1曲の「THE MAN」もシングル・カットを考えていたものの、余りにもマイケルのアルバム「THRILLER」が売れてしまったので、ソレに便乗したと思われたくなくてリリースを見送っておりますが、前述の通り「SAY SAY SAY」と「THE MAN」の方が「THE GIRL IS MINE」よりも先にレコーディングされています。「SAY SAY SAY」は12インチ・シングルもリリースされていて、元々が3分55秒ですが長尺なリミックス(5分40秒)とインストゥルメンタルが収録されていて、2015年にアルバム「PIPES OF PEACE」の「アーカイヴ・コレクション」をリリースした時には「2015リミックス(前記のインストゥルメンタルにボツになったポールとマイケルの歌を乗せたヴァージョン)」も制作して収録しています。「MTV」が全盛期を迎える時期で「MTV」の申し子とも云えるマイケルとの共演とあって、短編映画並みに予算をかけたと思われるミュージック・ヴィデオも制作しています。

その「MV」ではポール&リンダとマイケルが「インチキ薬売り」に扮していて、ミンストレル・ショーも披露する印象的なもので、アルバム表題曲でシングル・カットされる「PIPES OF PEACE」共々、金掛かっているなあ、と思える「MV」です。全米首位!は納得な「SAY SAY SAY」ですが、またしても「ポール単独名義ではない」全米首位曲となっております。個人的には「SAY SAY SAY」と「THE MAN」をそれ程には評価していなくて、シングル両面にでもしてアルバムには収録しなくとも良かったとさえ思っています。但し、云っておきたいのは、此の「SAY SAY SAY」はポールにとってはビートルズ解散後では「SILLY LOVE SONGS」に次ぐ歴代2位のヒット曲ですが、マイケルにとっては生涯最大のヒット曲なのです。故に、当時のアルバム「THRILLER」人気にポールが便乗したわけではありません。B面の「ODE TO A KOALA BEAR(コアラへの詩)」はアルバム未収録で、動物好きなポールらしい佳曲ですが、2015年のアルバム「PIPES OF PEACE」の「アーカイヴ・コレクション」で初CD化されるまでは此のシングルでしか聴けなかった曲です。「THE 7'' SINGLES BOX」には36枚目で、英国盤のピクチャー・スリーヴで復刻されています。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする