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2024年04月19日

「ポールの道」#345「THE 7‘’ SINGLES BOX」#21「MULL OF KINTYRE / GIRLS' SCHOOL」

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1975年9月から1976年10月までの1年以上にも及んだワールド・ツアーを大成功させたポール・マッカートニーが率いる「第5.5期ウイングス」ですが、1977年2月には早くもロンドンのアビイ・ロード・スタジオで「第5期ウイングス」として次作スタジオ・アルバム「LONDON TOWN」のレコーディングを開始しました。同年5月からは、ポールの思い付きで、ヴァージン諸島に浮かぶヨットでのレコーディングを敢行していて、ポールとしては休暇半分の心算だったそうです。ところが、昼は遊んで夜はレコーディングする予定が、一旦のめり込んだポールはレコーディングに没頭してしまいます。ポールはウイングスのバンマスであるだけではなく「MPL」の社長なのですから、モーレツ社長に他の平社員メンバーは振り回されていたのです。ワールド・ツアーが終わってからのウイングスでの立場を不安に思っていたリード・ギタリストのジミー・マカロックとドラマーのジョー・イングリッシュは、船上レコーディング後に帰英するとアルバム制作途中に脱退してしまい、遂に「第5期ウイングス」は崩壊して、再びポール&リンダとデニー・レインの3人だけの「第6期ウイングス」となってしまいました。

故に、アルバム「LONDON TOWN」は、ジミーとジョーがいた5人組での「第5期ウイングス」と、彼らが抜けてポール&リンダとデニー・レインの3人だけになった「第6期ウイングス」が混在した作品となっていて、しかもリンダが妊娠して産休となったので、実質的にはポールとデニー・レインの二人だけでレコーディングした楽曲も含んでいます。そんなゴタゴタもあって、アルバム「LONDON TOWN」は1977年2月から翌1978年1月までの1年間もの長期レコーディングとなっています。そこでポールは、まだアルバムのレコーディング中であった1977年11月11日(英国・パーロフォン)・同年11月14日(米国・キャピトル)・同年12月1日(日本・東芝EMI)に、先行シングル「MULL OF KINTYRE(夢の旅人) / GIRLS' SCHOOL(ガールズ・スクール)」をリリースしました。英国では両A面で、米国では「GIRLS' SCHOOL」がA面で、日本では「夢の旅人」がA面でした。両面共にアルバム未収録曲ですが、現在ではアルバム「LONDON TOWN」のボーナス・トラックなどで聴けます。しかし「GIRLS' SCHOOL」は、シングル・ヴァージョンとエディット・ヴァージョンが存在します。

「MULL OF KINTYRE」は、英国では200万枚以上も売れて6週連続首位!の特大ヒット曲となり、ポール自身がいたビートルズの「SHE LOVES YOU」が保持していた記録を抜きました。此の記録は、1984年にバンド・エイドの「DO THEY KNOW IT'S CHRISTMAS?」に抜かれるまで保持していて、まあ、そちらもポールが関わっているので、兎に角、ポールはスゴイわけですなあ。レコーディング・メンバーは、ポール・マッカートニー(ヴォーカル、アコースティック・ギター)、リンダ・マッカートニー(バッキング・ヴォーカル)、デニー・レイン(ギター、バッキング・ヴォーカル)、ジョー・イングリッシュ(ドラムス)の「第5.75期ウイングス」に、キャンベルタウン・パイプ・バンド (バグパイプ)、ジミー・マクギーシー(ドラム)が客演していて、ジミー・マカロックは不参加です。ポールのヴォーカルとギターや、バクパイプは野外でレコーディングされていて、作詞作曲はポールとデニー・レインの共作と云う事になっています。

しかしながら、ブートレグの「PIANO DEMO」を聴くと、1974年にポールがピアノの弾き語りで披露しているので、アルバム「LONDON TOWN」での5曲にも及ぶ「マッカートニー=レイン」と同様に、些か怪しいのです。ポールとしても、デニー・レインにまで脱退されたら困ったちゃんなのでクレジットしたんじゃないでしょうか。此の「MULL OF KINTYRE」と云う曲は、そんなに良い曲だとは思えないのですけれど、英国だと琴線に触れる名曲なんでしょうね。ところが米国では「GIRLS' SCHOOL」がA面扱いですし、後の「ALL THE BEST!」の米国盤からも「MULL OF KINTYRE」は外されていて、全米33位と余り売れていません。ソノ「GIRLS' SCHOOL」は、ポールが新聞のポルノ広告を見て書いたエッチなロックンロール・ナンバーで「ポール、やってんなあ」な曲です。船上レコーディングなので、ジミー・マカロックとジョー・イングリッシュもいた「第5期ウイングス」による演奏です。「THE 7‘’ SINGLES BOX」には21枚目で、英国盤のピクチャー・スリーヴで復刻されていますが、既にジャケットは3人だけの「第6期ウイングス」です。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする