nana.812.png

2024年04月15日

「ポールの道」#341「THE 7‘’ SINGLES BOX」#17「VENUS AND MARS / ROCK SHOW / MAGNETO AND TITANIUM MAN」



1975年5月にリリースしたポール・マッカートニーが率いるウイングスの4作目のアルバム「VENUS AND MARS」は大ヒットして、先行シングル「LISTEN TO WHAT THE MAN SAID(あの娘におせっかい)」と第2弾シングル「LETTING GO(ワインカラーの少女)」に続いて、1975年10月27日(米国・キャピトル)・11月28日(英国・パーロフォン)・12月20日(日本・東芝EMI)に、第3弾シングルとして「VENUS AND MARS / ROCK SHOW(ヴィーナス・アンド・マース/ロック・ショー) / MAGNETO AND TITANIUM MAN(磁石屋とチタン男)」をリリースしました。両面共に作詞作曲は「ポール&リンダ・マッカートニー」と云う事になっていて、どちらも1975年1月のニューオリンズでのレコーディング曲です。A面の「VENUS AND MARS / ROCK SHOW」はアルバム「VENUS AND MARS」の冒頭を飾ったメドレーで、B面の「MAGNETO AND TITANIUM MAN」はアルバム「VENUS AND MARS」のA面5曲目に収録されていました。

此の「VENUS AND MARS / ROCK SHOW / MAGNETO AND TITANIUM MAN」がシングル・カットされたので、アルバム「VENUS AND MARS」のA面曲は全てシングルになった事になります。第3弾シングルと云う事で、英国ではチャート入りしていませんが、ツアーを控えていた米国では12位まで上がるヒット曲となりました。A面の「VENUS AND MARS / ROCK SHOW」は、アルバムでは「6分52秒」あるのに、大胆に編集したシングル・ヴァージョンは3分以上短い「3分46秒」しかありません。コレで、アルバム「VENUS AND MARS」からのシングルA面は3曲共にアルバムとは異なる編集となりました。アコースティックな「VENUS AND MARS」から急転直下「ROCK SHOW」でハード・ロックに変貌する此のメドレーは、当初からライヴのオープニングを意識して作られていて、「ROCK SHOW」では歌詞に「レッド・ツェッペリン」の「ジミー・ペイジ」も登場します。ウイングス史上最も安定していた「第5期ウイングス」は、ハード・ロックだったのです。

レコーディング・メンバーは、ポール・マッカートニー(リード・ヴォーカル、ベースギター、エレクトリック・ギター、フィンガーシンバル、ピアノ、ハンドベル、メロトロン)、リンダ・マッカートニー(ピアノ、バッキング・ヴォーカル、ハンドベル、モーグ・シンセサイザー、オルガン)、デニー・レイン(モーグ・シンセサイザー、シタール、バッキング・ヴォーカル、エレクトリック・ギター、ハンドベル)、ジミー・マカロック(エレクトリック・ギター、12弦ギター、アコースティック・ギター、バッキング・ヴォーカル、ドラムス、ハンドベル、モーグ・シンセサイザー)、ジョー・イングリッシュ(ドラムス、バッキング・ヴォーカル、ハンドベル、パーカッション)の「第5期ウイングス」に、トニー・ドーシー(クラリネット)、アラン・トゥーサン(エレクトリック・ギター、ピアノ)、ケネス・ウィリアムズ(コンガ)が客演しています。

ポールがニューオリンズでレコーディングしたのは、アラン・トゥーサンと共演したかったからだと云われているので、アラン・トゥーサンのスタジオでレコーディングして客演もしてもらったのは嬉しかったでしょう。アルバム「VENUS AND MARS」は全13曲入りですが、最後の「CROSSROADS」はドラマ・テーマ曲のカヴァーでインストゥルメンタルだし、タイトル曲「VENUS AND MARS」はB面のアタマで繰り返されているし、デニー・レインが歌う「SPIRITS OF ANCIENT EGYPT」と、ジミー・マカロックとコリン・アレン作でジミーが歌う「MEDICINE JAR」も2曲連続であるので、ポールが歌っている曲は「VENUS AND MARS」と「ROCK SHOW」をバラしても9曲で、ソノ内7曲をシングル・カットしている事になります。故にシングルで聴けないポールが歌う曲は、「CALL ME BACK AGAIN」と「TREAT HER GENTLY / LONELY OLD PEOPLE」の2曲だけなんですよ。ソノ辺の事情で、ポールはシングルA面は別ミックスにしてファン・サービスしたのでしょう。

前2作シングルとは違って、ようやく両面共に「第5期ウイングス」での演奏で固めたシングルとなっていて、B面の「MAGNETO AND TITANIUM MAN」はマーベル・コミックスのキャラクターが登場するヘンチクリンな曲なのですが、コレがハマるとクセになる不思議な魅力があります。此の時期で注目すべきなのは、「第4期ウイングス」から加入したジミー・マカロックのリード・ギターです。二十歳そこそこの若手だったものの、ソノ腕前は確かなもので、しかもライヴでは自分が加入する前の楽曲も「ポールの意向」でそのまんまで弾いてくれるので、ポールにとっては「理想的なリード・ギタリスト」でした。ソノ辺が、ジョージ・ハリスンやヘンリー・マカロックとは違っていて、ポールは「自分の思い通りに弾いてくれるリード・ギタリスト」を遂に加入させたのでした。俺ならこう弾くとばかりの「ROCK SHOW」でのギンギンなギターを、ポールは待ち望んでいたのです。「THE 7‘’ SINGLES BOX」では17枚目で、ベルギー盤のピクチャー・スリーヴで復刻されています。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする