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2024年03月02日

「ポールの道」#300「KISSES ON THE BOTTOM」

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2012年2月6日に、ポール・マッカートニーは23作目となるスタジオ・アルバム「KISSES ON THE BOTTOM」を、ヒア・ミュージックからリリースしました。内容は、1「I'M GONNA SIT RIGHT DOWN AND WRITE MYSELF A LETTER(手紙でも書こう)」、2「HOME(WHEN SHADOWS FALL)」、3「IT'S ONLY A PAPER MOON」、4「MORE I CANNOT WITH YOU(もう望めない)」、5「THE GLORY OF LOVE」、6「WE THREE(MY ECHO, MY SHADOW AND ME)」、7「AC-CENT-TCHU-ATE THE POSITIVE」、8「MY VALENTINE」、9「ALWAYS」、10「MY VERY GOOD FRIEND THE MILKMAN」、11「BYE BYE BLACKBIRD」、12「GET YOURSELF ANOTHER FOOL」、13「THE INCH WORM」、14「ONLY OUR HEART」の、全14曲入りで、「デラックス・エディション」には、15「BABY'S REQUEST」、16「MY ONE AND AND ONLY LOVE」の2曲がボーナス・トラックとして収録されています。更に、同じセッションでの「THE CHRISTMAS SONG(CHESTNUTS ROASTING ON AN FIRE)」が、2012年12月3日にシングル「CHRISTMAS KISSES」に収録されています。

此の内、ポールのオリジナルは、本編では「MY VALENTINE」と「ONLY OUR HEART」の2曲のみで、他の12曲はジャズ・スタンダード曲のカヴァーです。ボーナス・トラックの「BABY'S REQUEST」は1979年リリースのアルバム「BACK TO THE EGG」収録曲のセルフ・カヴァーで、「MY ONE AND ONLY LOVE」はスタンダード曲のカヴァーです。プロデュースは名匠トミー・リピューマで、彼の推薦でダイアナ・クラールが音楽監督としてピアノとリズム・アレンジメントを担当していて、レコーディング・メンバーも彼女のツアー・バンドなどの人脈が起用されていて、ポールは2曲を書いただけで、編曲も丸投げして楽器も弾かずにヴォーカリストに専念しています。オリジナルの2曲の内、ポールが3人目の妻となったナンシー・シェベルへ捧げた「MY VALENTINE」にはエリック・クラプトンがギターで、最後の「ONLY OUR HEART」にはスティーヴィー・ワンダーが1982年リリースの名曲「EBONY AND IVORY」以来の共演でハーモニカで、それぞれ参加しています。選曲は基本的にはポールが行ったものの、中にはポールが知らなかった曲も含まれていて、正に「歌手・ポール・マッカートニー」で勝負したアルバムです。

リリース当時に聴いた時には、2011年リリースの前作「PAUL McCARTNEY'S OCEAN'S KINGDOM」はクラシック・アルバムで、此の2012年リリースの「KISSES ON THE BOTTOM」はジャズ系のカヴァー・アルバムだったので、「ポールも70歳近くなって、遂に落ち着いたか」と少し寂しい気分になったものですが、今、書きながら聴いてみると、コレはコレで、なかなか良い感じです。「MY VALENTINE」は其の後のライヴ・レパートリーに加えられているし、ボーナス・トラックで再演した「BABY'S REQUEST」は、既に1979年の時点でポールは此の路線もやっていたのだと再確認できました。ポールとしても、もっと早く此の路線でのアルバムを作りたかったものの、ロッド・スチュワートが同じ路線での「ザ・グレイト・アメリカン・ソングブック」シリーズをヒットさせていたので「マネしたと思われたくない」ので、機をうかがっていたのだそうです。満を持して発表したアルバムは、全英3位・全米5位(ジャズ・チャートでは首位!)と大ヒットとなり、グラミー賞も受賞したので、ポールはもう此の路線でゆくのか、と云う不安はあったのですが、次作アルバム「NEW」で杞憂に終わるのでした。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする