2009年9月9日リリースのビートルズのリマスターは、所謂ひとつのベスト盤にも影響しました。2010年10月18日には「THE BEATLES / 1962-1966」(「赤盤」)と「THE BEATLES / 1967-1970」(「青盤」)がリマスターされて、2011年9月2日には「1」がリマスターされて、それぞれデジパック仕様となったのです。今回は「赤盤」と「青盤」に関して、改めて書きます。「赤盤」と「青盤」は、1973年4月2日(米国)・4月19日(英国)にアナログ盤2枚組2セットでリリースされたのが最初で、ブートレグの「AΩ」対策として、公式盤では初めてリリースされたビートルズの「オールタイム・ベスト・アルバム」でした。かつては「ジョージ・ハリスン選曲」とか「アラン・クレイン選曲」とも云われていたものの、実際にはアラン・クレインの指示で、アップル・レコードのアメリカ地区責任者アラン・ステックラーが選曲しました。「赤盤」と「青盤」は、其の後3回CD化されています。
最初にCD化されたのは1993年9月20日で、1987年から1988年にかけてのビートルズの初CD化が終わってから時間を置いてからリリースされています。コレはですね、当初は1991年にリリースされる予定が、延期されたのです。ソレが、単に初CD化音源を「赤盤」全26曲と「青盤」全28曲に並べた音源とはなっておりません。「赤盤」に収録された「ALL MY LOVING」と「CAN'T BUY ME LOVE」と「A HARD DAY'S NIGHT」と「AND I LOVE HER」と「EIGHT DAYS A WEEK」の5曲は初ステレオCD化で、アナログ盤ではステレオだった「PLEASE PLEASE ME」と「FROM ME TO YOU」と、疑似ステレオだった「LOVE ME DO」と「SHE LOVES YOU」はモノラルになっています。米国編集のアナログ盤では「HELP!」の前に「なんちゃってジェームズ・ボンドのテーマ」が入っていたりとキャピトル音源を使用していましたが、CDでは全世界統一規格になっています。
アナログ盤では、英国でEMI音源を米国でキャピトル音源を使用していたアルバム「HELP!」とアルバム「RUBBER SOUL」の収録曲は、1987年のサー・ジョージ・マーティンによるステレオ・リミックス音源に替えられています。初CD化の「青盤」も、アナログでは英国はEMI音源で米国はキャピトル音源を使用していた(例えば「I AM THE WALRUS」のイントロが違っている)のを、全世界統一規格としています。CD化では「A DAY IN THE LIFE」のイントロに歓声が被っていないヴァージョン(1988年のジョン・レノンのドキュメンタリー映画のサントラ盤「IMAGINE」が初出)や、「BACK IN THE U.S.S.R.」のアウトロで「DEAR PRUDENCE」のイントロが被っていないヴァージョンに替えられています。
2010年10月18日リリースのリマスター盤は、「赤盤」も「青盤」も音源的には「リマスター」なので、基本的には1993年の初CD化音源と変わらないものの、2009年リマスター音源を使用しているので、ノイズ除去などは徹底していて、デジパック仕様なのでオリジナル・アルバムのリマスターと並べても違和感がありません。17年ぶりのCD化でしたが、アナログ時代からのファンも2010年リマスターの「赤盤」と「青盤」には文句はないでしょう。輸入盤では、2セットを収納したオーバーカヴァー付きもあります。但し、1993年盤も2010年盤もアナログ時代と同じ曲数なので「赤盤は1枚で出せただろう」とか「青盤も1枚では入らないけれど余裕があるのだから、ボーナス・トラックを入れろ」と云った苦情はありました。それでも「ジョージが選曲した」と云うウソがまかり通っていた為に、内容を変えるのはマズイとされていたのです。
そして、記憶に新しい2023年11月10日リリースのリミックス盤となったのですが、こちらはジャイルズ・マーティンが大胆にリミックスした音源となっていて、「赤盤」には12曲、「青盤」には9曲が加えられて、「ビートルズ最後の新曲」である「NOW AND THEN」も「青盤」に入っています。音源は、シングル曲の一部は2015年の「1+」用のリミックス音源が、アルバム「REVOLVER」と、アルバム「SGT. PEPPER’S LONELY HEARTS CLUB BAND」と、アルバム「THE BEATLES(ホワイト・アルバム)」と、アルバム「ABBEY ROAD」と、アルバム「LET IT BE」からの楽曲は、2017年から2022年にかけてリリースされたリミックス音源が、その他の楽曲は新たにリミックスした音源が収録されていて、モノラル・マスターしか残っていない「LOVE ME DO」と「SHE LOVES YOU」もデミックスによって真正ステレオ・リミックスになっています。CDでの曲順は、追加された楽曲をそれぞれ年代順に間に挟んでいます。
中には「I AM THE WALRUS」の様に、従来の音源では聴こえなかったSEが大きくされていて違和感があり捲りのリミックスもあって、オールド・ファンからは不満の声が出ていますし、そもそも2017年以降のジャイルズ・マーティンとサム・オケルによるリミックス音源を良しとはしない意見もあります。個人的にはリミックスはアリですけれど、ソレはオリジナルのリマスター音源がある事が大前提です。出荷量がビートルズのアルバムとしては少なかったと云われている「2010年リマスター盤」よりも「2023年リミックス盤」は新曲「NOW AND THEN」効果もあって圧倒的に売れているので、2023年盤が今後は決定盤になるのか、との疑問はあります。2023年リミックス盤は、それぞれアナログ3枚組も出ていますが、そちらは本編2枚はオリジナル通りで、新たに追加収録された曲を3枚目にしていて、些か首を傾げる内容です。
(小島イコ)
【関連する記事】