2009年9月9日には、14作16枚組の箱「THE BEATLES STEREO BOX SET」と其のバラ売りと同時に、11作13枚組の箱「THE BEATLES IN MONO」もアップルから限定リリースされました。内容は、1963年リリースのアルバム「PLEASE PLEASE ME」とアルバム「WITH THE BEATLES」と、1964年リリースのアルバム「A HARD DAY'S NIGHT」とアルバム「BEATLES FOR SALE」と、1965年リリースのアルバム「HELP!」とアルバム「RUBBER SOUL」と、1966年リリースのアルバム「REVOLVER」と、1967年リリースのアルバム「SGT. PEPPER’S LONELY HEARTS CLUB BAND」と米国編集盤の「MAGICAL MYSTERY TOUR」と、1968年リリースの2枚組アルバム「THE BEATLES(ホワイト・アルバム)」の10作11枚のモノラル・ミックス盤に、此の時に新たに編集された2枚組の「MONO MASTERS」を加えた11作13枚組です。
ステレオ普及盤ではサー・ジョージ・マーティンによる1987年リミックス音源になったアルバム「HELP!」とアルバム「RUBBER SOUL」は、こちらのモノラル・ミックス盤に「オリジナル・ステレオ・ミックス」が、それぞれ「2 in 1」で収録されていて、ステレオの箱とモノラルの箱を買えば、英国盤でのミックス違いは全て入手出来ます。それぞれのアルバムは「日本製の紙ジャケ」仕様で、ソレは輸入盤でも同じです。つまりは全世界統一規格でモノラル盤に関しては「日本製の紙ジャケ」が採用されています。ビートルズは1963年のデビュー・アルバム「PLEASE PLEASE ME」から1968年の2枚組アルバム「THE BEATLES(ホワイト・アルバム)」までの10作11枚はモノラル・ミックスとステレオ・ミックスの両方をリリースしていますが、ビートルズやサー・ジョージ・マーティンが力を入れていたのはモノラル・ミックスだと云われています。ビートルズはモノラル・ミックスのみに立ち会って、ステレオ・ミックスはマーティンたちに丸投げしていて、当のマーティンも「ステレオ・ミックスは、私ではない誰かが勝手にやっていた音源もある」などとも云っていました。
故に、ビートルズが意図したアルバムを聴きたい場合は、此の「THE BEATLES IN MONO」で10作11枚と2枚組の「MONO MASTERS」の合計11作13枚を入手して、1969年リリースのアルバム「ABBEY ROAD」と1970年リリースのアルバム「LET IT BE」はバラ売りで入手して、それでもステレオ・ミックスしかない「THE BALLAD OF JOHN AND YOKO / OLD BROWN SHOE」と「LET IT BE」に関してはステレオ盤の「PAST MASTERS」もしくは「青盤」を買えば、全てが揃います。アルバム「YELLOW SUBMARINE」に関しては、アナログでモノラル盤も出ていますが、ソレはステレオをモノラルにしただけなので、ラインナップから外されています。そもそも、アルバム「YELLOW SUBMARINE」はサントラ盤でB面はサー・ジョージ・マーティンによるインストゥルメンタル曲なので、ソレでしか聴けないビートルズの楽曲は4曲しかなかったのです。
ソレが、此の「THE BEATLES IN MONO」の「MONO MASTERS」には「ONLY A NORTHERN SONG」と「ALL TOGETHER NOW」と「HEY BULLDOG」と「IT'S ALL TOO MUCH」の4曲全てと、当時は5曲入りのEPで出す予定があった「ACROSS THE UNIVERSE」の真正モノラル・ミックスが収録されています。其の「MONO MASTERS」は、ステレオ盤の「PAST MASTERS」同様にシングル盤のみだった楽曲などを集めたものですが、ビートルズはシングル盤に関しては1969年の「GET BACK / DON'T LET ME DOWN」からステレオとモノラルを採用したので(米国はステレオのみ)、つまりは1968年の「HEY JUDE / REVOLUTION」までのシングル曲は、基本的には「モノラルのみのリリース」だったのです。故に、CD化されていない1966年リリースのベスト盤「A COLLECTION OF BEATLES OLDIES」でのステレオ・ミックスは、当時は貴重でした。
と云うわけで、此の「THE BEATLES IN MONO」こそが、リリース当時にビートルズとサー・ジョージ・マーティンが意図していた音源だと云えます。「CDでは、アナログ盤のモノラル・ミックスを再現出来ていない」との意見もありますが、美しい「日本製の紙ジャケ」だけでも嬉しくなる限定盤ですし、米国編集盤の様に「ステレオをモノラルにしただけのインチキ・ミックス」とか「疑似ステレオ・ミックス」とは違って、真正モノラル・ミックスですので、普及盤となったステレオ盤と聴き比べをしたりして、大いに楽しめる箱です。ココは前述した様なセコイ買い方ではなく、箱を二つドーンと買うのが宜しいでしょう。現在進行中のジャイルズ・マーティンとサム・オケルによる50周年リミックス音源も、モノラル・ミックスを基準にしてステレオ・リミックスしているそうです。
(小島イコ)