「ポールの道」＃２８９「THE BEATLES’ CD AGAIN」

　　

１９８７年から１９８８年にかけて、ビートルズのアルバムが初CD化されて、世の中をレコードからCDに変貌させてしまった事は以前に書きました。しかしながら、ビートルズのCDは其の後２０年以上も其の侭で、２００９年９月９日になって、ステレオ・ミックスのバラ売りとBOXと、モノラル・ミックスの限定盤のBOXがアップルからリリースされたのです。此のリマスター盤のリリースはひとつの事件で「タモリ俱楽部」でも聴き比べの特集をしたりする社会現象ともなったのですが、新たなるファンは当然ながら２００９年リマスター音源が基準になったし、オールド・ファンも圧倒的に音圧も上がって良い音になったリマスター音源に飛びつき、最初のCDから買い換える事となったのです。

２０２４年の現在、ビートルズのオリジナル・アルバムのCDは、最初にCD化された１３作１４枚に「PAST MASTERS」２枚を加えた全１６枚と、２００９年リマスターCDのステレオ盤１３作１４枚に「PAST MASTERS」２枚を加えた全１６枚と、２００９年リマスターのモノラル・ミックス全１０作１１枚に「MONO MASTERS」２枚の全１３枚があって、２０１７年から始まった５０周年記念として、ジャイルズ・マーティンとサム・オケルがリミックスした、アルバム「SGT. PEPPER’S LONELY HEARTS CLUB BAND」と、アルバム「THE BEATLES（ホワイト・アルバム）」と、アルバム「ABBEY ROAD」と、アルバム「LET IT BE」と、遡ってアルバム「REVOLVER」に、記憶も新しい昨年（２０２３年）の「赤盤」と「青盤」の新装盤があります。

色々と帯を変えたり紙ジャケにしたりと版を重ねておりますが、基本的には「初CD化音源（1987-1988）」と「リマスターCD音源（ステレオ＆モノラル）（2009）」と「５０周年リミックス音源（2017-2023）」の４種に、「THE CAPITOL ALBUMS 音源（2004-2006）」しかありません。其の中でも基本となるのは２００９年リマスターであって、現在ジャイルズ・マーティンとサム・オケルが行っているリミックス音源はまだ未完でもあり、しかも「リミックス」に関しては否定的なオールド・ファンもいる状況です。現時点では２００９年リマスター音源（ステレオ＆モノラル）が決定盤となっていますが、５０周年リミックス音源もバラ売りしているので、米国水増し編集盤を除けば、同じアルバムが４種類市場に出回っている状態です。

「ポールの道」も２００９年リマスター音源のところまで進んだので、ここで一寸初CD化音源を思い出して頂きたいと思います。と申しますのも、あたくしも２００９年リマスター音源に買い換えてしまったので、それから１５年近く旧盤CDを聴いてこなかったのです。特に５０周年リミックス音源が出てからは、今更旧盤CDでもないだろう、と思っていました。ソレがですね、パチモンの３枚組「THE BEATLES 1962-1970」を３３０円で購入して聴いてみて「アレレ、コレもアリじゃん」と思ったのですよ。ソレはハーフオフィシャル盤で、一見して「赤盤」と「青盤」に収録された２枚組２セット全５４曲を３枚組にしただけの様なパチモンなのです。

おそらく初CD化音源からデジタル・コピーしていて、初期の曲がモノラル・ミックスなので、１９９３年の「赤盤」と「青盤」の初CD化よりも前に編集されているのです。ソレがですね、例えば「A DAY IN THE LIFE」はイントロに歓声が被った侭なのに、エンディングに「SGT. PEPPER’S INNER GROOVE」が入っていたり、「GET BACK」と「LET IT BE」が「シングル・ヴァージョン」ではなく「アルバム・ヴァージョン」だったりして、明らかに公式盤の「赤盤」と「青盤」とは違っています。当時は確か１９７７年縛りだったのが、１９６７年縛りになっちゃったので、法改正時には、慌てて旧盤CD商品を投げ売りしたりして、結構な量のパチモンが出回りました。あたくしも、アルバム「HEY JUDE」やアルバム「ABBEY ROAD」などの「絶滅シリーズ」盤を持っています。

現在では著作権の関係で１９６７年までの音源しかパチモンに出来ないので、３枚組全６０曲入りの「THE BEATLES BEST HIT 60」と云う箱も安値で買ったのですけれど、そしたらそっちは初期の曲の一部がステレオ・ミックス（例えば「PLEASE PLEASE ME」でジョンが歌詞を間違えているし、B面だった「ASK ME WHY」も見事に泣き別れしたステレオ音源）で、つまりは旧盤CD音源とは明らかに違うのです。中には「SHE LOVES YOU」みたいに劣悪な音質の曲もあるし、旧盤CDではステレオの「THIS BOY」や「WE CAN WORK IT OUT」や「TAXMAN」までもがモノラル（ステレオをモノラルにしているだけのインチキ音源も含む）だったり、コレはどう云う音源をコピーしているのか分からないのです。案外、シングルやEPのモノラルCD音源や、アナログ盤の盤起こしも入れているのかもしれませんが、音質が滅茶苦茶で、流石はパチモンです。

ハーフオフィシャル盤とは云え、ブートレグと違わない様なもんで、なかなか侮れないのがパチモンなのです。思えば今でも増え続けるビートルズのブートレグは公式盤の百倍位は保有しているし、パチモンもブートレグ感覚で楽しめるわけですなあ。でもですね、そこまで来たところで「一体、自分は、何をしているんだろう？」と思いましてですね、結局は、再び２００９年リマスター音源と聴き比べしようと、中古で公式盤の旧盤CDを全て買い直しました。そうしたら、旧盤CDは二束三文で売られていて、１枚３００円位でゲット出来ちゃったんですよ。そうなるとですね、ジャケットの文字の色が違う「RUBBER SOUL」の米国盤（中味は英国盤と同じ方）なんかも、ついでに買ってみようかとなりますわなあ。実は、基本は２００９年リマスター音源ではなく、旧盤CDであって、まあ、ソレを云い出すとアナログ盤が最強になっちゃうんですけれどね。

（小島イコ）