2009年6月16日に、ジョージ・ハリスンの3作目のベスト盤「LET IT ROLL SONGS BY GEORGE HARRISON」が、ダーク・ホース/アップルからリリースされました。それまで、ジョージのベスト盤は、1976年リリースの「THE BEST OF GEORGE HARRISON」全13曲入りと、1989年リリースの「BEST OF DARK HORSE 1976-1989」全15曲入りがありました。しかしながら「THE BEST OF GEORGE HARRISON」は、レコード会社が勝手にアナログ盤のA面7曲はビートルズ時代の楽曲で、B面6曲をソロの楽曲にしていました。「BEST OF DARK HORSE 1976-1989」はジョージ自身の選曲で新曲が3曲収録されていますが、其の名の通り「ダーク・ホース」時代の楽曲だけで構成されていました。対してジョージの死後に登場した此の「LET IT ROLL SONGS BY GEORGE HARRISON」は、ジョージの妻のオリヴィアさんが選曲した事になっていて、ソロ時代の楽曲から初めての「オールタイム・ベスト」が売りです。
内容は、1「GOT MY MIND SET ON YOU」(1987)、2「GIVE ME LOVE(GIVE ME PEACE ON EARTH)」(1973)、3「BALLAD OF SIR FRANKIE CRISP(LET IT ROLL)」(1970)、4「MY SWEET LORD」(1970)、5「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS(LIVE)」(1968, 1971, 1972)、6「ALL THINGS MUST PASS」(1970)、7「ANY ROAD」(2002)、8「THIS IS LOVE」(1987)、9「ALL THOSE YEARS AGO(過ぎ去りし日々)」(1981)、10「MARWA BLUES」(2002)、11「WHAT IS LIFE(美しき人生)」(1970)、12「RISING SUN(悠久の輝き)」(2002)、13「WHEN WE WAS FAB」(1987)、14「SOMETHING(LIVE)」(1969, 1971, 1972)、15「BLOW AWAY」(1979)、16「CHEER DOWN」(1989)、17「HERE COMES THE SUN(LIVE)」(1969, 1971, 1972)、18「I DON'T WANT TO DO IT」(1985)、19「ISN'T IT A PITTY」(1970)の、全19曲入りです。此のベスト盤用に、ジャイルズ・マーティンがデジタル・リマスターしています。
選曲を見ると、1970年リリースのアルバム「ALL THINGS MUST PASS」から5曲、1971年のライヴで1972年リリースのライヴ盤「THE COCERT FOR BANGLADESH」から3曲、1973年リリースのアルバム「LIVING IN THE MATERIAL WORLD」から1曲、1979年リリースのアルバム「GEORGE HARRISON(慈愛の輝き)」から1曲、1981年リリースのアルバム「SOMEWHERE IN ENGLAND(想いは果てなく〜母なるイングランド)」から1曲、1985年のサントラ盤から1曲、1987年リリースのアルバム「CLOUD NINE」から3曲、1989年のシングルから1曲、2002年リリースのアルバム「BRAINWASHED」から3曲となっていて、かなり偏りがあって、1974年リリースのアルバム「DARK HORSE」と、1975年リリースのアルバム「EXTRA TEXTURE(ジョージ・ハリスン帝国)」と、1976年リリースのアルバム「THIRTY THREE & 1/3」と、1982年リリースのアルバム「GONE TROPPO」の4作からは1曲も選ばれていません。アルバム「DARK HORSE」に収録の「FAR EAST MAN」の様な「隠れた名曲」は、一切、無視です。リンゴ・スターのベスト盤はCD1枚で充分かもしれませんが、だったらジョージはCD2枚組でも良いでしょう。
更に、1971年に行われて1972年リリースのライヴ盤「THE COCERT FOR BANGLADESH」からは、ビートルズ時代の「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」と「SOMETHING」と「HERE COMES THE SUN」の再演が3曲も選ばれています。コレだと昔の「THE BEST OF GEORGE HARRISON」同様に、ビートルズ・ナンバーも加えないとジョージのベスト盤は作れないと云っている様で、些か困ったちゃんなのです。選曲から漏れた楽曲には「BANGLADESH」と「DING DONG」と「DARK HORSE」と「YOU(二人はアイ・ラヴ・ユー)」と「THIS GUITER(CAN'T KEEP FROM CRYING)(ギターは泣いている)」と「THIS SONG」と「CRACKERBOX PALACE(人生の夜明け)」と「LOVE COMES TO EVERYONE(愛はすべての人に)」と「FASTER」と「TEARDROPS」と「WAKE UP MY LOVE(愛に気づいて)」と「DREAM AWAY」と、シングル曲だけでも12曲もあります。廃盤になった「BEST OF DARK HORSE 1976-1989」での新曲からは「CHEER DOWN」のみの収録で2曲が外されていて、公式盤ではシングルと其のベスト盤でしか聴けません。コレって、本当にオリヴィアさんが選曲したのでしょうか。
(小島イコ)