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2024年01月29日

「ポールの道」#267「BRAINWASHED」

ブレインウォッシュド


ジョージ・ハリスンは闘病生活の末に、2001年11月29日に58歳で亡くなりました。そして、ジョージが生前にレコーディングを進めていた音源に、盟友・ジェフ・リンとジョージの息子のダーニ・ハリスンがオーバーダビングをして完成させたジョージの10作目で遺作のスタジオ・アルバム「BRAINWASHED」を、2002年11月18日にダークホース/パーロフォン(英国)・ダークホース/キャピトル(米国)からリリースしました。死後の約1年後にリリースされたのは、ジョージと共同プロデュースしているジェフ・リンとダーニが丁寧に仕上げたからでしょう。

レコーディング・メンバーは、ジョージ・ハリスン(ヴォーカル、ギター、ウクレレ、ベース、キーボード、フィンガー・シンバル)、ジェフ・リン(ギター、ベース、キーボード、バッキング・ヴォーカル)、ダーニ・ハリスン(ギター、ウーリッツァー、バッキング・ヴォーカル)、マーク・フラガナン(アコースティック・ギター)、ジョー・ブラウン(アコースティック・ギター)、ハービー・フラワー(ベース、チューバ)、マイク・モーラン(キーボード)、マーク・マン(キーボード、ストリングス・アレンジ)、ジュールズ・ホーランド(ピアノ)、ジョン・ロード(ピアノ)、ジム・ケルトナー(ドラムス)、レイ・クーパー(ドラムス、パーカッション)、バイクラム・ゴーシュ(タブラ)、ジェーン・リスター(ハープ)、サム・ブラウン(バッキング・ヴォーカル)、と云った面々です。

内容は、1「ANY ROAD」、2「P2 VATICAN BLUES(LAST SATURDAY NIGHT)」、3「PISCES FISH(魚座)」、4「LOOKING FOR MY LIFE」、5「RISING SUN(悠久の輝き)」、6「MARWA BLUES」、7「STUCK INSIDE A CLOUD(あの空の彼方へ)」、8「RUN SO FAR」、9「NEVER GET OVER YOU」、10「BETWEEN THE DEVIL AND THE DEEP BLUE SEA(絶体絶命)」、11「ROCKING CHAIR IN HAWAII」、12「BRAINWASHED」の、全12曲入りです。「BETWEEN THE DEVIL AND THE DEEP BLUE SEA」がキャブ・キャロウェイのカヴァーで、他の11曲はジョージのオリジナルです。

前作アルバムで大ヒットした1987年リリースの「CLOUD NINE」以後の、1988年から亡くなる2001年まで10年以上もの期間にジョージがレコーディングした音源に、ジェフ・リンとダーニが手を加えたと云われていますが、全体的にしっかりとしたバンド・サウンドになっていて、ジョージがかなり完成品に近い段階まで関わっていたと思える出来栄えなので、コレは「遺作」と云ってもよろしいでしょう。其の辺がジョンの遺稿集「MILK AND HONEY」とは違っていて、まあ、アレはアレでリハーサル音源をそのまんま出してしまった事に意味があるのですけれどね。

こちらも、ジョージによるアコースティック・ギターやウクレレでの弾き語りデモ音源が元になっているらしく、ジム・ケルトナーによるドラムなどもオーバーダビングしているそうなのですが、人工的にはならず、ソレを感じさせない瑞々しいサウンドになっています。死を覚悟してレコーディングしていたとは思えない「ジョージ節」全開の楽曲は良作ばかりですし、やはり最後のタイトル曲「BRAINWASHED」で、最後の最後でインド音楽が出て来るのもジョージらしいところです。英国・29位、米国・18位と云うチャート成績以上の意義がある作品集ですし、遺作が理由だとしてもグラミー賞に3部門でノミネートされて、「MARWA BLUES」はベスト・ポップ・インストゥルメンタル・パフォーマンス賞を受賞しています。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする