色々とビートルズのカヴァー集を取り上げていますが、矢鱈と数が多いので、今回は6作を一気に紹介します。まず、1999年と2001年に「castle」からリリースされた「ALL YOU NEED IS COVERS, THE SONGS OF THE BEATLES」と「HELP ! THE SONGS OF THE BEATLES VOLUME 2」です。此のメーカーは他にもカヴァー集をリリースしているのですが、流石にビートルズはヴォリュームがあって、「ALL YOU NEED IS COVERS, THE SONGS OF THE BEATLES」は2枚組で全50曲入りで、「HELP ! THE SONGS OF THE BEATLES VOLUME 2」も2枚組で全43曲入りで、2セットで全93曲ものビートルズ・カヴァーが聴けます。曲名とミュージシャンを列記するのは省略させて頂きますが、ペトゥラ・クラークによる「PLEASE PLEASE ME」のフランス語カヴァーから始まり、トミー・クイックリーに提供したポール・マッカートニー作の「TIP OF MY TONGUE」や、シラ・ブラックにポールが書いた「STEP INSIDE LOVE」のカヴァーが2ヴァージョンあったり、トッド・ラングレンによる「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」と「RAIN」と云った有名どころも押さえていて、ペトゥラ・クラークはピーター&ゴードンにポールが書いた「NOBODY I KNOW」のフランス語カヴァーも入っています。
珍しいところでは、グリン・ジョンズによる「I'LL FOLLOW THE SUN」も収録されていて、コレはですね、アノ1969年の「THE GET BACK SESSIONS」で有名なグリン・ジョンズが、1965年に歌手としてカヴァーしたヴァージョンです。他にも有名曲ばかりではなく、「ALL YOU NEED IS COVERS」には「THERE'S A PLACE」や「DON'T BOTHER ME」や「TELL ME WHY」や「BABY’S IN BLACK」や「I DON'T WANT TO SPOIL THE PARTY」や「I WANT TO TELL YOU」や「HEY BULLDOG」や「OCTOPUS’S GARDEN」などが入っていて、ヤング・ブラッドによる「THE CONTINUING STORY OF BUNGALOW BILL」も貴重でしょう。第2弾は曲数も減ってソロの曲も加えていますが、「THINGS WE SAID TODAY」や「DEAR PRUDENCE」や「ROCKY RACOON」や「IT'S ALL TOO MUCH」や「MAXWELL'S SILVER HAMMER」などの、他では聴けない珍しい曲も丁寧に拾っています。こっちでもヤング・ブラッドによる「I WILL」が聴けますし、ジョージの曲のカヴァーと云えば「SOMETHING」が定番で勿論両方に2ヴァージョンが入っていますが、「DON'T BOTHER ME」や「I WANT TO TELL YOU」や「IT'S ALL TOO MUCH」などは、なかなか聴けません。正統派のカヴァーが多いので、2セットで全93曲を浴びる様に聴けます。
さて、1990年代の中頃に、4作が「Exotica Records」からリリースされた「THE EXOTIC BEATLES」にも触れておきます。コレはですね、古今東西の珍品カヴァーをかき集めたシリーズで、PART ONEには大瀧師匠がプロデュースした金沢明子さんの「イエロー・サブマリン音頭」と、東京ビートルズの「キャント・バイ・ミー・ラヴ」のサワリが、PART TWOにはちわきまゆみさんのアカペラ・カヴァーの「A HARD DAY'S NIGHT」が収録されているのですが、他も様々な形式でのカヴァーが集められていて、企画としては面白いシリーズではあります。が、しかし、コレを聴くと「イエロー・サブマリン音頭」が如何に真面目にふざけて作り込まれていたのかが、逆説的に証明されているのです。ズバリ云って、コレは4枚どころか1枚を聴き通す事すら困難なカヴァー集で、演奏も歌も下手っぴなヴァージョンが続いていてですね、困ったちゃんなのです。「イエロー・サブマリン音頭」が出た時には、熱狂的なビートルズ・ファンの方々から「神聖なるビートルズに対する冒涜だ!」などと云う苦言もあって、大瀧師匠が「ポール・マッカートニーは、聴いて称賛してくれた」と反論して、クリスマス・レコードでビートルズ自身が「YESTERDAY」を滅茶苦茶に歌う音源をかけていたのですけれど、「イエロー・サブマリン音頭」がマトモに聴こえるコレを聴いたら、もはやそんな論議は全くの無意味です。
(小島イコ)