1980年代のリンゴ・スターは、アルバムを出しても売れず、アルコール依存症とドラッグ依存症で奥さんのバーバラ・バックと一緒に更生施設に入ったりして、所謂ひとつの「リンゴ暗黒時代」を送っておりました。義弟でもあるジョー・ウォルシュがプロデュースした1983年のアルバム「OLD WAVE」に至っては、英国や米国ではリリースされておりません。そんなリンゴですが、ポール・マッカートニーのアルバムやジョージ・ハリスンのアルバムでは元気な姿も披露していて、1989年にはビートルズ以来24年ぶりのツアーを行い、来日公演も実現させました。ソレが、ライヴ・アルバムとして1990年10月8日に、EMI(英国)ライコディスク(米国)からリリースされた「RINGO STARR AND HIS ALL-STARR BAND」です。此のライヴは、ソノ名の通り、リンゴが主役ですが、バックを名うてのミュージシャンで固めて、それぞれのヒット曲も披露するパッケージ・ショーでして、メンバーを入れ替えて2023年の現在でも行われています。ビートルズ時代のライヴでは1曲しか歌っていなかったので、此の「オールスター・バンド」は、身の丈に合った発明です。
1989年の第1期オールスター・バンドのメンバーは、リンゴ・スター(ヴォーカル、ドラムス)の他に、DR.ジョン(キーボード、ヴォーカル)、ビリー・プレストン(キーボード、ヴォーカル)、リック・ダンコ(ベース、ヴォーカル)、ジョー・ウォルシュ(ギター、パーカッション、ヴォーカル)、ニルス・ロフグレン(ギター、アコーディオン、ヴォーカル)、リヴォン・ヘルム(ドラムス、ハーモニカ、パーカッション、ヴォーカル)、ジム・ケルトナー(ドラムス)、クラレンス・クレモンズ(サックス)で、ビートルズとイーグルスとザ・バンドとEストリート・バンドが合体したスーパー・バンドでした。ライヴ盤の内容は、1「IT DON'T COME EASY」、2「THE NO-NO SONG」、3「IKO IKO」、4「THE WEIGHT」、5「SHINE SILENTLY」、6「HONEY DON'T」、7「YOU'RE SIXTEEN」、8「QUARTER TO THREE」、9「RAINING IN MY HEART」、10「WILL IT GO ROUND IN CIRCLES」、11「LIFE IN THE FAST LANE」、12「PHOTOGRAPH」の、全12曲入りです。ジム・ケルトナーは「トラヴェリング・ウィルベリーズ」でも準メンバーで、大忙しですなあ。
おそらく実際のライヴでは「YELLOW SUBMARINE」や「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」なども演奏していたのでしょうけれど、当時のリンゴは「みんなビートルズの事ばかり訊いて、ウンザリだ」とか公言していたので、敢えてアルバムから外して、辛うじて「HONEY DON'T」はカール・パーキンスのカヴァーだったので入れたのでしょう。リンゴが歌っているのは「IT DON'T COME EASY」と「THE NO-NO SONG」と「HONEY DON'T」と「YOU'RE SIXTEEN」と「PHOTOGRAPH」の5曲のみで、他の7曲は他のメンバーが歌っているのですが、DR.ジョンの「IKO IKO」(大瀧師匠の「ハンド・クラッピング・ルンバ」の元ネタ)や、ザ・バンドの「THE WEIGHT」や、イーグルスの「LIFE IN THE FAST LANE」や、ビリー・プレストンの「WILL IT GO ROUND IN CIRCLES」などの、懐メロながら大ヒット曲が連発されるショーはごきげんです。あたくしも1995年の第3期でのライヴに足を運んだのですが、お目当てはリンゴよりも、ビリー・プレストンやフェリックス・キャヴァリエやジョン・エントウィッスルだったと記憶しております。
(小島イコ)
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