ビートルズの初CD化が完了した1988年に、待ってましたとばかりに「THE SWINGIN' PIG RECORDS」からリリースされたブートレグ史上に遺る「ULTRA RARE TRAX」と、ソレを追う様に翌1989年から「Yellow Dog」からリリースされた「UNSURPASSED MASTERS」の2大タイトルが登場しました。両方共に、ソレまでは考えられなかった程の高音質ブートレグで、何者かがマスターテープをコピーしてブートレグに流出させたとしか考えられない音源集でした。1980年代に入ってから、ビートルズの音源をジョン・バレットが整理していたり、マーク・ルイソンが「レコーディング・セッション」などを書く為にビートルズの音源を全て聴いていたりしたので、そうした作業中にスタッフの誰かがコピーして流出させたのでしょう。結果的には「ULTRA RARE TRAX」は6作、「UNSURPASSED MASTERS」は7作が世に出てしまいました。「ULTRA RARE TRAX」の方は1作に10曲位しか収録されていませんが、コレが元祖なので「ブートレグの歴史を変えた名盤」です。それでは敬意を込めて、順を追って紹介してゆきます。
「ULTRA RARE TRAX」VOL.1は、1「I SAW HER STANDING THERE(TAKE 2)」、2「ONE AFTER 909(TAKE 2)」、3「SHE'S A WOMAN(TAKE 2)」、4「I'M LOOKING THROUGH YOU(TAKE 1)」、5「IF YOU’VE GOT TROUBLES」、6「HOW DO YOU DO IT」、7「PENNY LANE」、8「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」、9「FROM ME TO YOU」、10「BESAME MUCHO」、11「THE FOOL ON THE HILL」、12「PAPERBACK WRITER」の、全12曲入りです。ランダムな選曲でも最初はやはり「SEVENTEEN」こと「I SAW HER STANDING THERE」の別テイクで、「ONE AFTER 909」は1963年ヴァージョン、リンゴが歌ったボツ曲「IF YOU’VE GOT TROUBLES」や、完成版の後半をフルで聴ける「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」や、ハチャメチャなエンディングまで聴ける「PAPERBACK WRITER」などなど、最初から飛ばしております。
「ULTRA RARE TRAX」VOL.2は、1「CAN'T BUY ME LOVE」、2「THERE THE PLACE(TAKE 3)」、3「THERE THE PLACE(TAKE 4)」、4「THAT MEANS A LOT」、5「DAY TRIPPER」、6「DAY TRIPPER」、7「I AM THE WALRUS」、8「MISERY(TAKE 1)」、9「LEAVE MY KITTEN ALONE」、10「WE CAN WORK IT OUT」、11「A HARD DAY'S NIGHT」、12「NORWEGIAN WOOD(THIS BIRD HAS FLOWN)(TAKE 4)」の、全12曲入りです。完成版にはないジョンとジョージの追っかけコーラス入りの「CAN'T BUY ME LOVE」や、ポールの駄作「THAT MEANS A LOT」、何故にボツにしたのか分からないジョンがシャウトするカヴァー曲「LEAVE MY KITTEN ALONE」など、アルバム「SESSIONS」に収録予定だった曲もバッチリ押さえております。
「ULTRA RARE TRAX」VOL.3は、1「OB-LA-DI, OB-LA-DA」、2「TOMORROW NEVER KNOWS」、3「A DAY IN THE LIFE」、4「YES IT IS」、5「I SAW HER STANDING THERE(TAKE 10)」、6「NORWEGIAN WOOD(TAKE 1)」、7「NOT GUILTY」、8「ACROSS THE UNIVERSE」、9「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」、10「TICKET TO RIDE」の、全10曲入りです。ジョンのカウントから聴ける「A DAY IN THE LIFE」や、ジョージのアルバム「THE BEATLES(ホワイト・アルバム)」用だった「NOT GUILTY」とアンプラグドな「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」、公式2ヴァージョンのどちらとも違うミックスの「ACROSS THE UNIVERSE」など、聴きどころ満載です。
「ULTRA RARE TRAX」VOL.4は、1「ONE AFTER 909」、2「A TASTE OF HONEY(TAKE 7)」、3「I FEEL FINE(TAKE 7)」、4「YER BLUES」、5「BLUES JAM」、6「NOT GUILTY」、7「GET BACK」、8「MAILMAN, BRING ME NO MORE BLUES」、9「DO YOU WANT KNOW A SECRET?(TAKE 8)」、10「ALL YOU NEED IS LOVE」の、全10曲入りです。たどたどしかった1963年版とは打って変わった1969年の「THE GET BACK SESSIONS」での「ONE AFTER 909」リハーサル音源、当時は幻の映像作品だった「ROCK'N'ROLL CIRCUS」でのダーティー・マックによる「YER BLUES」と、ヨーコさんが参加していない「BLUES JAM」、ポールが無茶苦茶なヴォーカルで叫び捲る「GET BACK」、衛星中継での生配信状態だった「ALL YOU NEED IS LOVE」など、既出音源も含めて嬉しい収録です。
「ULTRA RARE TRAX」VOL.5は、1「CHRISTMAS TIME IS HERE AGAIN」、2「BECAUSE」、3「REVOLUTION」、4「I ME MINE」、5「STRAWBERRY FIELDS FOREVER(TAKE 1)」、6「HEY JUDE(TAKE 9)」、7「MAGICAL MYSTERY TOUR」、8「WHAT’S THE NEW MARY JANE?」、9「LADY MADONNA」、10「ONE AFTER 909」、11「OB-LA-DI, OB-LA-DA / CHRISTMAS TIME IS HERE AGAIN」の、全11曲入りです。「CHRISTMAS TIME IS HERE AGAIN」でサンドイッチした構成で、アカペラの「BECAUSE」や、グリン・ジョンズがミックスした「I ME MINE」や、「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」や「HEY JUDE」の別テイク、ジョンがバカになった「WHAT’S THE NEW MARY JANE?」、更なる別ヴァージョンの「ONE AFTER 909」など、まだまだ聴かせます。
「ULTRA RARE TRAX」VOL.6は、1「COME AND GET IT」、2「HOLD ME TIGHT」、3「I'LL BE ON MY WAY」、4「STRAWBERRY FIELDS FOREVER(TAKE 7)」、5「IT'S ALL TOO MUCH」、6「12 BAR ORIGINAL」、7「I HATE TO SEE」、8「SHE'S A WOMAN(TAKE 7)」、9「WHAT’S THE NEW MARY JANE?」、10「DIG IT」の、全10曲入りです。これまたアルバム「SESSIONS」音源からポールのワンマン・レコーディングでバッドフィンガーへの提供曲のデモ「COME AND GET IT」、BBC音源からセルフカヴァー「I'LL BE ON MY WAY」、当時は未発表だったインストゥルメンタル曲「12 BAR ORIGINAL」、「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」のアコースティックな前半部のフル・ヴァージョン、ポールがアドリブで喚き捲る「SHE'S A WOMAN」、8分にも及ぶ「DIG IT」と、ハズレなしの未発表音源集でした。
コノ後に「ULTRA RARE TRAX」VOL.7とか「ULTRA RARE TRAX」VOL.8とかも出ていますが、それらは便乗して他の業者が勝手に続きをでっちあげただけなので、本当の「ULTRA RARE TRAX」と云えるのは、VOL.1からVOL.6の6作だけです。まあ、ブートレグに本物も偽者もありゃしないわけですが、コノ「ULTRA RARE TRAX」と長くなったので次回に詳述する「UNSURPASSED MASTERS」に関しては、偽者まで登場する事態となったわけで、何が凄かったのかと申しますと、コレが出るまでのブートレグは、音が悪いのは当たり前で、ジャケットも安っぽく、それなのに高額商品で、何だか怪しげな音源も含んでいたりしたのですけれど、もうそう云った紛い物はコレ以降は業者も恥ずかしくて出せなくなったわけですよ。そして、ソレは公式盤として「ANTHOLOGY」をリリースする事態にもなりました。思えば「赤盤」と「青盤」も、「LIVE AT HOLLYWOOD BOWL」も、「LIVE AT BBC」も、全てがブートレグ対策で公式リリースされたわけでして、中でも「ULTRA RARE TRAX」と「UNSURPASSED MASTERS」は、正に「革命的なブートレグ」でした。
(小島イコ)
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