1987年11月2日に、ジョージ・ハリスンはビートルズ解散後では9作目のスタジオ・アルバム「CLOUD NINE」を、ダーク・ホース/ワーナーからリリースしました。ジョージのアルバムとしては前作アルバム「GONE TROPPO」以来で、なんと5年ぶりの作品です。ソノ間にジョージは「ハンドメイド・フィルムス」での映画制作に没頭していて、全く音楽活動はせずに「僕は音楽業界では引退した人間だから」などと公言していたのですが、マドンナと当時の夫・ショーン・ペンが主演した1986年公開の映画「上海サプライズ」に未発表音源を提供して、映画にもカメオ出演して演奏をしていて、ソノ時に同じバンド役で出演したエレクトリック・ライト・オーケストラ(ELO)のジェフ・リンと出逢って、ジョージとジェフ・リンのプロデュースで新作アルバム「CLOUD NINE」を完成させました。内容は、1「CLOUD 9」、2「THAT'S WHAT IT TAKES」、3「FISH ON THE SAND」、4「JUST FOR TODAY」、5「THIS IS LOVE」、6「WHEN WE WAS FAB」、7「DEVIL'S RADIO」、8「SOMEPLACE ELSE」、9「WRECK OF THE HESPERUS(金星の崩壊)」、10「BREATH AWAY FROM HEAVEN」、11「GOT MY MIND SET ON YOU」の、全11曲入りで、現行のCDでは、前述の同名映画の主題歌、12「SHANGHAI SURPRISE」と、シングル「WHEN WE WAS FAB」のB面でアルバム未収録だった、13「ZIG ZAG」も加えた全13曲入りとなっております。映画「上海サプライズ」のサントラ盤はリリースせずに、ソノ音源に新録も加えたカタチで、つまりは5年間の「貯め」があっての作品となっていて、やはり「貯め」がある時のジョージ・ハリスンは傑作を出せると証明しました。
楽曲は、「THAT'S WHAT IT TAKES」がジョージとジェフ・リンとゲイリー・ライトの共作で、「THIS IS LOVE」と「WHEN WE WAS FAB」がジョージとジェフ・リンの共作で、「GOT MY MIND SET ON YOU」がエディ・クラーク作で1962年にジェームス・レイが「I'VE GOT MY MIND SET ON YOU」のタイトルで発表した曲のカヴァーで、他の7曲はジョージのオリジナルです。レコーディング・メンバーは、ジョージ・ハリスン(ヴォーカル、ギター、キーボード)、リンゴ・スター(ドラムス)、ジェフ・リン(ギター、ベース、キーボード)、エリック・クラプトン(ギター)、エルトン・ジョン(ピアノ)、ゲイリー・ライト(ピアノ)、ジム・ケルトナー(ドラムス)、レイ・クーパー(パーカッション、ドラムス)、ジム・ホーン(バリトン&テナー・サックス)、ボビー・コック(チェロ)などです。ジョージとクラプトンのツイン・リード・ギターがカッコイイ「CLOUD 9」で始まり、キラキラしたポップ路線でELOそのまんまの第3弾シングル「THIS IS LOVE」(全英55位)や、ビートルズのパロディーでラトルズもビックリな第2弾シングル「WHEN WE WAS FAB」(全米23位、全英25位)、そして息子のダニーに勧められて第1弾シングルにした「GOT MY MIND SET ON YOU」は、全米首位・全英2位の特大ヒットとなりました。更に、アルバムも全英10位・全米8位と大ヒットして、鮮やかにジョージ・ハリスンは音楽家としてカムバックしたのです。ジャケットでジョージが持っているギターは、グレッチ・デュオ・ジェットで、ビートルズの初期にジョージが愛用していたものですから、本人も「温故知新」で且つ「心機一転」だったのでしょう。1987年には、前年のポールに続いて、ジョージとリンゴが「プリンス・トラスト」に出演して、ビートルズ・ナンバーを披露していて、元ビートルズと云われる事にも肯定的になっていたと思われます。
1987年には、ビートルズのアルバムが初CD化されていて、2月から10月にかけてオリジナル・アルバムがぞくぞくとリリースされています。ソレに乗っかって、ポール・マッカートニーは前回取り上げたビートルズ以後のベスト盤「ALL THE BEST!」をリリースしたわけですが、ジョージ・ハリスンは新作で勝負に出て、見事に再起したのです。MVもシングル「GOT MY MIND SET ON YOU」と「WHEN WE WAS FAB」と「THIS IS LOVE」が制作されていて、「GOT MY MIND SET ON YOU」は、ゲームセンターで遊ぶ若者たちとモノクロ映像のジョージたちの演奏をシンクロさせたものと、ソファに座ってギターで弾き語りしているジョージが、間奏ではアクロバティックな動きをする(スタントマンである事はバレバレ)ものの2種で、「THIS IS LOVE」は、何故か崖でジョージがギターの弾き語りをしているものです。問題は「WHEN WE WAS FAB」で、ゴドレイ&クレームが監督していて、ジョージが壁の前で演奏していて、リンゴ・スターとジェフ・リンとエルトン・ジョンとポール・サイモンとレイ・クーパーなどが出演しているのですが、途中でジョージとリンゴの他に「セイウチの被り物でリッケンバッカーのベースを弾く人」と、ニール・アスピノールがジョン・レノンのアルバム「IMAGINE」の裏ジャケットを見せて通り過ぎると云う場面があって、ビートルズのパロディーを本人たちがやっています。シングル「GOT MY MIND SET ON YOU」のB面は、アルバム「SOMEWHERE IN ENGLAND」で差し替えられた4曲の内の1曲「LAY HIS HEAD」が、シングル「WHEN WE WAS FAB」のB面は前述の「ZIG ZAG」が、そしてシングル「THIS IS LOVE」のB面は結局は「BREATH AWAY FROM HEAVEN」になったのですが、本来は「HANDLE WITH CARE」を予定していて、ソレに関してはまた次の機会で語ります。
(小島イコ)
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