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2023年09月21日

「ポールの道」#138「ROCK'N'ROLL」

ロックン・ロール


1975年2月17日(米国)、同年2月21日(英国)、同年4月5日(日本)に、ジョン・レノンはアルバム「ROCK'N'ROLL」をアップルからリリースしました。ジョンは前年である1974年9月26日(米国)同年10月4日(英国、日本)にアルバム「WALLS AND BRIDGES(心の壁、愛の橋)」をリリースしていて、シングル・カットされた「WHATEVER GETS YOU THRU THE NIGHT」が全米首位に、「#9 DREAM」も全米9位となり、アルバムも全米首位、全英6位の大ヒットとなり、エルトン・ジョンが客演した「WHATEVER GETS YOU THRU THE NIGHT」が全米首位になったので、エルトンの1974年11月28日のマジソン・スクエア・ガーデンでの公演に飛び入りして、「WHATEVER GETS YOU THRU THE NIGHT」と「LUCY IN THE SKY WITH DIAMONDS」と「I SAW HER STANDING THERE」の3曲を共演しました。共に全米首位となった2曲は分かりますが、何故かポール・マッカートニーが主に書いたビートルズの「I SAW HER STANDING THERE」を「元・婚約者の曲」と前置きして演奏したのかは謎です。つまり、アルバム「WALLS AND BRIDGES」がまだ売れていた1975年2月に僅か半年のインターバルを置いての新作がアルバム「ROCK'N'ROLL」だったわけで、コレには色々と事情がありました。此のロックンロールのカヴァー集は、そもそもビートルズの「COME TOGETHER」がチャック・ベリーの「YOU CAN'T CATCH ME」の盗作だと版権保有者のモリス・レヴィに訴えられて、裁判沙汰にしない条件としてレヴィが版権を持つ曲を3曲カヴァーする事になり、それならばいっその事全曲カヴァーでアルバムを制作しようとなって、1973年10月からロスアンゼルスで、フィル・スペクターのプロデュースで、ジョンは歌手に専念してレコーディングが開始されました。ところが「THE LOST WEEKEND(失われた週末)」時期に入ったジョンは酒浸りで、スタジオでも泥酔状態で歌もヘロヘロで、フィル・スペクターもパラノイア状態でスタジオで拳銃をぶっ放すなど滅茶苦茶なセッションで、12月になるとフィル・スペクターがマザー・テープを持った侭で失踪してしまいました。

ジョンは、1974年6月にスペクターからテープを取り戻したものの、アルバム「WALLS AND BRIDGES」の制作を優先して暫く放って置いたのですが、アルバム「WALLS AND BRIDGES」が完成したのでテープを聴いてみたら、前述の理由で使い物になる曲は僅かに4曲しかなく、新たに10曲を1974年10月21日から25日までのたったの5日間でレコーディングしてアルバムを完成させたのです。そして、1975年4月にリリースする運びとなったのですが、モリス・レヴィがジョンから受け取ったラフ・ミックスを元にしたアルバム「ROOTS」を通販で販売し出した為に、1975年2月に前倒しでリリースとなったのでした。アルバム「ROCK'N'ROLL」の内容は、A面が、1「BE-BOP-A-LULA」、2「STAND BY ME」、3「Medley : RIP IT UP / READY TEDDY」、4「YOU CAN'T CATCH ME」、5「AIN'T THAT A SHAME」、6「DO YOU WANNA DANCE」、7「SWEET LITTLE SIXTEEN」で、B面が、1「SLIPPIN' AND SLIDIN'」、2「PEGGY SUE」、3「Medley : BRING IT ON HOME TO ME / SEND ME SOME LOVIN'」、4「BONY MORONIE」、5「YA YA」、6「JUST BECAUSE」の、全13トラック15曲です。アルバム「ROOTS」には、他に「ANGEL BABY」と「BE MY BABY」が収録されています。フィル・スペクターのプロデュースでは、公表されていませんが30名にも及ぶ有名ミュージシャンが参加していて、ジョンのプロデュースではアルバム「WALLS AND BRIDGES」のメンバーが呼び戻されています。そんな顛末で完成したのと、ジョンがアップル/EMIとの契約でもう1枚アルバムを出す必要があった為に短いスパンでのリリースとなったのです。カヴァー集なのでジョンに印税は入らないのですが、ポール・マッカートニーはバディ・ホリーの版権を持っていたので印税が入る事を訊かれたジョンは「ポールが版権を買ったのは知らなかったけれど、どこの誰か分からない奴が儲かるよりも、兄弟であるポールが儲かる方が良い」と応えています。

楽曲は全てカヴァーで、「BE-BOP-A-LULA」はジーン・ヴィンセント(1956年)、「STAND BY ME」はベン・E・キング(1961年)、「Medley : RIP IT UP / READY TEDDY」はリトル・リチャード(1956年、シングル両面)、「YOU CAN'T CATCH ME」はチャック・ベリー(1956年)、「AIN'T THAT A SHAME」はファッツ・ドミノ(1955年)、「DO YOU WANNA DANCE」はボビー・フリーマン(1958年)、「SWEET LITTLE SIXTEEN」はチャック・ベリー(1958年)、「SLIPPIN' AND SLIDIN'」はリトル・リチャード(1956年)、「PEGGY SUE」はバディ・ホリー(1957年)、「BRING IT ON HOME TO ME」はサム・クック(1962年)、「SEND ME SOME LOVIN'」はリトル・リチャード(1956年)、「BONY MORONIE」はラリー・ウィリアムズ(1957年)、「YA YA」はリー・ドーシー(1961年)、「JUST BECAUSE」はロイド・プライス(1957年)がオリジナルです。ジョンはビートルズ時代からカヴァーが得意でしたが、此のアルバムも素晴らしい出来栄えとなっています。「BE-BOP-A-LULA」や「AIN'T THAT A SHAME」などは、後にポール・マッカートニーもカヴァーしています。ジャケットにはハンブルグ時代の若かりし頃のジョンが映っていて、前を横切っているのはポール・マッカートニーとジョージ・ハリスンとスチュワート・サトクリフです。つまり、ビートルズが下積み時代に演奏していた楽曲が多いのでしょう。アルバムは全米・全英共に6位となっていて、シングル・カットされた「STAND BY ME」は全米20位で全英30位ですが、チャート成績以上の高い評価を受けています。ソノB面は、キース・ムーンに提供した「MOVE OVER MS. L」のセルフ・カヴァーで、アルバム未収録曲となっております。アルバム「ROCK'N'ROLL」は、2004年9月27日にリミックス盤がリリースされて、「BE-BOP-A-LULA」の前にカウントが入ったり、「ANGEL BABY」と「TO KNOW HER IS TO LOVE HER」と「SINCE MY BABY LEFT ME」と「JUST BECAUSE(RIPRISE)」が加わり、ジョンがビートルズの3人へ呼びかける声も聴けますが、2010年10月5日にオリジナルに戻されています。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする