ジョン・レノンとヨーコ・オノ夫妻は、1971年9月3日に米国ニューヨークへと旅立ち、ジョンは結局は二度と英国へは戻らない事となりました。そして、翌1972年6月12日に米国で、遅れて9月15日に英国で、2枚組のアルバム「SOMETIME IN NEW YORK CITY」を、ジョン&ヨーコ名義でジョン&ヨーコとフィル・スペクターのプロデュースでアップルからリリースしました。1枚目はスタジオ・レコーディングで、2枚目はライヴ・レコーディングで構成された此の作品は、ジョンのアルバムでも最も政治色が強く、ジャケットにも表れている通り新聞の様な時事性が強い作品で普遍性に欠けていて、個人的にはジョンのアルバムでは最も出来が悪いし、つまらない内容だと思います。まず、ヨーコさんとの共作になっていて、ジョンがひとりで歌っている曲が少な過ぎます。スタジオ盤の内容は、A面が、1「WOMAN IS THE NIGGER OF THE WORLD(女は世界の奴隷か!)」、2「SISTERS, O SISTERS」、3「ATTICA STATE」、4「BORN IN A PRISON」、5「NEW YORK CITY」で、B面が、1「SUNDAY BLOODY SUNDAY(血まみれの日曜日)」、2「THE LUCK OF THE IRISH」、3「JOHN SINCLAR」、4「ANGELA」、5「WE’RE ALL WATER」の全10曲で、ジョンの単独作は「NEW YORK CITY」と「JOHN SINCLAR」の2曲だけで、他に「WOMAN IS THE NIGGER OF THE WORLD」の3曲のみでしかジョンはひとりで歌っていません。他の7曲は、ヨーコさんが一緒か単独で歌っているわけで、コレはキツイですわ。此のアルバムや後の「DOUBLE FANTASY」や「MILK AND HONEY」と云ったジョン&ヨーコの共作を「通して聴かなければ(ヨーコさんの曲も飛ばさずに聴かなければ)真に作品を聴いた事にはならない」なんて、さも「俺は分かっているぞ」とばかりに、したり顔で書く評論家が多いのですが、だったら何種類も出ているベスト盤はどうなるんだって話ですよ。これらの共作3作からは、ジョンの歌しか収録されていないじゃないですか。それとも「(Just Like)STARTING OVER」や「WOMAN」などは、わざわざ「DOUBLE FANTASY」を通して聴かないと理解出来ない曲だとでも云うんでしょうか。
此のアルバムでは、前述の3曲はよく聴きますが、他の7曲は滅多に聴きません。そもそもジョンとヨーコさんは「混ぜるな危険」で、共作アルバムは全て「ジョンがヨーコさんに負けている」ので、聴いていて楽しくないんですよね。レコーディングは1971年11月から翌1972年3月まで、ニューヨークのレコード・プラント・スタジオで行われています。さて、2枚目は「LIVE JAM」と題されていて、C面が、1「COLD TURKEY」、2「DON'T WORRY KYOKO」で、D面が、1「WELL(Baby Please Don’t Go)」、2「JAMRAG」、3「SCUNBAG」、4「AU」です。C面の2曲は、1969年12月15日にロンドンのライシーアム劇場で開催されたUNICEF主催のチャリティー・コンサート「ピース・フォー・クリスマス」にプラスティック・オノ・バンドとして出演した時のライヴ音源で、ジョン&ヨーコの他には、ジョージ・ハリスン、エリック・クラプトン、デラニー&ボニー(ギター、パーカッション)、クラウス・フォアマン(ベース)、ジム・ゴードン、アラン・ホワイト、キース・ムーン(ドラムス)、ビリー・プレストン(オルガン)、ボビー・キーズ(サックス)、と元々分厚い音にニッキー・ホプキンスのエレピもダビングしています。D面は、1971年6月6日にニューヨークのフィルモア・イーストで、フランク・ザッパ・アンド・ザ・マザーズ・オブ・インヴェンションのコンサートのアンコールにジョン&ヨーコが飛び入りした時のライヴ音源で、ジョンとザッパは同じ音源を別々に編集してリリースしています。曲名もジョンが勝手に付けていて、2曲目の「JAMRAG」は、ザッパの「KING KONG」です。CD化は1988年4月29日にオリジナル通りの2枚組で出て、2005年11月7日にはポール・ヒックスによるリミックス盤が出たんですけれど、ザッパとの共演を「WELL」だけにしてしまい、何故か「LISTEN THE SNOW FALLING」と「HAPPY XMAS(WAR IS OVER)」を加えた1枚にしてしまったトンデモ盤です。2010年10月5日には、オリジナルに戻した2枚組のリマスター盤が出ています。前作「IMAGINE」は首位だったのに、こっちは全米48位で全英11位と云う成績でした。コレを書くので久しぶりに通して聴いてみて、1枚目は何とか耐えましたが、2枚目の「DON'T WORRY KYOKO」は飛ばして、「AU」も耐えられず途中で切りました。こんなのまで有難がって聴かないとジョンのファンじゃないと云われるなら、あたくしはファンじゃなくて結構です。
(小島イコ)