1971年のジョン・レノンは、まずは、英国では3月12日に、米国では3月22日に、日本では4月5日に、シングル「POWER TO THE PEOPLE」をアップルからリリースしました。ジョン&ヨーコとフィル・スペクターがプロデュースした此の曲は、自宅にあるアスコット・サウンド・スタジオで、ジョン・レノン(ヴォーカル、ギター、ピアノ)、クラウス・フォアマン(ベース)、ジム・ゴードン(ドラム)、ビリー・プレストン(キーボード)、ボビー・キーズ(サックス)、一般人45名によるコーラスと足踏みでレコーディングされた、プロテスト・ソングです。英国では6位、米国では11位とヒットしていますが、B面のヨーコの曲「OPEN YOUR BOX」が猥褻だとされて「TOUCH ME」に差し替えになるゴタゴタもありました。ジャケット写真では、ジョンが日本の新左翼学生運動「共産主義者同盟(ブント)」叛旗派の「叛」と書かれたヘルメットを被っていて、詞も曲調も好戦的です。現在では、フジロックのメインステージで最後に流されている事でも有名です。更に同年、英国では7月16日に、米国では7月7日に、やはりアスコット・サウンド・スタジオでレコーディングしたシングル「GOD SAVE US / DO THE OZ」をエラスティック・オズ・バンド名義でアップルからリリースしていますが、コレはA面の「GOD SAVE US」をビル・エリオットが歌っていて、B面の「DO THE OZ」はジョンが歌っています。レコーディングのメンバーは「POWER TO THE PEOPLE」と余り変わらず、アンダーグラウンド・マガジン「OZ」の裁判を支援する為にリリースしたシングルで、特にB面のジョンが叫び捲る「DO THE OZ」はカッコイイ曲です。これらのシングルはオリジナル・アルバムには未収録だったのですが、2000年の「ジョンの魂」のリミックス盤にボーナス・トラックとして収録されて、余韻をぶち壊しにされてファンには「他に入れるべきところがあるだろう」と不評でした。「GOD SAVE US / DO THE OZ」は日本では未発売なので、ベスト盤ではお馴染みの「POWER TO THE PEOPLE」は兎も角、「DO THE OZ」は当時はなかなか聴けなかったので、痛し痒しではあります。
さて、此の流れで、1971年5月24日から29日まで、アスコット・サウンド・スタジオでレコーディングされたのが、アルバム「IMAGINE」です。同年7月にはニューヨークでストリングスなどのダビングがされて、英国では1971年9月9日に、米国では10月8日に、ジョン&ヨーコとフィル・スペクターのプロデュースでリリースされました。此のアルバムは、生前のジョンのアルバムとしては最も成功していて、全英首位、全米首位、の他にも、日本、オーストラリア、ノルウェー、イタリア、オランダでも首位を獲得していて、シングル・カットされた表題曲「IMAGINE」は全米で3位まで上がる大ヒットとなりましたが、英国では「歌詞が狂っている」と此の時にはシングル盤はリリースされていません。レコーディング・メンバーは、ジョン・レノン(リード・ヴォーカル、アコースティック・ギター、エレクトリック・ギター、ピアノ、ハーモニカ、口笛)、ジョージ・ハリスン(エレクトリック・ギター、ドブロ・ギター)、クラウス・フォアマン(ベース、ダブルベース)、ニッキー・ホプキンス(ピアノ、エレクトリックピアノ)、アラン・ホワイト(ドラムス、ティンシャ、ビブラフォン)、ジム・ケルトナー(ドラムス)、ジム・ゴードン(ドラムス)、キング・カーティス(サクソフォン)、ジョン・バーハム(ハーモニウム、ビブラフォン)、ジョン・トゥアウト(ピアノ)、テッド・ターナー、ロッド・リントン、バッドフィンガーのジョーイ・モランドとトム・エヴァンズ、アンディー・クレスウェル・デイビス、ロッド・リントン(アコースティック・ギター)、マイク・ピンダー(タンバリン)、スティーヴ・ブレンデル(ダブルベース、マラカス)、フィル・スペクター(バッキング・ヴォーカル)、フラックス・フィドラーズ (ニューヨーク・フィルハーモニック)(ストリングス)で、自宅のスタジオなのでヨーコが仕切っているのが映像では分かります。
内容は、A面が、1「IMAGINE」、2「CRIPPLED INSIDE」、3「JEALOUS GUY」、4「IT'S SO HARD」、5「I DON'T WANNA BE A SOLDIER MAMA I DON'T WANNA DIE」で、B面が、1「GIMME SOME TRUTH」、2「OH MY LOVE」、3「HOW DO YOU SLEEP ?」、4「HOW ?」、5「OH YOKO !」の、全10曲入りです。リリース当時に日本でも首位になったのは、やはり表題曲「IMAGINE」が人気があったからでしょう。かつては「OH MY LOVE」がジョン&ヨーコの共作で、他の9曲はジョンの単独作だったのですが、近年に「IMAGINE」もジョン&ヨーコの共作になったみたいです。英国ではシングル盤のリリースを見送られ、9・11同時多発テロの時には放送禁止曲になった此の曲は、欧米と日本での感じ取られ方が全く異なるのだと思います。前作である「ジョンの魂」は、ビートルズ脱退後に書かれた曲で構成されていたと考えられますが、此のアルバムでは1968年の「CHILD OF NATURE」の詞を全面的に書き換えた「JEALOUS GUY」や、やはり1968年には出来ていた「OH MY LOVE」や、1969年の「THE GET BACK SESSIONS」でジョンとポールでハモっていた「GIMME SOME TRUTH」や、1969年には出来ていた「OH YOKO !」などがあるので、ずっと「ビートルズっぽい」アルバムになっていて、やっぱり日本人はビートルズが好きなので、こう云うところまでジョン・レノン様が降りて来てくれると嬉しいわけですよ。「GIMME SOME TRUTH」のジョージ・ハリスンのリード・ギターなんかは「来た来た、コレだー!」って感じですし、「HOW ?」では明らかにポールの「THE LONG AND WINDING ROAD」をマネしているところとか、詞の内容は兎も角として、ジョンが久しぶりにハーモニカを吹き捲る「OH YOKO !」とかを聴くと、ああ、やっぱり此の人はビートルズなんだなあ、と思えるのです。が、しかし、幾らヨーコやアラン・クレインに唆されたとは云え、ポールの全人格までも全否定した「HOW DO YOU SLEEP ?」は酷過ぎます。こんな罵詈雑言を歌う人に、幾ら「IMAGINE」とか歌われても、おいおい、まずは元・相方のポールを愛しなさいよ、と思うしかありませんわなあ。
(小島イコ)
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